馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

頚部腫瘤branchial cyst の摘出

2017-06-02 | その他外科

新生仔馬の頚の右側に塊があるのに気づいたが、徐々に大きくなってきた、とのことでまずは診察。

超音波で診たら、内部に液を容れた袋状で、一部には軟骨質のものがある。

食道との関係はなさそうだった。

喉頭の軟骨の形状は左右ともはっきりした異常はない。しかし、右の背側輪状披裂筋は質が気になる。

頚静脈と頚動脈に挟まれていて、重要な神経も走っている。

しかし、放置しておけない。

手術して摘出しましょう。

同じようなものを手術したことがあるから言える。

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頚静脈の腹側の皮膚を切開して、あとはメッツウェンバウム剪刀で開いていく。

切るのではない、ほとんど刃物としては使わない。押して開く、剥がして離す。

液で膨らんでいたが、破らずに摘出できた。

けっこうな大きさだった。

内容は少し濁った粘度のある液体。

シストの内部は平滑な組織で内張りされていた。

しかし、どこかで分泌があるので、液が増えて膨らんできたのだ。

発生学的な過誤により分泌する組織が体の中に残ってしまったのだと考えられる。

branchial cyst.

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今日から晴れる予報だったのに、今日も冷たい霧雨が降ったりして寒かった。

 

 

 

 

 


球節 第一指骨の軟骨下骨嚢胞のスクリュー固定

2017-06-02 | 整形外科

軟骨下骨嚢胞は、大腿骨内顆のものが圧倒的に多い。

が、他の部位にもできることがある。

球節では、中手骨や中足骨の遠位にできることもあるが、第一指骨や第一趾骨にできることもある。

中手骨や中足骨だと関節鏡で観ながら搔爬することもできるが、第一指骨や趾骨だと関節面を観ることはできない。

3歳現役競走馬。競馬場で第一指骨に骨嚢胞が見つかって手術のために帰ってきた。

跛行はあるが、Low4ブロックでは跛行は消えず、繋靭帯近位付着部のブロックで跛行消失した、とのこと。

しかし、どうせ休養するなら球節の骨嚢胞も手術しておきたい、との意向。

スクリュー固定しか外科治療の方法はないだろう。

しかし、外内方向撮影だと、この症例の軟骨下骨嚢胞の透過像は明瞭には見えない。

狙い定めるのはやっかいだ。

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X線透視装置で観ながら注射針を刺す。

まずは2.5mmドリルで穿孔した。一度目は関節面をかすったので、やりなおした。

ミリ単位で狙わないと良い角度と位置に入らない。

どうだ!?

いいかも。

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雨ばっかだね~

しっこして大急ぎでまた玄関フード

 

 

 


小結腸捻転

2017-06-02 | 急性腹症

前日、種付けに行く途中にひどい疝痛を起こした繁殖雌馬。

仔馬を種馬所に預けて来院した。

トラックで倒れて立てないのをなんとか起こして診療室へ入れ、血液所見が異常があることだけを確認して開腹手術。

てっきり結腸捻転だろうと推測していたが、盲腸の気脹、結腸の膨満、小腸の膨満、小結腸の気脹、が所見だった。

私は手術に参加せず、見ながら指示はしていた。

終わって夜10時。

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夜中は落ち着いていたが、朝4時から痛くなった。

フルニキシンで落ち着いたが、7時にまた痛くなった。

直腸検査したら・・・・直腸の奥で狭窄し、引張られている感じもある。

小結腸閉塞だ。

別な馬もかなりの疝痛で来院したので、そちらを先にやる。

終わって、続けて開腹。

術創を尾側へ切り広げ、小結腸を触ると捻転していた。

引張り出して、捻転をほどいたら、小結腸の腸間膜に孔が開いていたことで捻れていたことがわかった。

さらに術創を乳房の前まで切り広げ、傷んでいた部分を切除して、正常な部分を吻合した。

これ以上、直腸側は引張り出せないので、もっと直腸よりが傷んでいたら人工肛門するしか助かる可能性はなくなる。

この馬、2年前に2度開腹している。妊娠末期の小腸閉塞だった。

今回の疝痛はそれとは無関係のようだった。

今日、親子で退院していった。

 

 

 

 


1歳馬の第三足根骨盤状骨折のスクリュー固定

2017-06-02 | 整形外科

この1歳馬は飛節何腫になってX線撮影された。

OCD(離断性骨軟骨症)はないが、第三足根骨の盤状骨折がみつかった。

不思議なことに、跛行したことはないし、今も普通に放牧しているとのこと。

来院して、対側肢も撮影してみたら・・・

第三足根骨に亀裂らしきものが見つかった。

ここが折れ易い馬っているんだろうか・・・・・?

盤状骨折は4.5mmスクリューで固定した。

命あるものだから大切にしたい、という飼い主さん。

うまく固まって、足根関節がDJD(変形性関節症)をおこさなければ、調教・競馬に耐えられると思う。

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季節はずれの実習生が来ていた。

「大学の1年分の診療を観れたんじゃないの?」

と訊いたら、

「6年分観れました」とのこと。

大学院で勉強してたり、ニュージーランドで麻酔専門医のコースへ進みたいとか、ドイツの馬病院で働くことが決まっているとかの3名。

いまどき珍しいかもしれないが、日本の馬診療も負けずに進んでいかないとね。