晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『幕末・維新』

2006-12-02 19:56:20 | Weblog
 急に気温が下がって、周囲でも体調を崩している方が多いです。小生も、気管支炎が回復せず、不調な一週間でした。

 『幕末・維新』(岩波新書 シリーズ日本近代史① 井上勝生著2006)

 本の帯には、「維新史を書き直す意欲作」と謳われていますが、どこが書き直されているのでしょうか。

 本書では、従来の歴史は、近代化を遂げた欧米列強がアジアを侵略するという対外的な危機を強調し、その事態に直面した江戸幕府の軟弱で屈辱的な姿勢であったとされている。

 それに対し、井上氏は、江戸時代の成熟した伝統社会のもと、地域の活発な経済活動が外国資本の侵入を断念させ、開国がゆっくりと受容、定着し、植民地化の危機をのがれ、自立が守られたとする。
 軍事的な劣勢のもとでも、巧みな外交があったとされている。

 一方、幕府を倒した明治政府は、天皇制を掲げ、「皇統綿々」「万世一系」などという非合理的な神国思想と大国主義を掲げ、以後冒険主義的な外交路線になっていったとされる。

 しかし、実際は、政府の要人が一斉に長期の外遊の出れるほど、列強との関係は安定していたものであった。

 
 私達は、無意識のうちに、「明治、大正、昭和・・」と教えられ、近現代史は、封建時代としての江戸時代とは断絶したものと教えられてきたのではないでしょうか。

 井上氏は、江戸時代の社会の成熟度を再評価する。反面、明治の近代化(富国強兵、殖産興業)を手放しでは喜ばない。
 戦前社会が、明治、大正からの延長で戦争への道となり、戦後はそれとは別の社会として再スタートしたと区切ってきたが、どうなのでしょうか。

 続刊を楽しみにしたい。

 


 


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