「ブーリン家の姉妹」(The Other Boleyn Girl 、2008年、英・米、115分)
監督:ジャスティン・チャドウィック、原作:フィリッパ・グレゴリー、脚本:ピーター・モーガン、衣装:サンディ・パウエル
ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン、エリック・バナ、クリスティン・スコット・トーマス
15世紀のイングランド王ヘンリー8世とその2番目の妃アンそしてその妹メアリーの物語。このあたりの詳しい話を読んではいないのと、ほぼ同じ題材を扱った「1000日のアン」(1969)を見てないので、どこまでがこの原作の創作なのかはわからない。
ヘンリー(エリック・バナ)に男の子が生まれなかったので、ブーリン一族は、長女アン(ナタリー・ポートマン)を王の愛人にして子を産ませ地位を得ようとしたのだが、王が見初めたのは結婚したばかりの妹メアリー(スカーレット・ヨハンソン)、そしてメアリーは王の男の子を産むのだが遠ざけられる。複雑な思いを持っていたアンは、親の命令でフランス王宮に見習いに行き、帰ってくると今度は首尾よく王に求められるが、王妃と離婚し正式に結婚することを要求、この離婚で王はローマ法王から破門され(このあたりで世界史を思い出す)結婚するが、生まれたのは女の子で、今度はアンが不貞の疑いをかけられ有罪となって処刑される。(また女の子?というところでもしやこの子がエリザベス?と思ったら、やはりそうであった)
姉妹の愛と嫉妬、一族の画策・陰謀、王の横暴など、今からすれば無茶な話が多く、暗いばかりになりそうなところを、脚本は姉妹に焦点をあてて、まずまずのところ、終盤まで退屈せず楽しむことが出来た。
かなり昔の話で、確実に伝わっているところが男中心の政治的な話だけであると、ドラマとして足りないことが多いから、、「大奥」・「篤姫」ではないが、こういう筋立てはいいのだろう。
ところで、The Other というのはメアリーを指すのでしょうね。
あと、クロムウェル、トマス・モアなど、王族以外の歴史上人物がここには登場する。
わかりにくい話の展開はいくつかある。アンがフランスから帰ってくると随分人間が変わっているのも不自然ではある。これはナタリー・ポートマンの演技のせい、ともいえない。
ナタリー・ポートマンは容貌も含め適役でまずまず。「スター・ウォーズ」の姫、「クローサー」の男女のどろどろを経ていることを考えれば不思議はない。
しかしというかやはりというか、なんとも底知れぬ女優としてのポテンシャルを見せるのはスカーレット・ヨハンソン。姉ほど高慢でもなく、知性もなく、性格は素直で可愛いが田舎っぽい娘、それが王のもとに入り、輝くばかりになるかと思うとその前に捨てられ、そしてまた後に登場、いつかもう一枚脱ぎ捨て変貌を見せるだろうという予想もあたらない。よくこういう地味な役柄を最後まで無理して抑えているという風でなく演じたなと思う。見終わって不思議に印象が残る演技であった。おそるべし。
エリック・バナは、この無謀だが一方で有能で魅力もあったらしい複雑な王を、あまり無理せず演じたのが成功だったか。
脇でよかったのは姉妹の母親で、どこかで見た人と思ったら、「イングリッシュ・ペイシェント」(1996)で主役のクリスティン・スコット・トーマス。
ポートマンとヨハンソン、どっちも我が強そうで、撮影はうまく進行したのだろうか、そういう興味は見る前からあったが、そういう組み合わせだからうまくいったのかもしれない。
ヨハンソンはアメリカ生まれだから、そろそろジョハンソンと読んでもいいのではという意見がある。そうなのだろう。