ヴェルディ:歌劇「シモン・ボッカネグラ」
指揮:ファビオ・ルイージ、演出:アンドレアス・ホモキ
クリスティアン・ゲルハーヘル(シモン)、ジェニファー・ラウリー(アメリア)、クリストフ・フィシェッサー(フィエスコ)
フィルハーモニア・チューリッヒ、チューリッヒ・歌劇場合唱団
2020年12月4,6日 チューリッヒ歌劇場 2021年3月 NHK BSP
ずいぶん久しぶりの「シモン」である。こうしてみると、苦手な作品が結構あるヴェルディの中でも、しっくりなじめる。ジェノヴァの新興階級と貴族との対立を背景に、シモンとフィエスコ、そして出生の秘密をかかえるアメリア、古代の英雄・戦争というものでもなく、壮大な悲恋がテーマでもない、現代にも通じるドラマであるから、聴いていて違和感は少ない。
中期に作られた時には不発だったらしいが、後期にボーイト(台本)の改訂でこの優れた出来になったようだ。
旋律もかなり覚えていたようで、すぐに入っていけた。
この上演は特別なもので、コロナの影響を考え、無観客というのは珍しくないが、オーケストラは別の会場で奏者たちは十分にディスタンスをとり、それを光ケーブルで舞台に転送、歌手は指揮者の映像を画面で見ながら歌ったという。
どおりでピットのオーケストラより音がいい、生々しいというかスタジオ録音に近いもので、こうしてビデオで聴くのにはフィットしている。歌手の動きと歌唱の音録りは同時だったのかどうかはよくわからないが、同時だったとすればマイクのセットもよかったのだろう。
舞台、演出だが、こういうしかけは初めてではないけれど、回転ステージをうまく使い、ドアと壁の動きで場面を変えていく。今回の全体の枠組みには適したものだろう。だが、衣装特に男たちのものが全体に黒っぽく、ロングでは誰だかわかりにくいことはあった。
歌手は知らない人たちだが、シモンとフィエスコはバリトンとバスの魅力をたっぷり聴かせた。
指揮はこのところ絶好調のファビオ・ルイージ、「さまよえるオランダ人」で感心したけれど、当分この人に頼る感じになるのだろうか。
ところで、「シモン」をはじめて観たのは、1981年のミラノ・スカラ座初来日公演、指揮は頂点をきわめつつあったアバド、演出はスカラやピッコロ・テアトロなどで絶好調だったストレーレル、カップチルリのシモン、フレーニのアメリア、ギャウロフのフィエスコというドリーム・キャストだった。
ストレーレルの舞台は上記とは対照的に、開放的で、今も眼に焼き付いているあの巨大な帆を背景にしたもの。この作品、最後まで聴いていると、たしかに主人公たちの心の底にはいろんな意味で「海」があって、それが音楽にも反映している。
もう一つ観たのがカルロス・クライバー指揮、フランコ・ゼッフィレルリ演出のプッチーニ「ラ・ボエーム」。オペラに関しては最高の日々だった。
指揮:ファビオ・ルイージ、演出:アンドレアス・ホモキ
クリスティアン・ゲルハーヘル(シモン)、ジェニファー・ラウリー(アメリア)、クリストフ・フィシェッサー(フィエスコ)
フィルハーモニア・チューリッヒ、チューリッヒ・歌劇場合唱団
2020年12月4,6日 チューリッヒ歌劇場 2021年3月 NHK BSP
ずいぶん久しぶりの「シモン」である。こうしてみると、苦手な作品が結構あるヴェルディの中でも、しっくりなじめる。ジェノヴァの新興階級と貴族との対立を背景に、シモンとフィエスコ、そして出生の秘密をかかえるアメリア、古代の英雄・戦争というものでもなく、壮大な悲恋がテーマでもない、現代にも通じるドラマであるから、聴いていて違和感は少ない。
中期に作られた時には不発だったらしいが、後期にボーイト(台本)の改訂でこの優れた出来になったようだ。
旋律もかなり覚えていたようで、すぐに入っていけた。
この上演は特別なもので、コロナの影響を考え、無観客というのは珍しくないが、オーケストラは別の会場で奏者たちは十分にディスタンスをとり、それを光ケーブルで舞台に転送、歌手は指揮者の映像を画面で見ながら歌ったという。
どおりでピットのオーケストラより音がいい、生々しいというかスタジオ録音に近いもので、こうしてビデオで聴くのにはフィットしている。歌手の動きと歌唱の音録りは同時だったのかどうかはよくわからないが、同時だったとすればマイクのセットもよかったのだろう。
舞台、演出だが、こういうしかけは初めてではないけれど、回転ステージをうまく使い、ドアと壁の動きで場面を変えていく。今回の全体の枠組みには適したものだろう。だが、衣装特に男たちのものが全体に黒っぽく、ロングでは誰だかわかりにくいことはあった。
歌手は知らない人たちだが、シモンとフィエスコはバリトンとバスの魅力をたっぷり聴かせた。
指揮はこのところ絶好調のファビオ・ルイージ、「さまよえるオランダ人」で感心したけれど、当分この人に頼る感じになるのだろうか。
ところで、「シモン」をはじめて観たのは、1981年のミラノ・スカラ座初来日公演、指揮は頂点をきわめつつあったアバド、演出はスカラやピッコロ・テアトロなどで絶好調だったストレーレル、カップチルリのシモン、フレーニのアメリア、ギャウロフのフィエスコというドリーム・キャストだった。
ストレーレルの舞台は上記とは対照的に、開放的で、今も眼に焼き付いているあの巨大な帆を背景にしたもの。この作品、最後まで聴いていると、たしかに主人公たちの心の底にはいろんな意味で「海」があって、それが音楽にも反映している。
もう一つ観たのがカルロス・クライバー指揮、フランコ・ゼッフィレルリ演出のプッチーニ「ラ・ボエーム」。オペラに関しては最高の日々だった。