太陽が知っている(La Piscine、1968仏・伊、120分)
監督:ジャック・ドレ-、音楽:ミシェル・ルグラン
アラン・ドロン、ロミー・シュナイダー、モーリス・ロネ、ジェーン・バーキン、ポール・クローシェ
おそらくTV放送かなにかで一度見ているけれど、ノーカットではなかったと思う。
サン・トロペ近くに別荘を借りた作家志望の男(アラン・ドロン)と恋人(ロミー・シュナイダー)、そこに男の兄貴分で女の元恋人(モーリス・ロネ)が若いころにできてしまった18歳の娘(ジェーン・バーキン)を連れて現れる。
話はほとんどこの4人、舞台もこのプール(映画の題名はこのフランス語)がある別荘で、演劇みたいだが、ドラマとしての展開はメリハリがそれほどなく、急がないでずいぶんじっくり、登場する俳優たちをじっくり追ったカメラワークである。
この俳優たち、監督、音楽と、60年代フランス映画のもっとも売れた、ネームバリューある人たちであり、それを贅沢に画面で楽しませようというものだろう。
だから、スター映画でもあり、当時のちょっと贅沢な連中の風俗映画でもある。そして、トーンは楽しめるフィルム・ノワール風とでもいおうか、勧善懲悪、予定調和とはならないところが面白い。
ストーリーがざわざわと動くのは、ドロンとバーキンが何か変な雰囲気になってくるからだが、バーキンはこのとき22歳で、まだ地のままという感じ。
アラン・ドロンとモーリス・ロネ、同じコンビの「太陽がいっぱい」から8年あとだから、少し大人になっているが、むしろそれがいい歳してぐたぐたと遊んでいるという風にはなっている。「太陽がいっぱい」と同年の「若者のすべて」のドロンが、飢えた美青年のためいきが出そうな魅力で、際立っていたと思う。この映画はもう「山猫」、「冒険者たち」より後である。それでもこの悪い感じはいい。
そして私が最も好きな女優ロミー・シュナイダー、この映画が一番悪い人(魅力も含めて)の役だろうか。あの透きとおった瞳、スタイルは典型的な中肉中背なのだが、ここで肢体を十分見せてくれるのはうれしい。
彼女の映画で一番好きなのは「夕なぎ」だけれど、この映画も彼女の極端な魅力を一つ見せている。
アラン・ドロンとはだいぶ前に婚約を解消しているわけだが、おそらく一緒になるにはお互い忙しかったのか。その後も仲は悪くなかったようだ。これはあくまで噂だが、彼女が後年何のトラブルでよくない筋に脅されていたとき、ドロンが強引な手段で相手をやっつけたらしい。ありそうな話ではある。
そして、ジェーン・バーキンが出ているということは記憶になかった。そのころこの人のことはよく知らなかったからだろう。その後と違って、もう少しふっくらしていて、ここでは長い脚をふんだんに見せている。眼も大きくて、娘のシャルロットはやはりよく似ている。
こういうゆったりとしたつくりの西欧映画はもうなくなっただろう。