メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

絵本読み聞かせ(2024年5月)

2024-05-30 16:07:58 | 本と雑誌
絵本読み聞かせ
2024年5月
 
年少
ぼうしかぶって(三浦太郎)
がたんごとん がたんごとん(安西水丸)
ごぶごぶごぼごぼ(駒形克己)
くだもの(平山和子)
年中
がたんごとん がたんごとん
はははのはなし(加古里子)
ボートにのって(とよた かずひこ)
年長
はははのはなし
ボートにのって
三びきのやぎのがらがらどん(ノルウェーの昔話 マーシャ・ブラウン(絵)
せた ていじ(訳))
 
ほぼ昨年5月と同じだが、翌日がむし歯予防デー先取りの行事があるということから歯に関するものを入れた。
年少ではこういうものは予想以上に盛り上がる。「ごぶごぶごぼごぼ」がどうしてというのは何年もまえからの謎だが、作者がいうとおり自身の子供にした取材(?)のとおりなんだろうか。〇の大きさと配置、色でこれだけ楽しめるとは。
時間が余ったので定番の「くだもの」、年齢、季節でまだ無理かなというくだものを適当に飛ばしてやったが、場合によってはそれもありかと思った。

「はははのはなし」は年中だとちょっと細かいかと思い、少し言葉を減らした。年長ならこれは十分受け止められる。ただ作者は有名な大御所だが、いまどきこういうテーマならもうすこしスマートな絵にしたい。
 
「ボートにのって」で使う童謡は私にとっての懐かしのメロディーで、歌いやすい(もっとも今日はなぜか(体調か)全体に低い声になってしまった)が、いまの子供たちにはなじめないかもしれない。ということは彼らの親たちがそうなのか。
 
「三びきのやぎのがらがらどん」はやはりアピール力がある。しかし訳はもうそろそろ新しくならないか。この人は大御所だったからそうはいかないのか、でももう今の大人たちでもちょっとなじめない。



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プーシキン「大尉の娘」

2024-05-20 14:02:08 | 本と雑誌
プーシキン: 大尉の娘  坂庭淳史 訳  光文社古典新訳文庫
 
これまで読みとりあげた作品は韻文だったり(訳は散文に近いものになっていたが)、短編だったりしていたが、これはもう少し長い本格的な物語(ロマン)である。
ロシアのプガチョーフの乱(農民戦争)(1773-1775)を舞台にとり、この中にまきこまれた下級貴族の青年と彼がいた要塞の司令官(大尉)の娘の波乱に満ちた話であるが、これだけの話にしては訳者も指摘しているとおり短い。文庫で250頁ほど。
 
十代のころからロシア音楽で親しんでいる名前、ドン、コサック、このあたりが背景で、プガチョーフが皇帝を僭称して反乱を起こし、そこで戦いながら惚れた娘をかくまい助けていく。
ただ対するプガチョーフとのやりとりは一筋縄でなく、ここはこういう時代のこういうきれいごとではない関係が続くから、物語の記述としても面白さもでてくる。
 
様々な登場人物の設定、あんな人物とこんな人物の邂逅、それがもたらす結末、この時代この地域の様相を彷彿とさせる。
 
ロマンと叙事をうまく結合して面白く読ませてくれた。これがなかったらかのトルストイが「戦争と平和」を書いたかどうか。こっちは数倍それも叙事が長いから、苦手なトルストイで中年すぎて「戦争と平和」くらいはと思って読んだのだが、読み終わってやはり数人の男女のロマンスを中心にしたあの映画の方が原作者には失礼だが、よかった。
 
詩人プーシキンが物語作者プーシキンとしてロシア文学史上に輝く存在になった作品と言っていいだろう。



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プーシキン「スペードのクイーン/ベールキン物語」

2024-05-11 14:43:46 | 本と雑誌
プーシキン:スペードのクイーン/ベールキン物語
 望月哲男 訳 光文社古典新訳文庫
 
スペードのクイーンは先のオネーギンと同様チャイコフスキーのオペラで見たことがあるが、オネーギンが中編小説の長さだったのに比べこちらは短編に近い。オペラではそんな感じはなかったが。
訳者の説明ではこれまではクイーンでなく女王と訳することが多かったがあえてこうした。この話を読めばわかるようにこれはカードの札の一つであり、そうであればクイーンが適当ということにはなる。
 
