「ファンタジア」(FANTASIA、1940米、122分)
製作:ウオルト・ディズニー、音楽:レオポルド・ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団
日本公開は1955年9月、おそらくその前に「白雪姫」、「ピノキオ」、「バンビ」、「シンデレラ」などは見ているはずだが、これは劇場では見ていない。よほどこういうクラシック名曲を子供にうまく吹き込もうという魂胆が親になければ、当時家族で見にいくということはなかっただろう。
それでもこの映画の存在を知っていたのは、その一部が「ディズニー・アワー」という日本テレビの番組で紹介されていたからと考えられる。
特にベートーヴェンの「田園」。
今回、レーザー・ディスクで見たのは、買ってから2回目くらいだろうか。
1940年とは驚きで、カラーであり、またこのスムースな動き、そしてステレオ音響、つまり完成度は高い。
そしてストラヴィンスキー「春の祭典」をこの時点で扱っているのもなかなかであり、この曲に付けられた絵は、今ならこの雲や噴煙などCGを駆使するだろうが、もちろんこれはセル画であって、ここまでのレベルを達成しようとしたことには驚く。
そのように一応敬意は表するものの、記憶にあった「田園」は再度見ると意外に平凡であって、「ダフニスとクロエ」的な若い男女の世界に、天使、ユニコーンなど子供達が遊んでいる、それがむしろ人畜無害すぎるために、絵としてマイナスイメージが次第に強くなる。
「禿山の一夜」の黙示録的な世界は、その時代の雰囲気の反映というのは読みすぎだろうか。またそのあと、最後のシューベルト「アヴェ・マリア」の絵には、日本の浮世絵的(広重、北斎など)なところがあるのは面白い。
絵と音楽のマッチ、という意味で見事なのは、やはりチャイコフスキー「くるみ割り人形」だ。
ところで、これに関連したもので、イタリア映画「ネオ・ファンタジア」(1976)、とディズニーのリメイク「ファンタジア2000」がある。
前者にはカラヤンが協力しているそうだが、カラヤンが「ファンタジア」を見ているだろうということは充分に想像できた。
あの冒頭、バッハ「トッカータとフーガ」はアニメなしで、指揮者とオーケストラの影絵で構成される。これは後年カラヤンが作った映像作品に先立ち、大きな影響を与えたものだろう。
それにしてもストコフスキーという人はたいした人である。