メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

マルセル (高樹のぶ子)

2012-04-29 19:07:49 | 本と雑誌

マルセル (高樹のぶ子) (2012年3月 毎日新聞社)

 

1968年、京都国立近代美術館で開催されていた「ロートレック展」で、フランスのアルビ美術館から借りていた「マルセル」が盗まれ、犯人はわからないまま時効成立後に返ってきた。この事件を題材に、その事件を追った新聞記者の遺児でやはり新聞記者の女性が、父の死後、その謎を追いかけるとともに、彼女も独り立ちしていくというストーリーである。

 

「マルセル」はその後また日本に来たらしいし、写真には見覚えがあって、どこかで見ているはずだが、はっきりしない。

 

現代になっての展開は作者のイマジネーションによるものだろうが、意外性も十分あって面白いことは面白い。それに、コピーとは、傑作は誰のもの?ということを考えさせるところもある。

 

ただ主人公の女性の自立への道筋、その中での葛藤などの描き方は、好みはあるにしてもちょっと甘いかなと思う。作者は私と同世代だが、これがもっと若い世代、たとえば角田光代あたりだと、もっといろんな心理の層を見せるかたちになったのではないか。

 


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オック語

2012-04-20 16:59:05 | 雑・一般
少しでも忘れないために「テレビでフランス語」(NHK Eテレ)を見ていたら、トゥールーズ紹介の際に、南部で使われているオック語(lenga d'oc)がかなり詳しく説明されていた。
 
ウイ(oui)というところをオック(oc)という。フランスは中央集権、言語も標準フランス語の強制力が強いからか、かなりながいことフランス語に親しんできた(こなすというレベルではないが)のに、まったく知らなかった。
 
フランス語よりラテン語に近いようで、多分スイスに残るロマンス語のような位置づけだろうか。
スペインのカタルーニャの一部(オック語に近いガスコーニュ語)、イタリアのピエモンテの一部にも残っているそうだ。
 
そういえばフランス南部のことをラング・ドック(Langue d'oc)というのも、納得できる。
 
そしてもしやと思って、自然派化粧品でその中心のシアバター・クリームを冬の間だけ使っている「ロクシタン」(L'Occitane)もラベルを見たらプロヴァンスの会社、その名前はここからだろう。
 
この番組、昨年あたりからか、スタッフに北アフリカ系の血が少し入った人がいたり、本国の外におけるフランス語を扱ったりしていて、以前と変わってきているようだ。

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オペラ座の怪人

2012-04-18 15:07:49 | 舞台
オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)(アンドリュー・ロイド=ウェバー)
25周年記念公演 2011年10月ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホール、2012年3月WOWOW放送録画 
製作:ハロルド・マッキントッシュ、演出:ローレンス・コナー
ラミン・カリムルー(怪人)、シェラ・ボーゲス(クリスティーヌ)、ハドリー・フレイザー(ラウル)、リズ・ロバートソン(マダム ジリー)
 
これだけ有名なミュージカルだが、映画版で一度見ただけである。したがって作品はともかくこの公演をどうこうということは出来ない。
とはいえ、おそらくきわめてレベルの高いものであることは確かだろう。まず物語はすべてオペラ座の中で進行するといってよいから、アルバート・ホールをいう大音楽ホールの中にオペラ座を置くという設定自体が効果満点である。
 
映画で見たときにはそれほど共感できない面も残ったが、今回はそうでもなかった。怪人に即していくと少し無理はあるが、クリスティーヌ中心という見方だと、感動は大きい。それに今回彼女を演じるシェラ・ボーゲス、舞台としては華奢な美人だが、歌も演技もこの機会に起用されただけのことはある。
 
音楽はやはり怪人が登場してクリスティーヌに「sing, sing」と音楽の精を吹き込んでいく序盤の長いくだり、舞台が終ってウェバーが過去の節目となる怪人を演じた人たちを紹介するところでも、彼らが歌ったのはこの部分。
 
装置も豪華でいいし、後半はオーケストラ・ピットが中空にあったのにはびっくりした。劇場の秘密の地下でドラマが展開されるからだろうか。
 
カメラも見やすい。ヘッドセットについたマイクがどうしても目についてしまうが、これはやむをえないだろう。こっちが入っていって忘れるしかない。

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歌劇「今日から明日まで」(シェーンベルク)

2012-04-16 10:17:48 | 音楽一般
作曲:アーノルト・シェーンベルク
指揮・エリアフ・インバル、演出:アンドレアス・ホモキ
ゲオルク・ニール(夫)、ブリギッテ・ゲラー(妻)、マティアス・シュルツ(歌手)
2008年8月18日、20日 ヴェネツィア・フェニーチェ歌劇場  2012年3月NHK BS 放送録画
 
シェーンベルク(1874-1951)が1928-1929年に作ったといわれているこの1時間近くの短いオペラ、名前をかろうじて覚えていた程度で、聴くのも見るのも初めてである。
それも「モーゼとアロン」みたいな重いテーマのものと違い、パーティから帰ってきた夫婦がそれぞれ楽しい相手、妻の友達とオペラ歌手との話をするうちに、お互いの悪いところの言い合いになり、決裂寸前にその相手二人が現れて、、、という、夫婦もののコメディとしてはよくあるパターンのプロット。
 
これにシェーンベルクの無調音楽(十二音技法)が、かなりめりはりのきいた響きでついてくる。しかし、話がドタバタだからか、この取り合わせはうまくフィットしているように聴ける。
後のベルクのオペラにおけるような悲劇的な効果とは反対だ。
 
舞台装置はレトロ・モダンというのか、白と黒の内装、夫婦の衣裳も白と黒、だが、途中で妻が夫を刺激し始めるあたりからカラフルなドレスが出てくる。
 
指揮のインバル、若手マーラー指揮者という私の印象から随分時間がたち、鋭いが手堅い。
 
この作品もこうして見ることが出来たのはありがたい。
いくつかの劇場で案外これからレパートリーになるかも知れない。

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ロベール・ドアノー 写真展

2012-04-14 17:20:37 | 美術

生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノー
東京都写真美術館 2012年3月24日(土) → 5月13日(日)

ロベール・ドアノー(Robert Doineau) が生涯にわたって撮り続けたパリの写真、それをふんだんに見ることが出来る。絵と違って、プロセスを想像して見るということがないから、これは一瞬のもの。やはりパリは雰囲気があり、人々がその人なりに生きていて、それは老人も、男女も、子供も同じ、多くはモノクロでその良さが発揮されてていて、有名人のポートレートもみな必ずしも見栄えよく撮られているわけではないが見ているとその人の個性、魅力の表現に不足はない、、、と、ありきたりの、とおりいっぺんの言葉しかでてこない。  

どうも写真展というのは、あまり語ることが出てこないようだ。といっても今回とても楽しんだことは確か。 

有名人で、詩人のジャック・プレヴェール、この人は不思議な人で、いつも同じポーズに見える、あのタバコのくわえ方、、、遠くから見てもすぐにわかるのではないだろうか。 

展覧会として不満があるとすれば、カメラとフィルムについて。最初にローライ・フレックス、あの上からのぞく二眼レフを使ったということはわかるが、そのあとどんなカメラとフィルムを使ったのかが何も示されていない。カメラには詳しくないけれども、こういう展覧会をみるたびに何か頭に入れば、次第に興味も生じてくると思うのだが。


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