メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ショルティの「マーラー第7」

2023-06-04 09:25:40 | 音楽一般
このところマーラーを聴くことがほとんどなかったが、久しぶりに何かをと思い、作曲者の頭の中をあまりさぐる聴き方でなく、音から、ということで、交響曲なら第7番にしようと思った。

LPレコード、CDがずいぶん場所をとるので、何年か前に整理した時、同じ曲でも複数かなりあるマーラー、第7はショルティかな、そしてショルティなら第7かなということになった。
サー・ゲオルグ・ショルティ指揮 シカゴ交響楽団 録音:1970年のLPレコード
 
実にすっきりした響き、進行で、曲が、オーケストラが耳に入ってくる。変なストレスもない。
以前だったら、マーラーは鬱々として、歪みもあった方がなどと、いまから思うと先入観があったと記憶しているが、優れた作曲家なら今聴いているものが多分本来で、そこから出発するもの、という風に考えた方がいいのだろう。

ショルティという人も、私が若いころは、鋭敏でうまいが、何か表面的(なのではないかということだったのだが)という受け取り方だった。欧米の高い評価がよくわからなかったが、私の音楽への接し方も変化してきた。このタイミングでまた聴いてよかったと思う。
マーラーも思い通りに曲を進めていて、悲劇的なという思いを常に頭において聴いていた時期は、何ということだったのだろう。それも無理ないか?

ところで、これは英DECCA最盛期の録音である。50年前に買った時より再生環境が少しよくなったはいえ、まあこれは素晴らしい。英DECCAのマーラーではほかにもズービン・メータ指揮ウィーンフィルの第2番「復活」などあの最後のぐっと腰をいれフィナーレのトゥッティのになるところ、他の録音に聴けないすばらしさがある。

1970年前後には同じショルティでもワーグナーの「指輪」をはじめてとするオペラをはじめ、英DECCAの名録音は多い。カラヤン・ウィーンフィルのR.シュトラウス「ツァアラトゥストラ」(1959)なんか冒頭のパイプオルガンのまだ音らしいものが聴こえる前の空気の震えがたまらない。
このころはジョン・カルショウ、エリック・スミスというプロデューサーの名前を普通の音楽ファンでも知っていた。ある意味幸せな時代だった。

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