メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ソール・ライターの原点 ニューヨークの色

2023-07-29 10:26:18 | 写真
ソール・ライターの原点 ニューヨークの色
ヒカリエホール ホールA (渋谷)2023年7月8日-8月23日
 
ソール・ライター(SAUL LEITER 1923-2013) はニューヨークの写真家、1950年代にほとんどの優れた写真家がモノクロで競っていたのに、この人だけはコダクロームのポジカラーを使って街を撮り、その後ファッション誌「ハーーパーズ・バザー」で活躍するも、しばらく忘れられていたが、2006年に前記のポジカラーの写真集「アーリー カラー」が出版され再認識された。
 
全く知らなかったが、先週の「新美の巨人たち」(テレビ東京)で目にとまり見てきた。上記の写真以外に、当時のニューヨークの有名な美術、音楽など前衛の人たちの写真、画家でもあるライターの個性的な色感覚の絵などがあり、またアーリー カラーのスライド上映をゆっくり鑑賞することができた。
 
ライターの写真は街の何げないところに眼を向け、普通の完成された写真ならベストショットをねらうところを、たとえば雨に濡れたガラス越し、横切るもの、雨にうたれた地面、雪でぐしゃぐしゃになり車でひっかかれた跡がむしろ主役、などなど、そして縦長の構図が多く、それは何をメインにするか余計な背景はなくてもいいという割り切りだけど、他ではあまり見ないもの。
 
私から見ると、ものごころつくちょっと前、アメリカ(だけ)がきわめて豊かだった時代のごちゃごちゃしたニューヨーク、その後映画や話で想像した世界、それが素というかフィルタをかけない形で見えてきた。
  
少しアンテナを広げているとこういう望外の発見があることは、うれしい。

 

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絵本読み聞かせ(2023年7月)

2023-07-28 09:08:53 | 本と雑誌
絵本読み聞かせ (2023年7月)

年少
おおきなかぶ(ロシアの民話 A.トルストイ再話 内田莉莎子訳 佐藤忠良画)
がたんごとん がたんごとん ざぶんざぶん(安西安丸)
こぐまちゃんのみずあそび(わかやま けん) 
年中
おおきなかぶ
きんぎょがにげた(五味太郎9
こぐまちゃんのみずあそび 
年長
おおきなかぶ
なつのいちにち(はた こうしろう)
そらまめくんのベッド(なかやみわ)
 
「おおきなかぶ」は保育士さんのすすめもあり前回同様年少組でもとりあげ、注意力が落ちないよう最初にした。インパクトのある絵とそのつながりには興味をもってくれたようだ。
絵を描いた佐藤忠良さんの展覧会に行って原画も見てきたこともあり、つながったというか、、、
 
「がたんごとん」と「こぐまちゃんのみずあそび」は、この時期園のビニールプールでみずあそびが始まっていて、おもしろいかな?と。

「きんぎょがにげた」は6月に年長組でやった時に比べると、逃げたきんぎょをみつけるのにだいぶ時間がかかったが、ようやくみつかるとかわいい。
 
「なつのいちにち」は田舎の昆虫、小動物が多く出てくる。今の都会の子がどのくらい知っているか試すのも楽しい。とんぼは知っていても、おにやんまを見たことはないようだ。昨年は一人いたけど。それでも小川にいるかわせみは知っていた。中心になるかぶとむし、くわがたは飼っている子もいるらしく、なんとその餌用のゼリーもあるそうで、そういう時代なのか。

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美女と野獣(ディズニーミュージカル)

2023-07-22 09:53:58 | 舞台
美女と野獣(ディズニーミュージカル 劇団四季)
7月21日(金) 舞浜アンフィシアター
 
劇団四季のミュージカル、久しぶりに見た。20年前の「マンマ・ミーア!」以来である。
どうもディズニーは苦手で、大人になってからはあまり積極的に近づかなくなっている。
ただ「美女と野獣」のアニメは以前ビデオで見てなかなかよかったということもあり、観にいってみた。
 
やはり四季の上演はすばらしく、音はきわめて大きくなっても歪まない優れたPA技術、照明と連動してよくもこれだか早く変わることができると驚く舞台装置(オペラでもこれやった方がいい?)にも感銘をうける。

