蜜蜂と遠雷 (2019、日本、120分)
監督:石川慶、原作:恩田陸
松岡茉優(亜夜)、松坂桃李(明石)、森崎ウィン(マサル)、鈴鹿央士(塵)、斉藤由貴、鹿賀丈史、アンジェイ・ヒラ
たいへんな評判になった原作は読んでいない。あくまでこの映画に限定した感想である。
かなりレベルの高い国際的なピアノコンクールに集った亜夜、マサル、塵、明石を中心に、その期間に動く各自の心の中、ピアノへの姿勢などが、ピアノの音として表出されながら描かれていく。
私がみるところ、ドラマとしては弱いが、ピアノコンクールの架空のドキュメンタリーとしてはよく出来ていて、見た後の感じはいい。
上記四人は、もうすでに家庭を持っていてこれが最後のトライになりそうな明石、挫折から復帰途中の亜夜、彼女の弟弟子?で久しぶりに会ったマサル、特異なピアニズムで成長してきた天才少年(でも感じはいい)塵、年齢はこの順番、組み合わせはうまくいっている。
四人に特別な憎しみ、嫉妬、恋愛感情があるわけではなく、それぞれの「ピアノ」の間のドラマになっているところは、見ていて、聴いていて、楽しめる。
ソロの課題曲として藤倉大がこの映画のために作った「春と修羅」には各自が作ったカデンツァがつけられ、これをどうするかが一つのキーになる。
明石以外は最終予選に行きコンチェルトを弾く。指揮者(鹿賀丈史)とのやりとりが面白い。曲は亜夜がプロコフィエフの3番、マサルが同2番、塵がバルトークの3番で、それぞれなんらかの問題を抱えながら挑んで、最後見事に弾き切る。ここらは実際に音を担当しているそれぞれのピアニストがさすがに聴かせる。
森崎、鈴鹿の二人は知らなかった人だが、役にうまくフィットしていた。松坂はこの中では年齢、経験ともあるせいか、生活がにじみ出る役をなかなかうまく演じていた。
問題は松岡茉優で、スランプ状態というか、スィッチが入らない状態の役ではあるのだが、ちょっとぼんやりした印象。最期に一挙にということにはなるのだが、ここはむしろピアノを弾いた河村尚子の演奏が大きいだろう。昨年のN響定期で弾いた矢代秋雄の「ピアノ協奏曲」に驚いたが、ここでもさすがであった。
合間の時間に亜夜と塵が流れで連弾になり、「月の光」(ドビュッシー)、「It's only a paper moon」(ハロルド・アーレン)、「月光ソナタ」(ベートーヴェン)を乗りよく続けるシーンは楽しめた。
そのほか、元はやはり天才少女ピアニストだが今は審査員の斉藤由貴が、ちょっといやみなところも含め、味があった。やはりこの人、なかなかである。
ところで、しばらく前に出た「羊と鋼の森」(宮下奈都)は、ピアノ調律師とピアノを習っている双子姉妹の話で、これも評判になった。こういう音楽にかかわる人たちを描くもので、レベルの高いものが出てきていることは興味深い。
監督:石川慶、原作:恩田陸
松岡茉優(亜夜)、松坂桃李(明石)、森崎ウィン(マサル)、鈴鹿央士(塵)、斉藤由貴、鹿賀丈史、アンジェイ・ヒラ
たいへんな評判になった原作は読んでいない。あくまでこの映画に限定した感想である。
かなりレベルの高い国際的なピアノコンクールに集った亜夜、マサル、塵、明石を中心に、その期間に動く各自の心の中、ピアノへの姿勢などが、ピアノの音として表出されながら描かれていく。
私がみるところ、ドラマとしては弱いが、ピアノコンクールの架空のドキュメンタリーとしてはよく出来ていて、見た後の感じはいい。
上記四人は、もうすでに家庭を持っていてこれが最後のトライになりそうな明石、挫折から復帰途中の亜夜、彼女の弟弟子?で久しぶりに会ったマサル、特異なピアニズムで成長してきた天才少年(でも感じはいい)塵、年齢はこの順番、組み合わせはうまくいっている。
四人に特別な憎しみ、嫉妬、恋愛感情があるわけではなく、それぞれの「ピアノ」の間のドラマになっているところは、見ていて、聴いていて、楽しめる。
ソロの課題曲として藤倉大がこの映画のために作った「春と修羅」には各自が作ったカデンツァがつけられ、これをどうするかが一つのキーになる。
明石以外は最終予選に行きコンチェルトを弾く。指揮者(鹿賀丈史)とのやりとりが面白い。曲は亜夜がプロコフィエフの3番、マサルが同2番、塵がバルトークの3番で、それぞれなんらかの問題を抱えながら挑んで、最後見事に弾き切る。ここらは実際に音を担当しているそれぞれのピアニストがさすがに聴かせる。
森崎、鈴鹿の二人は知らなかった人だが、役にうまくフィットしていた。松坂はこの中では年齢、経験ともあるせいか、生活がにじみ出る役をなかなかうまく演じていた。
問題は松岡茉優で、スランプ状態というか、スィッチが入らない状態の役ではあるのだが、ちょっとぼんやりした印象。最期に一挙にということにはなるのだが、ここはむしろピアノを弾いた河村尚子の演奏が大きいだろう。昨年のN響定期で弾いた矢代秋雄の「ピアノ協奏曲」に驚いたが、ここでもさすがであった。
合間の時間に亜夜と塵が流れで連弾になり、「月の光」(ドビュッシー)、「It's only a paper moon」(ハロルド・アーレン)、「月光ソナタ」(ベートーヴェン)を乗りよく続けるシーンは楽しめた。
そのほか、元はやはり天才少女ピアニストだが今は審査員の斉藤由貴が、ちょっといやみなところも含め、味があった。やはりこの人、なかなかである。
ところで、しばらく前に出た「羊と鋼の森」(宮下奈都)は、ピアノ調律師とピアノを習っている双子姉妹の話で、これも評判になった。こういう音楽にかかわる人たちを描くもので、レベルの高いものが出てきていることは興味深い。