ベージュ: 谷川俊太郎 新潮社(2020)
詩集をはじめから終わりまで順に続けてよむことはきわめて少ない。詩人の方も、一つ一つの詩をそういう想定で作ることはほとんどないだろうが、そうであっても読む人は読む。私の場合、この詩人の詩はどういうものなのだろうか、という興味が、一つ一つの作品を読みながらも継続していく、ということなのだろう。
谷川俊太郎も、詩集とか、初出の媒体などで読むよりは、なんらかの形で目に入ってきて、いくつかはなかなかだなと思った程度であった。
今回、この詩集は、昨年末に日本経済新聞で各分野の回顧の一つとして、蜂飼耳(詩人)が1年の成果の一つとして挙げたのを見て、初めて知った次第である。
蜂飼は「川の音楽」という詩の中の三行「川が秘めている聞こえない音楽を聞いていると/生まれる前から死んだ後までの私が/自分を忘れながら今の私を見つめていると思う」を挙げているが、谷川の他の詩集がどうなのかわからないが、たしかに今頭の中を巡りあるいている自分と、いつの間にか解き放たれている私、つまり私がうたっているというだけでない、なにかそういう世界を感じているという詩が、ほかにもいくつかあった。
あとがきにあったことだが、ひらがな回帰ということは、なるほどそうかと思う。何も考えずに漢字を使うことは日常よくあるが、頭の中で思い浮かべ流れていくことのはのながれはひらがなにふさわしいかもしれない。最近和歌を見直しているから、なおさらなのだろう。
谷川には社会の動きに敏感に、強くかかわるという感じはないように思っていたが、この詩集には少し政治の季節の中といったものもある。茨木のり子の詩ほどではないから、受け取り方は難しいが、たしかこの二人はそういうところについてお互いコメントしたことがあったように、どこかに書かれていた記憶がある。
実は谷川の詩をよく目にしてきたのは絵本やそれに近い分野であって、「ホットケーキ」(きりなしうた)とか海外の名作絵本の翻訳(レオ・レオニの「スイミー」など)だけれど、なんといってもナンバーワンは「もこもこもこ」(絵は元永定正)で、これ三歳前後の子供たちの前で読み聞かせをすると、最初から最後まで声をあげ笑いっぱなしで。抽象的な絵柄とオノマトペだけなのだが。どうやって発想できたのか、これが私にとっての、この詩人の「不思議」である。
前記の蜂飼耳を知ったのも彼女が作った絵本が最初のきっかけだから、面白いものだ。
さて、谷川は1931年生まれで、あとがきには米寿になった、ベージュという色は嫌いではない、とあった。年齢がある程度いくと、なんとなくわかる。
詩集をはじめから終わりまで順に続けてよむことはきわめて少ない。詩人の方も、一つ一つの詩をそういう想定で作ることはほとんどないだろうが、そうであっても読む人は読む。私の場合、この詩人の詩はどういうものなのだろうか、という興味が、一つ一つの作品を読みながらも継続していく、ということなのだろう。
谷川俊太郎も、詩集とか、初出の媒体などで読むよりは、なんらかの形で目に入ってきて、いくつかはなかなかだなと思った程度であった。
今回、この詩集は、昨年末に日本経済新聞で各分野の回顧の一つとして、蜂飼耳(詩人)が1年の成果の一つとして挙げたのを見て、初めて知った次第である。
蜂飼は「川の音楽」という詩の中の三行「川が秘めている聞こえない音楽を聞いていると/生まれる前から死んだ後までの私が/自分を忘れながら今の私を見つめていると思う」を挙げているが、谷川の他の詩集がどうなのかわからないが、たしかに今頭の中を巡りあるいている自分と、いつの間にか解き放たれている私、つまり私がうたっているというだけでない、なにかそういう世界を感じているという詩が、ほかにもいくつかあった。
あとがきにあったことだが、ひらがな回帰ということは、なるほどそうかと思う。何も考えずに漢字を使うことは日常よくあるが、頭の中で思い浮かべ流れていくことのはのながれはひらがなにふさわしいかもしれない。最近和歌を見直しているから、なおさらなのだろう。
谷川には社会の動きに敏感に、強くかかわるという感じはないように思っていたが、この詩集には少し政治の季節の中といったものもある。茨木のり子の詩ほどではないから、受け取り方は難しいが、たしかこの二人はそういうところについてお互いコメントしたことがあったように、どこかに書かれていた記憶がある。
実は谷川の詩をよく目にしてきたのは絵本やそれに近い分野であって、「ホットケーキ」(きりなしうた)とか海外の名作絵本の翻訳(レオ・レオニの「スイミー」など)だけれど、なんといってもナンバーワンは「もこもこもこ」(絵は元永定正)で、これ三歳前後の子供たちの前で読み聞かせをすると、最初から最後まで声をあげ笑いっぱなしで。抽象的な絵柄とオノマトペだけなのだが。どうやって発想できたのか、これが私にとっての、この詩人の「不思議」である。
前記の蜂飼耳を知ったのも彼女が作った絵本が最初のきっかけだから、面白いものだ。
さて、谷川は1931年生まれで、あとがきには米寿になった、ベージュという色は嫌いではない、とあった。年齢がある程度いくと、なんとなくわかる。