メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ヴェルディ「マクベス」(メトロポリタン)

2012-08-26 16:48:16 | 音楽一般

ヴェルディ:歌劇「マクベス」

指揮:ジェイムズ・レヴァイン、演出:エイドリアン・ノーブル

ジェリコ・ルチッチ(マクベス)、マリア・グレギーナ(マクベス夫人)、ジョン・レリエ(バンクォー)、ディミトリ―・ピタス(マクダフ)

2008年1月12日 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場、 2012年8月WOWOW放送録画

 

シェイクスピアが人間のどうしようもない悪と弱さをえがいたこの手の作品はどうも苦手で、一度読んだのち、再び味わいたいとは思わない。この「マクベス」とか「オテロ」とか。

 

ヴェルディのマクベスは録音で聴いているけれど、見るのは初めてだと思う。音楽が入っているからか、それもヴェルディだからか、戯曲よりはましかもしれない。

 

夢にうなされ、幻想を見、森が動いて、、、という筋はオペラならなんとかなるのだろう。その瞬間というか短い時間に集中できるともいえる。

 

この話をはじめてしまうのはマクベス夫人の王妃になりたいという野望だが、夫をそそのかし叱咤していく流れで、マリア・グレギーナは説得力ある演技を見せる。ジェリコ・ルチッチのマクベスもまずまず。

 

演出は服装など現代に置き換えているけれど、最後にマクベスが反逆されるところで、ここでピストルというのは死への流れとして違和感がある。特に音楽というものとの相性で。

 

こういう苦手の話を最後まで聴かせてくれたのはやはりジェイムズ・レヴァインの指揮、この人は違う。今年あたりは腰の治療で休んでいるようで、いずれ復帰してほしいが、それまでこの録画シリーズを楽しむほかない。


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殺意の夏

2012-08-19 16:03:28 | 映画

殺意の夏 (L'Ete Meurtrier 、1983仏、134分)

監督:ジャン・ベッケル

イザベル・アジャーニ、アラン・スーション

 

男を手玉に取る女と犯罪の話と想像したら、そうでもなくて、最後までかなり意外性のあるミステリータッチのものになっている。フランスの田舎町に母と来た20歳のイザベル・アジャーニに、自動車修理と消防をやっている男が一目ぼれして仲良くなり、結婚寸前になる。しかし彼女は彼の家で見つけたものから、自身の出生の秘密に近づき、実は母を襲った連中(自分の実の父親)を突き止めるところまでいく。

 

ここにいくまで、当時20代で売出し中のイザベル・アジャーニがセックス・シンボルの女優でもこれほどはという見せ方で、驚かせる。

 

映画としてなかなかよく出来ているのだが、事実が解明された後の結末の一コマは納得できない。無駄なアクションだろう。


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スチューデント

2012-08-17 14:57:50 | 映画

スチューデント (L'Etudiante 、1988仏、104分)

監督:クロード・ピノトー、音楽:ウラディミール・コスマ

ソフィー・マルソー、ヴァンサン・ランドン

 

パリの女子大学生(ソフィー・マルソー)とミュージシャンの恋愛模様。彼女は学位の試験が目前になっていて、ミュージシャンの浮気に苦しむ。映画としてはそのドタバタとした経過をちょっとスリリングに描きながら、まずまずの娯楽ものになっている。

 

アイドル映画としてはかなり露出度も高いのと、パリの若者の生態が、これはほかの映画にもよくあるように結構いい加減で子供っぽいのだが、面白く描かれている。

また試験の準備、口頭試問が、古典の相当難しい内容で、トリュフォー「大人は判ってくれない」で小学校(多分)の国語の時間がよく出てくるけれど、やはりフランスはこうなのか、と妙に感心したり、たまらないなと思ったりする。試問の最後のソフィーはけなげで可愛い。

 

ソフィー・マルソーの女優としての魅力開花はもう少し年齢を重ねてからだが、ファンとしてはこの二十歳すぎの作品、気持ちのいいもの。


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エヴァの匂い

2012-08-15 18:04:48 | 映画

エヴァの匂い (EVA 、1962仏、117分)

監督:ジョセフ・ロージー、音楽:ミシェル・ルグラン

ジャンヌ・モロー、スタンリー・ベイカー、ヴィルナ・リージ

 

モノクロでもフィルム・ノワール風だし、ジャンヌ・モローで期待したが、はずれた。なぜ世評はかなり高いのか。

舞台はヴェネツィア、炭鉱労働者家庭から出てきた作家(スタンリー・ベイカー)が、通称エヴァ(ジャンヌ・モロー)と出会う。彼女は実は羽振りの良い男を乗り換えている悪女なのだが、それを知らずに婚約者(ヴィルナ・リージ)がいるにもかかわらず男はのめりこんでいく。

 

ただ、どうもエヴァが男に一瞬でもひかれたというプロセスがないようで、そこが物足りない。いくらフィルム・ノワールのタッチでも、映画とし見られるものになるには、そしてジャンヌ・モローの魅力を発揮させるには、脚本に工夫がほしかったところである。

 

ヴィルナ・リージはその後の感じとはちがい、ここでは純情な若い美人。

 

このファム・ファタル・ストーリー、はてどこか典型的な?と思ったら、そうカルメンといえなくもない。ただ最後に男がエヴァを殺すのかと思っていたらそうはならなかった。カルメンは一面でホセを愛していたから殺されたのだが、やはりこの映画ではもっと乾いた情感のないものだったか。

 

音楽はミシェル・ルグラン、この時期によくあるジャズの多用で、特にエヴァはレコード・プレーヤーをどこにでも持っていき、いつも何かかけている。モダン系やビリー・ホリデイ(Willow weep for me )など。これは効果的。

 

また衣装はジャンヌ・モローと当時一緒だったピエール・カルダンで、なかなか見せるが、背景に荒涼としたことろが多く、ちょっともったいない。

 

 


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ドビュッシー、音楽と美術

2012-08-05 17:32:58 | 美術

ドビュッシー、音楽と美術 印象派と象徴派のあいだで

(ブリヂストン美術館60周年 オルセー美術館、オランジェリー美術館共同企画)

ブリヂストン美術館 2012年7月14日(土)-10月14日(日)

 

印象派作品が豊富なブリヂストン美術館とオルセー、オランジェリーの作品をベースに、今年が生誕150年のドビュッシーゆかりの作品を展示したもので、このテーマでこれだけ集めるということはなかなかないだろう。

 

いろんな機会に見るドビュッシーの肖像画や、彼の作品のレコードジャケットによく使われる絵は、なるほどというものである。そのなかでモーリス・ドニの作品がかなりあって、これまで知らなかったこともあり新鮮だった。

昨年秋に見たドニの展覧会は家族と子供を描いた作品が主であった。そこに行くと今回の方がより画家としての力量を示したものと言えるだろう。

 

その他、オルセー、オランジェリーから来たものは、こういう機会でないとなかなか持ってこなかったかもしれない、つまりわざわざ出してくるにはちょっと地味なものが多いが、落ち着いてみるといい絵がいくつかあった。

 

ただし、こうして繰り広げられるドビュッシーをとりまく美術を知ることが、彼の作品の理解にプラスするか、というと必ずしもそうではないと思う。最近はともかく一時はずいぶん聴いたが、作曲家はこういうもので何らかのきっかけはつかんでいても、やはり音楽は音楽であってこういう予備知識とはちがう気がしている。おおざっぱにいえば、これらよりはもっと力を表に出したものである。

 


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