日本の公文書 開かれたアーカイブズが社会システムを支える
松岡資明 著、2010年1月20日、ポット出版
この数年、おそらく他に同じような人はいないと思われる非常に多い頻度で公文書について記事を書き続けている日本経済新聞 松岡資明記者による、昨年成立した公文書管理法および公文書館をはじめとする資料アーカイブに関する、一般向けのきわめて優れたわかりやすい著作である。
これまでにこういうものはなかっただろう。
私は、公文書館に加えミュージアム、図書館を含めたアーカイブ、特にそのデジタル化であるデジタルアーカイブの普及・啓蒙につとめている。したがって、こういうものが出たことを喜びたい。
公文書の保存とその分類、研究、公開がいかに大切か、それを実現していくことがわが国においてこの間いかに困難であったか、それをどういう人たちの苦労でともかくここまでこぎつけたか、過不足なく綴られている。
公文書管理法成立に関わった人たちの苦労がここに記録されていることは大事なことで、今後この分野を推進していく上で、なくてはならないことになるだろう。
特に、福田康夫元首相の功績は記憶されるべきだが、ここにも記されているとおり、辞任したとき、私も含めアーカイブに関心がある関係者が顔を見合わせて話したのは、「他の政策はともかく、福田さんが辞めて公文書管理法は大丈夫なんだろうか」ということだった。
ともかく、このような本が出たことで、アーカイブの、そしてデジタルアーカイブに対する一般の認識が深まることが期待される。