メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ローマでアモーレ

2014-04-30 22:03:54 | 映画

ローマでアモーレ (To Rome With Love、2012米・伊・西、111分)

監督・脚本:ウディ・アレン

ウディ・アレン、アレック・ボールドウィン、ロベルト・ベニーニ、ペネロペ・クルス、アレッサンドラ・マストロナルディ、フラヴィオ・パレンティ、オルネラ・ムーティ

 

これもウディ・アレンの大都市もの。前作のロンドンに比べると、こちらはよりアレンがストックしていたアイデアをたくさん放り込んで、しかも結果としてうまくまとまっている。

 

人間、ときにその気になって、これはそのままうまくいき続けるかと思うけれど、そうはいかない、でもそれはそれで、いやむしろその方が気楽でいいや、と結末はほほえましいもの。

 

ローマに住んでいる人たち、地方から来た人たち、外国から来た人たちがうまく組み合わされている。

 

なぜか突然、おそらくTV番組のどっきり企画で有名人にされてしまった男、こういう小市民を演じるとロベルト・ベニーニは絶品。

 

地方から新婚旅行で出てきて新婦とはぐれた男とまちがって一緒になってしまったコールガールは、スカーレット・ヨハンソンとならんでこの手の映画の常連、アレンお気に入りのペネロペ・クルス、一段と大人びてきて、ためらいのない演技を見せる。

 

ローマのある個所に思いでを確かめに来て登場人物夫婦たちと知り合った建築家(アレック・ボールドウィン)は、いろいろ意見をさしはさむけれど、ごく少数の登場人物にしか見えない、彼らに意見をいいそそのかす、天使みたいな役柄だろうか。これも一つのコメディのタイプ。 

 

アレンはオペラの演出家で、ローマを訪ねた娘がこっちで弁護士の青年と知り合い結婚することになり、相手の家族と会いに来たのだが、青年の父親は葬儀屋、シャワーを浴びながらの歌が格別で、彼をなんとか使おうとして、あるオーディションに連れて行く。しかしあがってしまってだめ。これはシャワーを浴びながらでないとだめ、それならシャワーを浴びながらやればいいということで、再チャレンジで合格させ、あろうことか自身が演出してオペラ「パリアッチ(道化師)」に出してしまう。舞台で裸のままシャワールームので歌い喝采をうける。

 

さて笑えるのは、いわずもがなこの「道化師」一番の名場面は主人公がクライマックスで歌う「衣装をつけろ」である。

 

ひょっとしてアレンの発想は、「衣装をつけろ」、「裸で歌う」、「シャワーを浴びながらだとうまく歌える」という、逆の順序だったかもしれない。そう考えさせるのも楽しい映画。

 

キーとなる音楽は「ボラーレ」、最初に流れるのは作ったドメニコ・モデューニョが歌ったもの。


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恋のロンドン狂騒曲

2014-04-29 09:05:26 | 映画

恋のロンドン狂騒曲 ( You Will Meet A Tall Dark Stranger、2010米・西、98分)

監督:脚本:ウディ・アレン

ジェマ・ジョーンズ、アンソニー・ホプキンス、ナオミ・ワッツ、ジョシュ・ブローリン、アントニオ・バンデラス、フリーダ・ピント、ルーシー・パンチ、ロジャー=アシュトン・グリフィス

 

ウディ・アレンがこの数年、おそらく好きな都市を舞台に、好きな俳優を配して作り続けているコメディの一つ。ロンドンは何回目だろうか。

 

別れようとしている老夫婦(ホプキンス、ジョーンズ)、その娘(ナオミ・ワッツ)も小説家の夫(ブローリン)が新作がなかなか書けないでいる間に愛想をつかし自身でギャラリーを始めたい。

 

そしてこの四人が、それぞれ新しい相手をつかまえようとするなかで、困った話、おかしい話が展開していく。

最後は、うまくいきそうなところもあり、どっちに転ぶかで恐ろしいという雲行きもあるが、そのあとは想像にまかせるという形で終わる。

 

この種の作品で、アレン自身が出演しているものとそうでないものがあるが、本作のように出ていない方が余計な想像をしなくていい分、すんなりと見ることができる。

 

あるインタビューでアレンは編集の重要性、とりわけカットの重要性を言っていた。どうしようかと迷ったらその箇所は切り取ってしまうという。ここでも早めに切り上げて次の場面という感じのところはあるけれど、見ている方はその間を補うことは難しくない。そういうテンポ感は好きである。

 

ナオミ・ワッツ、しっくりいっていて、こんなにいい感じのうまい人だったっけ。

 

唯一ミスキャストはアンソニー・ホプキンス、若い子にもてようと事務で鍛えるところはまだしも、ちょっといかがわしい娘をつかまえて、バイアグラを飲んでという感じはそぐわない。一生懸命やってるけれど、風貌がどうしてもそういうおやじには見えないのである。

 

音楽は「星に願いを」で始まり、モーツアルトのセレナード(?)で終わる。アレンの趣味だろう。

 

