メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

日本の公文書 (松岡資明)

2010-02-26 21:49:51 | 本と雑誌
日本の公文書 開かれたアーカイブズが社会システムを支える
松岡資明 著、2010年1月20日、ポット出版
 
この数年、おそらく他に同じような人はいないと思われる非常に多い頻度で公文書について記事を書き続けている日本経済新聞 松岡資明記者による、昨年成立した公文書管理法および公文書館をはじめとする資料アーカイブに関する、一般向けのきわめて優れたわかりやすい著作である。
 
これまでにこういうものはなかっただろう。
 
私は、公文書館に加えミュージアム、図書館を含めたアーカイブ、特にそのデジタル化であるデジタルアーカイブの普及・啓蒙につとめている。したがって、こういうものが出たことを喜びたい。
 
公文書の保存とその分類、研究、公開がいかに大切か、それを実現していくことがわが国においてこの間いかに困難であったか、それをどういう人たちの苦労でともかくここまでこぎつけたか、過不足なく綴られている。 
 
公文書管理法成立に関わった人たちの苦労がここに記録されていることは大事なことで、今後この分野を推進していく上で、なくてはならないことになるだろう。
 
特に、福田康夫元首相の功績は記憶されるべきだが、ここにも記されているとおり、辞任したとき、私も含めアーカイブに関心がある関係者が顔を見合わせて話したのは、「他の政策はともかく、福田さんが辞めて公文書管理法は大丈夫なんだろうか」ということだった。
 
ともかく、このような本が出たことで、アーカイブの、そしてデジタルアーカイブに対する一般の認識が深まることが期待される。

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著作権の世紀 (福井健策)

2010-02-08 10:33:33 | 本と雑誌

著作権の世紀 ― 変わる「情報の独占制度」 (福井健策 著)(2010年1月20日、集英社新書)

このテーマに関し、適格な視点と一般読者へのわかりやすい表現、事例提示で、優れた解説となっている。

デジタル化とネットワーク化で、著作権への侵害、つまりコピー、変形・パロディなどへの言及、取り締まり要求は強くなっているものの、その一方で、創作、普及に関しての息苦しさもますます強くなっており、この後者に対してどうしていくかということは、専門家の間では議論されているものの、一般・マスコミではその人たちが悪者あつかいされてきたきらいがある。
 
この本は一般向けでかなりの人たちに読まれる形態だからか、表現にバランスをとってはいるが、こういう議論に一つ風穴をあけていくだろうし、それを期待したい。
 
デジタル化とネットワークで、作品とそれに関係していく人たちの広がりは飛躍的に大きくなっていったということの説明はうまい。
  
そして、そういう空間的な広がりに加え、「アーカイヴィングの現在」として、アーカイブというものの時間的な広がりとその影響について一つの章をあてているのは、この種の本として画期的である。(なぜかアーカイヴィングと進行形のところだけヴになっている)
 
コンテンツのさまざまな世界におけるデジタルアーカイブの現在についての紹介はコンパクトでわかりやすい。
また、参考文献に「デジタルアーカイブ白書2005」(デジタルアーカイブ推進協議会編)があげられているのは、編者としてうれしいことである。


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ラグビー ニュージーランド対オーストラリア(ブレディスロー・カップ)

2010-02-06 21:39:34 | スポーツ
ラグビーのニュージーランド対オーストラリア戦、昨2009年10月31日に国立競技場でこの2国恒例の年4回対抗戦第4試合が行われた。
ブレディスロー・カップ(Bledisloe Cup)という名前がつけられている。
 
結果の新聞記事を読み、しまったと思った。TV中継を見逃していたのだ。
ラグビーとサッカーのちがい、特に観戦の面白さのちがいの一つとして、マッチメイクがある。サッカーは好きなチーム、または自分の国が、もっと強い相手に善戦するのを見てもそれなりに身が入る。それに、例えば日本がブラジルに10連戦をすれば一回くらいは勝てるかもしれないし、二回くらいは引き分けも可能だろう。
 
でも、今の日本がニュージーランドやオーストラリアとやれば全部負けるだろうし、試合を見ても面白くはない。だから、社会人同士、大学同士の拮抗したチームの試合を見るほうがいいのである。
 
ところが今回、オールブラックスとワラビーズが日本で試合をしてくれた。
だからこれは見たかったわけだけれど、幸い今週WOWOWで再放送があり、運よくみつけて録画、先ほど見たところである。
 
結果は32対19でニュージーランド(オールブラックス)の勝ち。
そんなに力は違わないが、一つ一つのプレーの正確さ、フィットネスが、特に後半、得点につながる差になったかなと思う。
 
それにしても、細かいプレーの正確さ、その選択肢(引き出し)の豊富さ、イマジネーション、短時間の判断力は驚くほどである。
また具体的な技術で言えば、プレースキックの強さと方向の正確度は、楕円球にもかかわらず、サッカーにおとらない。まさにこれもフットボールである。
 
解説にあったように、ワラビーズが前半終盤のシンビンをいかしきれなかったのは残念だろう。
 
とうことで、シンビンは悪質と判定される反則にたいして10分の一時退場という規則、ということは知っていたけれど、どうしてシンビンっていうのとの疑問を解明すべく、調べてみた。
  
もちろん英語でsin bin つまり罪、櫃(貯蔵箱)でありアイスホッケーのペナルティ・ボックス入りと同等なのだが、どうしてペナルティ(罰)でなく、そのもとになる罪なのか、同じイギリス起源のスポーツなのに、不思議なことである。

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