メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

イシカワ・パラフレーズ(一柳 慧)

2008-05-30 21:46:56 | 音楽一般
一柳 慧(1933- ) 交響曲第7番「イシカワ・パラフレーズ」-岩城宏之の追憶に-(2007)
CD: ワーナー WPCS-12131
他に、ハイドン 交響曲第30番「アレルヤ」
井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
 
この新作は石川県のあるコンテンツ公募事業で採択された企画の一つで、正確にはその中心となるものである。コンテンツ全体としては、その素材、完成までの記録などが含まれた興味深いものとなって別途DVDとして発売される予定。
 
私はこのプロジェクトの採択および監修の委員の一人であったが、このように作曲を中心にしたものはこれまでなかったから、心配でもあった。それに一柳のイメージは彼の若いときのそれで、つまりジョン・ケージばりの、ばりばりの前衛であった。
 
さらに、地域特有の音楽素材をクラシック畑の作曲家が扱ったものは、これまでとかく気恥ずかしい、なにかくすぐったいものが多かった。つまりなぜいまになって無理して古いものを西欧近代楽器で扱うのか、日本のアイデンティティというコンセプトにこだわるあまり今の日本人の感覚からはあまりにもずれてしまう、それでいて海外からは案外評価される、そんなものにならなければいいが、そういう心配はあった。
 
しかし杞憂であったようだ。
民謡などは、完全に作曲者の語法の中に取り込まれており、雄大、壮大な自然を思わせる曲想、地域特有のリズムに乗って息づく力、オーケストラのいくつかの楽器による存分な技量発揮、これは見事なオーケストラ・ピース(約14分)になっている。
シベリウスの交響詩にちょっと地域特有の音楽要素をいれたようなもの、というのが一番近い形容だろうか。
  
CD収録はライブでこの正月(2008年1月8日)に初演されたときのものである。井上道義の指揮は曲をよく読みこみ、しかも接したばかりの新鮮な感興をもつ、乗りのいいものだ。
 
これからも繰り返し楽しめるだろう。

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