メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

木村伊兵衛 展

2024-04-20 11:01:04 | 写真
没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる
東京都写真美術館 3.16(土)~5.12(日)
  
木村伊兵衛 (1901-1974)は私の世代なら一番先に知った写真家だと思う。ライカの名手ともいわれていて35㎜モノクロの作品はいくつも見た記憶がある。今回こうしてかなりの量を一覧していくと、特に戦後とくに1950年代からの市井のものものなどは、見る方の感覚を掘り起こしてくれてこれ、そのものに近いイメージが浮かんでくる。
 
名作というものはこれしかない瞬間を切り取った結果という考えも頭にあったが、こうしてみると今の連写とはちがうし、偶然でもないだろうし、眼による対象の見方、頭や体の接し方で結果がでるのだろう。
 
こっちのつまり見る私のこれまでの年月も、単なるなつかしさだけでなく、記憶の中で残された少数とこれらの写真が呼応するのかもしれない。
 
有名な秋田はやはり引き込まれるし、木村が驚愕し愛した沖縄は特別な魅力、中国もこういう庶民の姿は今TVなどで接することがないが、実際にはあるのかもしれない。


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ソール・ライターの原点 ニューヨークの色

2023-07-29 10:26:18 | 写真
ソール・ライターの原点 ニューヨークの色
ヒカリエホール ホールA (渋谷)2023年7月8日-8月23日
 
ソール・ライター(SAUL LEITER 1923-2013) はニューヨークの写真家、1950年代にほとんどの優れた写真家がモノクロで競っていたのに、この人だけはコダクロームのポジカラーを使って街を撮り、その後ファッション誌「ハーーパーズ・バザー」で活躍するも、しばらく忘れられていたが、2006年に前記のポジカラーの写真集「アーリー カラー」が出版され再認識された。
 
全く知らなかったが、先週の「新美の巨人たち」(テレビ東京)で目にとまり見てきた。上記の写真以外に、当時のニューヨークの有名な美術、音楽など前衛の人たちの写真、画家でもあるライターの個性的な色感覚の絵などがあり、またアーリー カラーのスライド上映をゆっくり鑑賞することができた。
 
ライターの写真は街の何げないところに眼を向け、普通の完成された写真ならベストショットをねらうところを、たとえば雨に濡れたガラス越し、横切るもの、雨にうたれた地面、雪でぐしゃぐしゃになり車でひっかかれた跡がむしろ主役、などなど、そして縦長の構図が多く、それは何をメインにするか余計な背景はなくてもいいという割り切りだけど、他ではあまり見ないもの。
 
私から見ると、ものごころつくちょっと前、アメリカ(だけ)がきわめて豊かだった時代のごちゃごちゃしたニューヨーク、その後映画や話で想像した世界、それが素というかフィルタをかけない形で見えてきた。
  
少しアンテナを広げているとこういう望外の発見があることは、うれしい。

 

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川内倫子展

2012-06-13 15:02:36 | 写真

川内倫子展  照度 あめつち 影を見る

5月12日-7月16日 東京都写真美術館

 

川内倫子(1972- ) について、これまで何も知らなかった。

今回こうして少しまとめてみるととても新鮮である。まず目につくのは縦横約1mの正方形の作品群で、普通の横長のものより、何か集中して切り取られたものを見るという緊張感が心地よい。ポスターにもある(おそらく)朝の通学時の駅の階段、その真ん中にさす光、これが横長だったらこうはならない。フィルムは6x6だそうだ。

 

子供のころ、最初に買ってもらった安いカメラのフィルムも正方形だった。焼き付けると下のかなりの部分が白く残る。35㎜カメラはまだ高級品だったと思う。

 

考えてみれば、人間の視野は長方形というか長楕円みたいで、それで今もTVや多くの写真が横長になっているのだろう。ただ片目で見てみるともう少し正方形に近い。そして両目で見ていても、片方が効き目であるから、案外人間は視野の中で少し狭いところを見ているのかもしれない。

 

川内の最新の写真は4X5が多いようで、これは正方形より少し横に広い。阿蘇の野焼きの作品にはぎりぎりこのサイズが合っているようだ。

 

この人にはこれからも注目していきたい。

 


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