馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

疝痛Day

2017-06-24 | 急性腹症

午前中、1歳馬の球節と飛節の関節鏡手術。

球節の骨片はX線画像ではとても小さく見えたが、関節液が増量しており、骨片も摘出してみると当たり前の大きさがあった。

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昼に、当歳馬の疝痛が来院する、とのこと。

早めの昼食を食べて、正午に診察。

超音波で重積像が確認できたので、すぐ開腹手術。

重積像が右の膁部で見え、その様子から盲腸への重積か?と思っていた。

空腸が回腸に入り込み、そのまま盲腸内へも20cmほど入り込んでいたのだった。

引き抜けないと面倒な手術になると思ったが、幸いなことに強くひっぱったら引き抜くことができた。

壊死した部分を切除して、空腸を回腸に端端吻合した。

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来院するのに1時間以上かかる地区から繁殖雌馬の疝痛の依頼。

転がりまわるほど痛くて、鎮痛剤も効かない、とのこと。

すぐに向かうように言う。「仔馬は置いてこないと危ないよ。」

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近くの地区から仔馬の疝痛の依頼。転がりまわるほど痛く、鎮痛剤も効かない、とのこと。

こちらが先に来た。

ロタ腸炎が流行している牧場で、来院した疝痛仔馬も調べるとロタ陽性だった。ただし下痢はしていない。

超音波で観たら、小腸は膨満しているが、盛んに蠕動している。

場運車で輸液して牧場へ帰す。

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別な牧場の繁殖雌馬も疝痛で来院。

この馬は4回の開腹手術歴がある。

これは判断が難しい。

疝痛は間欠的で、激しくはない。

これは後回しにして慎重に判断した方が良い。

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遠い地区から来た繁殖雌馬は、超音波で結腸動脈が右下腹で広い範囲で見えた。

大結腸が変位しているのは間違いない。しかし・・・・

疝痛が治まっているので、入院厩舎で様子を観ることにした。

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4回の手術歴がある馬が、やはり痛い。

曳き運動してもらう。

結腸左背側変位の疑いがある。しかし、私も直腸検査したが確信が持てない。

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遠い地区から来た繁殖雌馬が、また痛くなった。

発汗し、前肢を屈曲させる。

「こっちをやりましょ」

別に気が変わったわけではない。

結腸が変位していると確信している馬が痛がっている。もう5時間になる。手術すべきだ。

開腹したら、大結腸右側変位だった。

超音波で体表から広い範囲で結腸動脈が見えた理由がわかった。

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その間に、開腹手術歴がある繁殖雌馬が転がるほど痛くなった。

フルニキシンを投与して、今の手術が終わったらすぐ開腹しますから、と伝える。

が、

先の手術が終わったら、疝痛は落ち着いた。

また枠場に入れて直腸検査と超音波検査をしたが、腹囲は減少し、結腸左背側変位の確信は持てない。

とりあえず牧場に帰って様子を観てもらうことにした。

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片づけをしていたら、別な仔馬の疝痛の依頼。

激しい痛みで鎮痛剤も効かない、とのこと。

来院したら、痛くて立っていられない。

フルニキシンをうったが変わらない。

メデトミジンをうったら、寝たまま動かなくなった。

超音波検査で膨満して蠕動がない小腸が確認できた。

開腹手術したら回腸の捻転だった。10cm足らずの部位が、絞約されていたらしく変色していた。

すぐほどけてでてきたので、正確にはどうなっていたのかはわからない。

空腸を回腸へ端端吻合した。

終わって帰ったのは11時半。

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夜中3時。昼間に開腹手術した仔馬の輸液管が捻れて、点滴が落ちない、との電話。

入院厩舎へ行って直す。

ついでに他の馬の様子を観る。             

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そして、次の朝、4回の開腹手術歴を持つ馬は、5回目の開腹手術をすることになった・・・・・

(つづく)

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ナハ