メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ジーン・シモンズのロック・スクール

2007-07-10 22:42:16 | 音楽一般
「ジーン・シモンズのロック・スクール」、30分弱X7回、おそらくイギリスのTV番組で、エデュテイメントつまりエデュケイションとエンターテイメントをあわせたものとのこと。最近WOWOWで放送された。
  
アメリカのロック・バンド「KISS」のベーシスト、スーパー・スターのジーン・シモンズ(このとき55歳)が、イギリス郊外の硬い感じの私立校の音楽に力を入れているクラスに招かれ、短期間でロックを教えデビューさせるまでの話だ。このクラスは皆クラシックが好きで演奏もかなりやる13歳の男女たち。
 
となると「スクール・オブ・ロック」(2003)を連想してしまうが、こっちはジャック・ブラック演じるロックおたくが偽って代用教員になりすまし学校に入り込んでロックを教えてしまうという話しで、生徒はもっと手におえないから、ロックそのものと同様にドラマの面白さも追求している。
 
ところがこっちは実在のスーパー・スター本人であり、おそらくかなり結末は想定しながら、誘導もしたとは思われる。予定調和的なところが中盤から鼻につく、つまりジーン・シモンズは傲慢だが実はやさしいという、、、
しかし、私にとってはそういうことより何より、ここでジーン・シモンズの言動を中心にくりひろげられる「ロックとは何か」が新鮮だった。
 
ロックというものは音楽の一ジャンルであり、他の音楽とは音楽論として分類できるものという考えが頭にあるけれど、どうもそうではないらしいということが今回わかってきた。
つまりロックの始まりには、一人の人間の自分のエゴの全的肯定、肯定したいという本能があり、それをさえぎるものを跳ね飛ばしたいという衝動がある。そうして、音楽的にうまいかどうかより、まずそういう自分が白紙の上に、何を出せるか、そこから全てが始まる。もちろんその先は音楽の出来でどれだけ売れるかもあり、また人間だからエキセントリックなものには苦労がついてまわる。
 
こういう順序でわかりやすく、堂々と、大物が説明したことがあっただろうか。
 
私がどうにかわかる、頭の中でまとまっているのは、エルトン・ジョンあたりまでで、おそらくKISSも含めたヘヴィー・メタルと呼ばれるいくつかのグループについては、名前を知っているものはあるし、曲を聴けば記憶にあるものも少しという程度だ。
 
がしかし、このシリーズを見て、KISSのあの隈取りのようなメイクにも、なるほどと親近感がわいてくるから不思議である。
もちろん、こういう理解とリアルタイムの体験は違うものである。しかし、成功した人たちというのは、こうしてロックを始めどこかでそれを意識化した人たちなのだろう、と考えても間違いではあるまい。
 
各回の最後に、日本版としてローリー・寺西がギターを弾きながら解説している。これがとてもよく整理されていて、わかりやすい。
ローリーは「時効警察」シリーズⅠ最終回でも自称アマデウスという作曲家を演じ、彼ならではであった。頭のいい人である。
 
それにしても、KISSのメンバーなど知らなかったから、この番組を見る前は、ジーン・シモンズ? 往年の上品な名女優でしょ?
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