晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『1Q84』 BOOK1

2009-06-13 19:35:33 | Weblog
 『1Q84 BOOK1』(村上春樹著 新潮社 2009年刊)

 現在も爆発的に売れ続けているベストセラーのストーリーをここに書いてしまえば、それは営業妨害になってしまうであろう。

 書名からジョージ・オウウェルの『1984』にヒントを得た作品であろうことは誰しも想像することである。そこに描かれた1984年は、ビック・ブラザーに支配された全体主義社会、歴史が支配者の都合で何度でも書き直される社会であった。

 さて、この小説の主人公が語る、「狂いを生じてきているのが私ではなく、世界なのだ。私の頭がおかしくなってきている。」が全てを表している。そんな過去、現在、未来が錯綜した世界が描かれる。

 主題の流れとは別に、私がこの物語の中で注目しながらサブストーリーとして読んでいるのは、ある組織の運命についてである。1970年前後の大学紛争に端を発し、運動の挫折後、有機農業による農場コミューンの建設(1970年代)、路線対立の後、ゲリラ的革命運動を志向する武闘派は警察・自衛隊との銃撃戦で壊滅(1981年のこと。)、一方のコミューン派は、宗教法人となってカルト化していく(オウム真理教を連想する)(現時点である1984年のこと)。

 宗教団体の方は、下巻でも登場し、ストーリーの鍵になることであろう。

 現在、上巻を読了したところであるが、ようやくあちこちに仕込みが終ったというところである。下巻では、いよいよ謎解きが始まるのか、肩透かしをくらうのか。

 文章も上手い、ストーリーもひきつけられる、しかし、多少の逸脱がありながらも、どこか安全・安心な感じが付きまとう村上春樹。裏切ってほしいのだが。それが、村上春樹。


 村上春樹作品を読むのは、当ブログ2007.11.25「走ることについて語るときに僕の語ること」が最初で、これが2作目です。そこには、生住滅氏の秀逸なコメントも付いています。
コメント
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