そして出演者の歌も感情の表出が適切またよく聴き取れ、ダンスも快調、四季は観客が受け取りやすく、その結果入りもよく営業的にも成功しなくては、という浅利慶太の方針を今も継続しているのだろう。
 
「美女と野獣」の話は言うのも恥ずかしいが、人と人との真実というか、それを劇の変化の中で飽きないようにみせていく。
 
この話、フランスの昔話かと思っていたら、原形はなにかあったのだろうが、1700年代に女性の作家が書いたもののようだ。特に気がつくのは、主人公で田舎の娘ベルが本が好きだといううこと、城の中で野獣が見せる本の山に感激することなど。
 
これは、フランスでのルネッサンス、啓蒙主義と続く流れを反映したものだろう。特に女性のということもあるだろうか。となりのイギリスの方が先んじたが、1800年前後、優れた女性作家が輩出される流れに通じるのかもしれない。
 
コクトーによるものをはじめいくつも映画が作られたようで、モーリス・ラベル(マメールロア)など、フランスのインテリも題材としている(ということにいま気がついた)。




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荒川洋治「文庫の読書」

2023-07-14 10:00:56 | 本と雑誌
文庫の読書: 荒川洋治 著  中公文庫(2023年)
 
先日たまたま昼食で入ったビルにあった大きな書店でたくさん平積みになっている文庫本の中、おやっと眼についた。
荒川洋治はほぼ同世代で、以前ラジオ番組の週一(?)コラムで、本のことを中心にしゃべっていた記憶がある。なかなかおもしろく、なるほどを思うことも多かった。
 
この本は詩人でありたいへんな読書家である荒川が、新聞の連載、文庫の解説などで書いたものを集めていて、多くは読んだことがなく著者・タイトルも初めてというものが並んでいるが、紹介された本の内容紹介・指摘は本質的なところをうまく書いていて、この行数でよくもその本が好きになりそう、という紹介である。
 
明治から大正、昭和にかけては私小説の作家たち、あまりめぐまれなかった人たちも多く、こういう世界に批判的な文学論もあってなじんでいなかったが、荒川の手にかかると作者の眼とその表現がきわめて優れたものだということが理解される。
 
さてひまもあるから何を読もうかといってもなかなか、という状態だったが、少し改善されるかもしれない。ただ、リアルな本屋で出ている文庫本がほとんど並べているところがあればいいのだが、なかなか。入手はネットで出来るが、文字の大きさなど確認したいこともあるので。
 
一つ気がついたことで、今や文庫の発行元、種類は一昔とくらべるとたいへんなものだが、本書に取り上げられているものに、光文社古典新訳文庫が多い。この数年、知人から紹介されたものも含め、この文庫は私もいくつか読んでいる。出版社の企画として評価していいものだろう。
 
文庫本の紹介が連載であると、なかなか便利でもあり楽しい。以前週刊文春の読書欄に坪内祐三がコーナーを持っていて、荒川よりはもう少し娯楽むきなものもあったが、この人もかなりつっこんだもの好きだなあと思いながら愛読し、入手して読んだ文庫もかなりあった。
残念なことに早逝してしまった。

 

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だるまさんが「日曜美術館」

2023-07-10 09:10:24 | 本と雑誌
昨日の日曜美術館(NHK Eテレ)は、だるまさんシリーズが有名な絵本作家かがくい ひろしさんだった。このところTVで三浦太郎、五味太郎など絵本作家が取り上げられることはよくあるが、関心がつよいのと、おそらく日本のレベルが高いことの反映だろう。
 
「だるまさんが」は4月の絵本読み聞かせでとり上げていて、この本についてはそこで述べたことににつきていると思う。
 
でもこの番組で作者の長いとはいえない生涯にふれると、感慨が深い。
作者は若いころ画家をめざしてはいたが、特別支援学校で幼児の支援指導を続け、中年になってから絵本を作り始め、数年間でだるまさんシリーズ(3冊)をはじめとする16冊を残し、病で急逝した。
 
その学校でのふるまい、絵本の製作過程の編集者の証言などから、このひとのものの見方とその先がいろいろわかってきた。
 
弱いもの、あまり見向きもされないもの、その同じ平面でなにか生きるちから、同類とのユーモラスなやりとり、そこから得られる元気、子供たちは直観で感じるのだろう。そしてそれはかがくいさんが学校での活動のなかで拓いていったものなのだろう。



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