クレジットで、ホプキンスの衣装はラルフ・ローレン、娘が不倫に走りそうになる画廊主(バンデラス)はアルマーニとあった。

 

退屈しのぎにはまずまず。

 


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華麗なるギャツビー

2014-04-22 19:05:11 | 映画

華麗なるギャツビー (The Great Gatsby、2012米、142分)

監督:バズ・ラーマン、原作:スコット・フィッツジェラルド

レオナルド・デカプリオ(ジェイ・ギャツビー)、トビー・マグワイア(ニック・キャラウェイ)、キャリー・マリガン(デイジー・ブキャナン)、ジョエル・エドガートン(トム・ブキャナン)、エリザベス・デビッキ(ジョーダン・ベイカー)

 

この原作でデカプリオ、であれば注目、観たくなるが、さてどうだったか。

前半は作家ニックが精神を病んでいて、医師から書いてみるようにいわれ、その回想から、金持ちと結婚した彼のいとこデイジーの近くに住むようになったとき、同じように彼女の近くにきた、彼女を忘れられないギャツビーと会い、破天荒なパーティーを中心としたギャツビーのありさま、次第に明かされていくその素性、半生が描かれる。ここでラーマンは歌のないミュージカルのようにといったらいいか、舞台を俯瞰したような表面的な演出を意識的にやっているように見える。

 

その虚飾を描く、というのはわかるのだが、そうであればやはりヴィスコンティがやったようにもっと徹底的にやってほしかった。リアル感がちょっと不足。

 

見事な進行を見せるのは後半で、ギャツビーの破滅というのはそんなにこっちにぐさっとくるものではないのだが、それがわかっているからか、ここではニックの眼をさらに重視したかたちで、見るものに説得させていくことに成功している。

 

ニックを演じるトビー・マグワイア、実力ある人だが、無理に名演という感じでなく、登場人物等身大の存在感になっているのは、うまい。

 

さてデカプリオ、やはり後半が見せ所なのだが、この役に向いていそうでそうでないようにも思える。ギャツビーは悪そうでいて、そうでなく弱い人、デカプリオは悪くて、強い人がやはり似あう。「アビエイター」(2014)のハワード・ヒューズがとてもよかったので、期待したけれど、よく考えるとヒューズとギャツビーはかなりちがう。それにフィッツジェラルドが提示したギャツビー像というのは、時代を象徴する意味はあっても、人間としてそれほど強烈ではないように思える。 

 

かなり前に同じ原作の映画化を見たが、調べたら1974年で、ギャツビーはロバート・レッドフォードだった。どうしてもこの人のイメージが強い。今映画化するとしたら、むしろブラッド・ピットだろうか、でも年齢的にちょっと過ぎてしまったか。

 

ついでに言えば、レッドフォードのとき、デイジーはミア・ファーロー、これもイメージどおり。今回のキャリー・マリガンは、なぜか表情に弱さがいつも見えて、脂粉を感じさせる虚飾に生きる女というもう一つの面が見えない。そうでないとギャツビーがこの世界で魅力を感じ続けることに、納得できない。マリガンは「わたしを離さないで」(2010)で感心したのだが、これもミスキャストだったようだ。むしろデイジーの友人ジョーダン役のエリザベス・デビッキがフラッパーというか、こういう社会風俗をよく体現していた。

 


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ティファニーで朝食を

2014-04-20 21:36:37 | 映画

ティファニーで朝食を ( Breakfast At Tiffany's、1961米、114分) 

監督:ブレイク・エドワーズ、原作:トルーマン・カポーティ、音楽:ヘンリー・マンシーニ

オードリー・ヘプバーン、ジョージ・ペパード、パトリシア・ニール、ミッキー・ルーニー

 

映画はレンタル・ビデオで見たとは思うが、その時体調でも悪かったのかよくは覚えていない。原作も学生の時にパーパーバックで買ってきて、英語の勉強がてら読んではみたが、スタインベックやヘミングウェイより英語ば難しかったのか、それとも最新のニューヨークというものが想像の外だったのか、よくわからなかった。 

ということで、今回あらためて。デジタル・リマスタリングはよくできているようだ。

 

ニューヨークのソフィスティケイテッドな社交界、そこを女の武器を利用しつくして泳ぎまわるホリー(ペプバーン)と同じアパートに新鋭作家(ペパード)が住むことになる。彼にはパトロン兼愛人として金持ちの夫人(パトリシア・ニール)がいる。

 

作家はホリーの行動にあきれながら、それは本心ではないと信じているのだが、それを明にいさめてやめろ、自分と一緒になれと言うまではいかない。言うのは野暮なのか、勇気がないのか、実はストーリーはそこに頼って最後まで進んでいっているだけなのだが、いろんなエピソード、風俗、典型的な場所での会話で、映画として見せていく。そういう作り方は、まあありなんだろう。  

出来のよい娯楽・風俗映画。

 

ティファニーの店内、安売りショップ、図書館、パーティなど、今見ても面白い。

 

