メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

Wの悲劇

2011-01-29 13:58:00 | 映画

「Wの悲劇」 (1984年、108分)
製作:角川春樹、監督:澤井信一郎、原作:夏樹静子、音楽:久石譲
薬師丸ひろ子、世良公則、三田佳子、三田村邦彦、高木美保、蜷川幸雄、南美江
 
クレジットが流れるところで使われている「WOMAN」(作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂)を時々カラオケで歌うのに、この映画は見ていなかった。
 
「Wの悲劇」という劇の上演とその周囲で起きる出来事という設定であるから、全体が舞台みたいな感じである。劇中でない台詞もそれっぽいが、それはあまり気にならない。それがこの脚本の狙いでもあるのだろう。
 
さて、そういう舞台みたいな台詞が飛び交うなか、気にならないどころか、それが一番自然で魅力あるものになっているのが薬師丸ひろ子である。
劇団では下っ端で、今回の上演でようやく端役とプロンプターをもらったあまり要領のよくない目立たない子、ドラマだからいずれ上を追い越してとも思わせない。脚本の上でもそうでなければおかしいし、またそれが彼女が演じると可愛くていい、という感じになっている。
 
だから終盤、顔をひっぱたかれて怒り「女優なんだから」という台詞、そして最後に後姿から振り返って見事に決めるポーズが、効果的におさまる。
 
舞台「Wの悲劇」の筋も、映画全体の進行にあわせて少しずつ明かされていくという。これも効果的である。
 
薬師丸ひろ子二十歳で、二十歳の役、この時すでにスターなのだが、こういう演技ができる人を見出し、一連の企画で起用した角川映画、やはり勢いがあったか。
 
演劇中心ということからか、蜷川幸雄の指導、演出家として本人も出演、そしてゴシップを追いかける人たちにも何人か本物を起用、手間をかけている。


ジェイン・オースティン 秘められた恋

2011-01-23 14:51:35 | 映画

「ジェイン・オースティン 秘められた恋」(Becoming Jane、2007英・米、121分)
監督:ジュリアン・ジャロルド
アン・ハサウェイ、ジェームズ・マカヴォイ、マギー・スミス、ローレンス・フォックス
 
ジェイン・オースティンは41年の短い生涯、独身だったが、こういう話もあった?という原作をもとに作られたらしい。その真偽はともかく、オースティンに少しは親しい人には、舞台となるイギリスの田舎、貧富・男女などに関する時代背景、衣装などとともに、楽しんで見られる。
 
ジェインを演ずるアン・ハサウェイが美人過ぎて、BBCのオースティン作品などと同様あまりさえない風貌の女優たちの中で最初は違和感を覚えたが、映画としてはやむをえないかな、と思って観ていると、次第に気にならなくなってきた。うまく演じたといえる。
 
相手役のジェームズ・マカヴォイもこの中では飛び切りの2枚目だが、キーラ・ナイトレイと共演した「つぐない」(2007)となんか似たような役だな、と感じてしまった。
 
家柄、財産でなく、本人の気持ち、愛で相手と結びつくということを主張し貫こうとすること、それまで低級と見られていた「小説」を書くということ、これだけの作家の誕生はこれらの思いなしにはならなかったわけだが、通常のドラマなら悲劇的な結末にならざるをえないところを、別の道を見つけ、生きていく、生きていくことの幸福を理解するとなっていくところは、彼女の小説と同じである。それが普遍の魅力であり続けているのが、彼女の文学の不思議だろう。
 
それにしてもこの映画の他に、直接の映画化でないもので、「ブリジット・ジョーンズの日記」、「ジェイン・オースティンの読書会」など、「ジェイン・オースティンもの」は多い。それだけファンが多いということで、今となっては幸せな作家である。


空と宇宙 展

2011-01-20 10:45:07 | ノンセクション

日本の航空宇宙100年記念 空と宇宙展 飛べ100年の夢
国立科学博物館 特別展会場 2010年10月26日~2011年2月6日
 
1910年の徳川大尉による初飛行から100年ということで空と宇宙といわれればそうなのだが、実はほとんど宇宙と思っていたので、このあたりは肩透かしをくった形である。

ヒコーキと宇宙探検に興味がある最近はかなり多くなった人たちを対象にしているようで、平日だが入りもまずまずのようであった。鉄道ファンに次ぐものになるかもしれない。
 
確かに「はやぶさ」のおそらく実物大の模型はびっくりするほど大きい。宇宙に持っていって展開すれば、こんなに大きくても別に不都合は何もないのだが。
 
そして太陽の光で帆走する「イカロス」の帆、イオンエンジン、プラズマエンジン、、、と、予算も少なく地味にやっていた旧(東大)宇宙研の流れに光があたり、「仕わけ」をなんとかかわしたのはめでたい。
 
