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『日本経済を問う』

2007-01-02 20:32:55 | Weblog
 『日本経済を問う 誤った理論は誤った政策を導く』(伊東光晴著 岩波書店 2006年刊)

 日本経済をわかりやすく解説しているが、俗論とは一線を画している。果たして、実社会の実感と比べて、伊東氏の分析はどうだろうか。

 現在の好景気の要因は、
 ①企業のリストラの効果(人件費のカット、借入金の返済による支払い利子の削減、広告費の圧縮など)。(企業は好調だが、働くものへの見返りは少ないとの実感。)
 ②対中国を中心とする輸出の増加によるもの。
 ③消費需要によるものではない。

 バブル経済崩壊後、「失われた20年」におけるこの国がとってきた経済政策の誤りとして、
 ①減税(個人所得に対する定率減税、はじめは恒久的減税といっていたがいつのまにか改名)は、貯蓄に回り、消費支出の増加に繋がらない。不況対策にはならない。(減税も、無くなって改めて税負担を実感)
 ②低金利政策:ローン購入の少ない日本では、需要拡大に寄与しない。低金利は、借り手の企業の金利負担が軽減されるが、貯金をしている家計、とりわけ高齢者の家計の所得減に。

 低金利により、国債の金利負担が少ないため、安易な国債の発行、そして安易な減税、その結果、巨額の国債残高に。

 そして、「失われた20年」の帰結は、
 ①財政破綻:その主因は、不況による税収減、減税、社会保障費の増加のためであり、公共投資の影響は僅かである。
 ②不平等の進行:所得税の累進を弱めた(最高税率1986年70%が、37%に)結果、再分配機能は税によらず、社会保障(福祉扶助)によることに。

 伊東氏の提言:付加価値税(所得に比例する税)で、社会保障支出に廻せば、再分配効果が発揮できる。現に、年金掛金、健康保険料は所得に応じて拠出している。付加価値税による負担か、社旗保険料の引き上げによる負担か、選択の時である。

 ③所得格差の拡大:非正規雇用の急増(特に若者)、その原因は、規制緩和、労働者派遣法の改変。(正社員の減、非正規の増加は、実感するところであり、会社の存続のため自らもそれに手を貸している。)

 伊東氏の提言:高齢社会を迎え、年金、健康保険、介護保険が破綻する。解決方法は、増税しかない。消費税10%、そして、社会保険料を抑制へ。
 しかし、政治家は、選挙を意識して、増税を言い出せない。付加価値税に反対する「革新」政党は、欧米には無い。



 人気取りのための安易な減税は止め、高齢社会への社会保障費の財源として、消費税(付加価値税)の増税しか道はないのだろうか。税で負担するか、社会保険料で天引きされるか。いずれにしても、必要な掛かる費用なのだから。

 もうひとつ別の、オルタナティブな道を求めたい。
 

 

コメント
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