線の迷宮<ラビリンス>Ⅱ-鉛筆と黒鉛の旋律
目黒区美術館(~9月9日)
先に書いた木下晋の鉛筆画が展示されている展覧会である。美術館は目黒駅から10分ほどと言っても炎天下でしかもなかなか変らない信号待ちなど、はじめて行くのは多少疲れた。
それでも展覧会はなかなか面白い。やはりこのようなモノクロの世界に焦点をあてたところが大きいだろう。
9人の作家が平均10点ずつで、特徴は充分つかめるし、うんざりすることもない。9人は1920年代~1970年代の生まれと幅広い世代だが、惹きつけられたのは30歳前後の関根直子と佐伯洋江。今アートの世界ばかりでなく、この世代のそれも女性の活躍は目立っているようだ。
関根直子(1977~)の作品は、鉛筆と練り消しゴムで細部がどうなっているのか近寄ってみてもそのテクスチャーはよくわからないが、全体を眺めたとき、その抽象的な絵は、非常にやわらかいあらわれ方と強い存在感が見事に両立している。
佐伯洋江(1978~)の作品は、フラワーデザインを装飾的に描いたようなものが多いが、その繊細ながらダイナミックな形と細部の表現、飛翔感が心地よい。その一方で静物の生理的な面も感じさせる。
この2人の作品、欲しいなと思う。
さてこの展覧会に導いてくれたのは木下晋であるが、見てみるとちょっとこういう絵は苦手である。この人の非常に大きな絵、それらは小林ハルを始め、過酷な運命に対峙した人から作者が受け取った大きなものを描いていることはわかる。が、ここからはこの絵を見た後その対象に引き込まれるかどうかだけしかない。モデル次第の絵といったら失礼なのだが。
9人を見て全体として感じたことを一つ。この鉛筆とカーボンの世界、モノクロという抽象に合った技法、その魅力が大きい反面、作者それぞれの技法が固定しがちで、そこをどう切り抜けていくかは大きな課題であろう。