だがしかし、気象、通信、放送など実用衛星の打ち上げ、管制システムに携わっていたものとしては、旧NASDA(宇宙開発事業団)系のものが、いくつかのロケット、宇宙基地日本モジュール「きぼう」(開発当時はJEMといっていて、その概念設計に加わっていたことがなつかしい)のきわめて小さい模型くらいなのはさびしい。
以前の実用衛星の仕掛けって、大きな制限の中で面白いものが随分あったのだけれど。
 
この分野の模型でない現物の大きさ、迫力を確かめるのなら、この会場だけでなく、同じ入場券で入れる地球館2階の常設展も見た方がいい。


カンディンスキーと青騎士 展

2011-01-06 16:52:07 | 美術

カンディンスキーと青騎士 展」 (三菱一号館美術館、2010年11月23日 - 2011年2月6日)
 
ヴァシリー・カンディンスキー(1866-1944)を中心に、フランツ・マルク(1880-1916)、ガブリエーレ・ミュンター(1877-1962)、アウグスト・マッケ(1887-1914)などが集った「青騎士」の1911~1912年までの活動を反映した作品を集めたもので、ミュンヘンのレンバッハハウス美術館が全面的に協力している。
 
カンディンスキーはこれまでも何度か展覧会があったから、それなりのまとまった印象があるけれでも、こうして色に意味を持たせて内面を表出する、それが抽象のレベルにいくという過程にうまくフォーカスされた展示を見ると、自然にこの画家の中に入っていくことが出来る。

特にムルナウ付近の風景からシェーンベルクのコンサートを聴いた後に描いたといわれる有名な「印象Ⅲ」までなど。
 
青騎士のパワーを示すものとして、マルクの作品は評価が高く、それはそのとおりだが、今回は虎と牛はあっても肝心の馬がないのは残念。
 
ミュンターの絵は、特にカンディンスキーを描いた絵は彼女の愛情が無理なく感じられていい。別れてからもカンディンスキーをはじめとする多くの作品を地下に隠し、ナチスの時代をしのいで戦後ミュンヘン市に寄付した結果、今回のような展示が見られるわけで、世の中にはこういう人がいるということ、そしてこうして残ることがあるということは心強い。
    
今回はじめて気がついたのは、マッケという画家、知ってはいたがこうして並べてみると、通常の意味での画才はこの人が飛びぬけていると思う。そういう人が一番若くして死んでしまった。

 

最近丸の内に出来たこの美術館、古い建物の雰囲気をうまく使ってはいるが、一つ一つの部屋があまりに小さく、そのほとんどすべてにガラスの自動ドアというのはちょっと落ち着かないし、一通り見てから気に入ったものへ戻るという行動パターンは取りにくい。
絵と絵の間は適度に離れていていいが、こういう構造だと、展示がちょっと評判になって入りがいいと大変だろう。


Emma エマ

2011-01-05 22:15:45 | 映画

Emma(エマ) (1996年英、122分)
監督・脚本:ダグラス・マクグラス、原作:ジェーン・オースティン
グウィネス・パルトロー(エマ)、トニ・コレット(ハリエット)、アラン・カミング(エルトン)、ユアン・マクレガー(フランク)、ジェレミー・ノーサム(ユアン・マクレガー)、ポリー・ウォーカー(ジェーン)
 
やっぱり、オースティンの小説を映画にするのは難しい。時間の流れの違いなんだろうか。
それに、いつものとおりイギリスの上流よりは少し下の階層、きれいな田舎のしかしどうということないどんな仕事をやっているのかわからない生活、始まってからしばらく人間関係もなにもよくわからない。
 
エマは読んでいるけれど、オースティンの作品はどれも同じようなところがあるから、読んだ直後でないとおっかけにくい。英国の人はそうでもないのだろう。
 
とはいえ、恋のさやあて、その二転三転は全体の三分の二すぎたところからは、ひきこまれて見るようになる。
 
若いグウィネス・パルトローがほぼ出ずっぱりで、景色も美しいのから、多少眠くなることを除けばあまりいやなこともなく最後まで見ることが出来る。 
 
考えてみると、オースティンの映画化は成功例が少ない。「高慢と偏見」でもBBCの連続TVドラマは女優に魅力がないもののほぼノーカットで楽しめたが、映画はいまひとつ。唯一よかったのは「いつか晴れた日に(分別と多感)」(1995)くらいだろうか(これはなにしろキャストがすごいけれど、エマ・トンプソンの脚本もよかったのか)。
それに調べてみるとやはりTVドラマの方が多いようだ。
 
一方、「高慢と偏見」では、そのパロディ「ブリジット・ジョーンズの日記」がヒットした。
 
こうしてみたとき、オースティンの原作はやはりゆっくり読むもの、それでこその評価ということが出来るできるだろう。