オードリー・ヘプバーンは歳相応の役で、案外フィットしている。先日見た「マイ・フェア・レディ」よりこれの方が前というのは意外だった。TV画面で見ると、そんなに細いという感じではない。

そして相手役のジョージ・ペパード、オードリーの相手役としてはめずらしく同年輩、他の映画ではもっと年上の、役としても、また俳優としても立派な先輩、おじさまがほとんどなのだが、それらに比べると今回は新鮮である。そしてペパードという人、このあとそんなに役に恵まれなかったとおもうけれど、私は好きで、画面の中でもう出来上がっているという感じに見えないのがいいのだが、一時代前の米国ではわかりやすい悪役を除くともっとスクウェアでないとダメだったのかもしれない。

 

パトリシア・ニールはぴたり。やはりアパートの住人で、ちょっと気ちがいじみていてうるさい日本人(というか、偏見にもとづくカリカチュアの日本人で、当時の米国でのイメージをわざとカポーティが持ち出したのかどうか)を先日亡くなったミッキー・ルーニーがやっている。

ホリーの生活、マフィアのボス(トマト)との関係から、おそらく高級コールガールであることは想像されるが、ここでは多少ぼかされている。

 

作詞のジョニー・マーサー、作曲のヘンリー・マンシーニはこのころ絶好調。

 

ホリーが作家に、理想の男性は、有名人でいえばネルー、シュヴァイツァーときて、次は?ときいていると、なんとレナード・バーンスタイン! 当時そういうポジションだったのだろうか。

 

どうもこれがこのブログ700回目のアップらしい。

 

 


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サンセット大通り

2014-04-16 14:08:51 | 映画

サンセット大通り (Sunset Boulevard、1950米、110分)

監督:ビリー・ワイルダー

グロリア・スワンソン(ノーマ・デズモンド)、ウィリアム・ホールデン(ジョー・ギリス)、エリッヒ・シュトロハイム(マックス)、ナンシー・オルソン(ベティ・シェーファー)、セシル・B・デミル(himself)

世評のとおり傑作である。モノクロ画面が少し暗いのだが、大スクリーンではどうなのか。

 

無声映画時代の大スターであるノーマの大屋敷(サンセット大通りのはずれにある)に、車の借金で逃げていた脚本家ジョーが逃げ込む。

ノーマは20年も映画に出ていないが、いまだに大スターとしての地位にあると信じていて(見るからに妄想とわかるが)、有能な執事マックスに世話してもらっている。ノーマは自分を主役にした「サロメ」の脚本を書いていて、ジョーに計画を持ちかけ、生活の面倒を見てやるようになる。

ありそうな話だが、ここからの細かい場面、展開、台詞、カメラが実によくできていて、今から見るとスリラーとしてはちょっとゆるい話ではあるのだが、最後までじっくり見せる。

 

スワンソンも姿を消して20年後にちょっと出てきたのを、ワイルダーがこの映画のアイデアに起用しようと考えたようだ。

 

特に後半、話がのっぴきならない展開を見せ始めてからの彼女の熱の入りようはすごい。

 

まだ若いホールデンも適役だが、執事マックスの存在感は抜群である。ジョーが揺れ動く脚本家の卵の娘ベティのシェーファーは初々しいがこのあとあまり活躍してないようだ。 

 

セシル・B・デミルが自身の役で出ている。決してよく描かれてはいないのだが、息子ほどの歳のワイルダーの作品によく出たなと思う。

 

製作された1950年は「赤狩り」との関係でいけば、あまりハリウッドに批判的な描きかたは出来なかったと思う。この作品も表面的には避けているようだが、深読みすればワイルダーの真意が少し見えるような気もする。

ワイルダーの映画で正義感が気持ちいい娯楽作品「お熱いのがお好き」、「アパートの鍵貸します」、「フロント・ページ」などはずいぶん後の作品だ。

 

ところで恥ずかしい話だが、これがWOWOWで放送されると知り、見てみようかと思ったのは「サンセット大通り」という名前からで、1960年代前半のTV映画「サンセット77」をよく見ており、当時の日本からするとソフィスティケイテッドな街が記憶にあり、これもそこを舞台にしたしゃれたものかと思ったからである。

勘違いだったが、結果としては良かった。 

 

TV映画のテーマソング、「77 Sunset Strip、、、」は今でも覚えている。探偵事務所長を演じるのはエフレム・ジンバリストJr、そうロシア系の高名ヴァイオリニストの息子、後輩がロジャー・スミス、この人は当時代表的な二枚目俳優だったが、アイドル歌手・女優アン・マーグレットと結婚後は驚いたことに彼女のマネージャーになってしまった。ただマーグレットは年齢を重ねてもかなり活躍しているから、これは賢明だったかもしれない。

その他見習い助手のク―キー(エド・バーンズ)の車の扱い方、櫛の入れ方、中年の探偵仲間ロスコ―と、なかなかよくできたシリーズだった。

以上、ちょっと余計なはなし


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