馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

新生子牛の脛骨骨折おまけに下顎骨折も part3

2021-02-15 | 牛、ウシ、丑

もともと子牛の切歯骨は弱々しい。

切歯骨もしっかり骨に埋まっておらず正常でも可動性がある。

馬と違い反芻獣には上顎切歯骨がない。

しっかり上と下の切歯骨で草をちぎって食べるような食べ方を牛はしない。

(羊や山羊はまたちがうんだけどね)

しかし、下顎切歯部がグラグラではいつまでも骨癒合せず生きていけない。

下顎切歯骨は不安定なので固定には使いにくい。

子馬でやってきたようにプレート固定するしかないだろう。

正中切開して左右の下顎切歯骨へアプローチする。

1/3円プレートと4.0mmキャンセラスscrewを使った。

顎はグラグラしなくはなった。

                -

私は血液検査業務があったりして別室にいた。

覚醒室を覗きにいったら子牛も誰もいなくて、出入りするオーヴァースライダーが開いている。

「あれっ 死んじゃって解剖場へ運んだのか?」と一瞬思った。

実は飼主さんが迎えに来て、車に積んで帰った、けど、モクシを忘れて帰ったので皆で走って追いかけたとのこと。

                 -

この子牛、次の日の昼頃に死んでしまった。

ひどい衝撃が加わっていたのは間違いない。

さらに外科侵襲を加えなければならない状態だった。

憐れな子牛だった。

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この冬は寒かった。

しかし、暖かい日もあって、融けて、それがまた凍った。

放牧地はスケートリンクのようになっている部分がある。

12月から何頭か骨盤骨折の馬が運ばれてきた。

トラクターでなんとかできるのか・・・・・

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今日2月15日10時から2月16日20時まで、北海道家畜畜産物衛生指導協会日高支部と日高獣医師会共催の講習会がオンデマンド配信されます。

馬の喉頭の超音波検査のはなし

馬の膝のボーンシストの治療のはなし

馬の関節炎のSAAのはなし

馬の子宮動脈破裂のはなし

牛の骨折プレート固定のはなし

が中身です。

https://39live.jp/0215

において所属氏名を送信後、

ID : eisei

PW : 210215

で観れる、そうです。

 

 

 

 

 

 

 



11 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2021-02-15 06:20:12
 牛ちゃん
 どうしたら助かったんだろ。
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>はとぽっけさん (hig)
2021-02-15 21:23:04
分娩監視できていたら。がひとつだと思います。治療より事故予防。
脛骨骨折だけなら、キャストでの治療、あるいは応急処置して子牛がしっかりするのを待つ、という方法も考えられますが、下顎もでしたし、フルリムキャストしないで済む方法としてダブルプレート固定しました。が、結局立つこともなく自力飲乳することもなく死んでしまったので、結果から言うと外傷後は何をしても助からなかったのかなと思います。
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Unknown (はとぽっけ)
2021-02-15 22:09:58
 じゃ、治療しない。という選択もあったのでしょか?
 「それだと、点数付かないのはしかたないか。となりかねない。」というのを心中に用意していたので、そうではないはずですが、書いちゃいます。が、たぶん、助けられると思ったはず。
 先生方も残念に思っていることでしょう。
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>はとぽっけさん (hig)
2021-02-16 05:21:58
助かると思ってましたよ。リスクも認識してましたが。
フルリムキャストで様子を観ている間に死んだら、さっさと手術してキャストの不自由がないようにしてやれば助かったかも、と考えたでしょう。
すべては結果論です。
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Unknown (zebra)
2021-02-17 06:20:56
おかげをもちましてご相伴あずかることができました。
ありがとうございました。

華奢な子牛ですね。
最後から2枚目のX線像しか見えませんが、間違えると上顎もおかしいと思いませんか。
そうでなくとも哺乳にいって蹴飛ばされるような強い外力の結果の症例なのでしょうね。
症例は初乳すら飲んでいないかも知れませんが、そうでなくとも絶望的な免疫能なので一期癒合に行くまで固定方法によらず感染症のコントロールが必要かも知れません。
最近は本当に惨憺ですね。
野放図な育種の一面を垣間見れましょうが、もはや黒和は親子なんて牧歌でホルETして親から取り上げる物だと感じませんか。

育児放棄も含めプアパフォーマンスをスコア化すれば獣医師の徒労の抑制になるのかも知れません。
助かるかも知れないの損失抑制の努力に国も組合も与せず時間と金かけて頑張ってくださいねであれば、廃用の線引きにエビデンスを積み上げる方が支持される場面も出てくるでしょう。
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>zebraさん (hig)
2021-02-17 20:50:34
35kgだったか、けっこう体重はちゃんとありました。
分娩は異常産だったのかもしれません。何が起きたのかはわかりませんが。
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Unknown (かも)
2021-03-09 18:27:15
初めてまして。コメント失礼致します。
このブログの記事とは直接関係ないのですが、ご教示頂ければ幸いです。

先日、育成牛の中手骨遠位の成長板骨折があったのですが、外観から、遠位の骨がずれていて肢先が外側に曲がっていたので、肢を牽引しこのズレを修正することを試みてからキャスト固定をしました(実際には牽引してもあまり骨が動きませんでした)。
しかし、先生の過去の記事で、成長板が完全に剥離するとキャストで治すのは難しいという文書を見かけまして、だとすると牽引する事は骨折部位を余計剥離させることになってしまい逆効果かと思えたのですが、
キャスト固定するとして、成長板の牽引は避けるべきでしょうか?
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>かもさん (hig)
2021-03-09 20:19:39
馬は中手骨遠位成長板が完全に剥がれて変位するとキャストだけで治すのは厳しいでしょうね。牛は変位を整復できれば、キャストで治せることが多いと思います。体重が重い牛ではキャスト固定に皮膚が耐えられるか、上手にキャスト固定できるか、が問題になってくると思います。
何ヶ月の育成牛かわかりませんが、変位したままだと成長板は骨癒合してしまい機能を失い、肢軸が曲がるか、それ以上成長しなくなるでしょう。なんとしても変位は整復したいところです。
X線撮影が不可欠だと思います。
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Unknown (かも)
2021-03-10 17:58:26
ご返信ありがとうございます。
説明が不足しており申し訳ありませんでした。患畜は満6か月例のホルスタイン♀です。
 骨折した成長板が曲がっていてもとにかくくっつけば、他箇所の成長板が伸長してある程度バランスをとってくれないか、と浅薄ながら思っていたのですが、それは期待できなさそうなのですね。
 X線撮影をしたのですが、骨折部より遠位の骨が外側に大きく(1cmほどでしょうか)ずれていました。
キャストを巻いた際にもロープ等で牽引したのですが骨が動かなかったので(理由不明です、腫れのため?)、ロープと滑車で再度の牽引を試みるかどうか、悩んでおります。
 骨折した成長板にはさらに負担になりそうですが、再度強く牽引してでも変位を整復するのを優先するという考えでよかったでしょうか?
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>かもさん (hig)
2021-03-11 19:31:12
私の経験では、牛をしっかり鎮静、あるいは麻酔して、蹄あるいは繋をしっかり(牛の体がその肢で浮き上がるほど)牽引しておいて、中手骨骨幹遠位部にかけたローブでその場合は外へ引っ張ると、ボクン、と整復されると思います。good luck !!
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