メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ヴェルディ「椿姫」

2014-07-30 17:50:08 | 音楽一般

ヴェルディ:歌劇「椿姫」

指揮:ダニエレ・ガッティ、演出:ドミートリ・チェルニャコフ

ディアナ・ダムラウ(ヴィオレッタ)、ピョートル・ベチャワ(アルフレード・ジェルモン)、ジェリコ・ルチッチ(ジョルジョ・ジェルモン)、ジュゼッピーナ・ピウンティ(フローラ)、マーラ・ザンピエーリ(アンニーナ)

2013年12月7日 ミラノ・スカラ座  2013年12月 NHK BS録画

 

もっと早く見てもよかったのだが、このところナタリー・デセイの二つ(メトロポリタンとエクス・アンプロヴァンス)が続いたので、少し時間をおいていた。

 

舞台装置と衣装は物語の当時よりは後だが、今よくある現代風でもない。ただ中途半端という印象はなく、むしろ余計なものを省いて物語に集中できるようにはなっている。

 

それでも、田舎に引っこんでの生活ぶりは、金を使い果たして持ち物をパリに売りに行くというような感じではない。つつましいというべきか。

 

さてこオペラ、ジョルジジョ・ジェルモンの偽善、アルフレードの幼稚さ、などあっても、とにかくヴィオレッタが中心、彼女は結局思いどおり生きた、それが音楽、歌唱とともに聴く者の胸をうつわけだから、それはダムラウにかかっている。

 

いぜんより太目で、衣装もあまりおしゃれでなく(これは気の毒)だけれど、歌は素晴らしい。役を考えれば、ちょっと激情的なところや終幕などもう少し「破」があってもいいが、それは肺病で死んでいく主人公の音楽としてはあまりにも立派なものをヴェルディが書いてしまったからしかたがない。

このひとどちらかといえば「アイーダ」なんかのタイプだけれど。

 

ベチャワのアルフレード、ちょっとやんちゃすぎる感じはあって、あのラス・ヴェガスを想定した「リゴレット」のマントヴァほど合ってはいないけれど、アルフレードとしてはこれでもいい。

ルチッチのジェルモンも、まずまず。以前と違って、当方にとって、この役は偽善がはっきりしている。

 

カーテンコールで、ベチャワ、チェルニャコフ、ガッティに「ブー」があったようだが、好みもあるだろう。

ガッティに何か問題があったとは思わない。このオペラ、スカラのオーケストラで聴くのは確か初めてだが、ダムラウの歌唱を支えるものとしてしっかりしていたと思う。最近ワーグナーでも練達だし。

 

チェルニャコフの演出、小道具の使い方に首をかしげるところはあった。たとえば大きな紙の箱をかき回し、アルフレードの未来の花嫁に渡してくれという肖像(写真?)など、、、

 

それでも、本当の最後、ヴィオレッタが息絶えた後、アンニーナが男たちを扉の外に追いやり、手をそのままにしたポーズで終わるところ、これは見事だった。なによりヴィオレッタが思うように生きたストーリーだということを、アンニーナに表現させた。ザンピエーリもよかった。

 


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横田増生「評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」」

2014-07-16 21:17:12 | 本と雑誌

「評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」」 横田増生 著

2014年6月 朝日文庫

 

この本はナンシー関が2002年に39歳で亡くなって10年後に書かれ、最近文庫化されたものである。

 

ナンシー関の文章と消しゴム版画は、週刊文春の連載「ナンシー関のテレビ消灯時間」でなじんでいた。他のものは、生前はよく知らない。

 

この関係者への詳細なインタビューにもとづく評伝を読むと、やはり彼女の本領はテレビ・ウォッチングに基づく人物評であったようだ。

 

テレビによく登場する、タレント、キャスター、歌手、俳優などなど、それをある意味虚心に、しつこく見る眼が飛びぬけていて、対象となっている本人がうっかりしている、気づかない意図、魂胆など、その役割から本質的に離れたところでの変な思惑、それらがナンシーから逃れることは困難だったようで、それを指摘し「それでいいんかい」、その脇に添えられた絶妙な消しゴム版画とともに、こちらは黙ってうなづく、そういうものだった。

 

彼女がいなくなってから、テレビの世界を、またそれなりの人はテレビに登場することが多いからそういう人たちを、そういう目で見て書くということは稀少になってしまった。

 

この評伝を読んでいると、彼女の書いていたことを想い返し、膝をうつことが何回かあったが、それと同時に、読者としての自分もそうではないだろうかと自らを省みさせる効果もあった。

 

評伝の中に随時出てくる消しゴム版画の選定も的確で、楽しい。

 


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デュフィ展

2014-07-08 20:59:51 | 美術

デュフィ展 Bunkamura  ザ・ミュージアム

2014年6月7日(土)-7月27日(日)

http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_dufy.html

 

ラウル・デュフィ (Raoul Dufy  1877-1953)の絵をまとめてみるのははじめてである。

パステル・カラーが多く、色彩と形、それから画面の構成、リズムに秀でた画家だと思う。画家の頭の中にあるものがこっちにインパクトを与えるというタイプではないけれども、絵の中にすべてがあるというのは悪くない。

テキスタイルや家具などにも才能を発揮したようだが、私が見るには1920年代ダイナミックな画面構成のものがいい。たとえば「水上の祭り」など。

 

音楽が好きで、オーケストラや楽器を扱った絵があるのは納得できる。シャルル・ミュンシュ(指揮者)と親交があったようだ。

カンディンスキーの似たような絵と比べてみるのも面白い。

7月8日


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