それはともかく、これは貴族の娘と青年将校の恋に伝説のカード使いである老伯爵夫人がかかわる。青年の求めに耐え切れなくなり老夫人が教えた三つのカード組み合わせ、それが翻弄する主人公の運命、オペラでは盛り上がりがぴったりだったと思う。ただこれは賭博というものを深く考えてみないと面白みがないのかもしれない。それは訳者の解説でよりよく理解できる。
 
賭博はある意味万人に公平で、なぜこれに賭けるかというのは人間とそれが生きている世の中で本質的なものかもしれない。こののちドストエフスキーなども関わってくる。
ただ上述のように著述はちょっと短く、チャイコフスキーはそれを膨らませたといえるだろう。
 
ベールキン物語はベールキンという架空の作者の短編集という形で発表された五つの話で、かなりちがうタイプの典型といったらいいか、読み物としては面白いし、それでいて考えさせられる結論、人生とはこういうものかという作者の指摘・思いが読後に残る。あえてあげればしかけの面白さで「射弾」、しみじみ心に残る「駅長」。
 
叙述は丁寧でうまく、これがロシアの後の作家たちにつながっていったのだろう。
訳は明快で読みやすい。


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ヨハン・シュトラウス「こうもり」

2024-05-04 15:53:38 | 音楽一般
ヨハン・シュトラウス:歌劇「こうもり」
指揮:ウラディーミル・ユロフスキ、演出:バリー・コスキー
ゲオルク・ニグル(アイゼンシュタイン)、ディアナ・ダムラウ(ロザリンデ)、アンドリュー・ワッツ(オルロフスキー)、ショーン・パニカー(アルフレート)、マルクス・ブリュック(ファルケ)、カタリーナ・コンラーディ(アデーレ)マックス・ポラック(フリッシュ)、ミリアム・ノイマイヤー(イーダ)
バイエルン国立歌劇場 2023年12月28・31日  2024年4月 NHK BS
 
ひさしぶりのこうもりである。放送でコメントされたようにドイツ/オーストリアあたりで大晦日あたりに恒例で上演されるらしく、我が国でいえば紅白歌合戦、軽い感じでああでもないこうでもないと言いながら楽しめばいいのだろう。
 
とはいいうもののレコード録音としてはカラヤン、カルロス・クライバーなどによる本格的(?)な録音もあるわけで、それはこのオペラの音楽がかれの作品群のなかでもきわだって優れて楽しいからだろう。
 
今回の歌手たち、歌もうまいし、演技もダンスも達者、ちょっとどぎついことも軽くやってのける。ロザリンデのダムラウ、かなりタフな役だけれど、そこはおそらくバイエルンの主みたいなものだろうか。男どももういまいのだが一つ、衣装がほぼ同じようなスーツで同じような色なので、のんびり見ているとはて誰だっけとなる。ここは工夫がほしいところ。こちらも歳とともに注意力が落ちてくる。
 
音楽はこれ全部オリジナルで書かれていたのかな、シュトラウスのヒット曲をうまく加えて楽しませてくれているのかなと思った。上記カラヤン、クライバーの録音よりだいぶ長い、それはもちろんかまわないしこれが通常なのかもしれない。
 
ところでクライバーの録音はずいぶんヒットしてウィーンのニューイヤーコンサートにつながったと思うのだが、オケはこのバイエルン、クライバーがここに持ってきてレパートリーになったのではないかという人もいる。たしかにウィーン風とういうよりダイナミックでより濃い楽しさがある(リズムにより弾みがある)。そして最初の演出はかのオットー・シェンク、「バラの騎士」でクライバーと名コンビになった人で、だいぶ前にウィーンでもシェンク演出の「こうもり」(ウェルザー・メスト指揮)を見たがどうだったか、いずれ録画をまた見てみよう。
 
さてダムラウのロザリンデを見ていてうかんできたことがある。こういうちょっと歳がいった魅力的な伯爵・公爵夫人の悩み悲しみって優れてオペラのテーマにしたいものなのだろうか。
たとえば「フィガロの結婚」の伯爵夫人、このロザリンデ、「バラの騎士」のマルシャリン、いずれもエリザベート・シュワルツコップの名演が残っている(指揮は順にジュリーニ、カラヤン、カラヤン)。



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