1歳馬が頚を蹴られた後、徐々に腫れて、ひかなくなったとのこと。
超音波で観ると、マス(塊)の内容はかなりechogenicに白っぽく写る。
echogenicとはエコー源性のこと。
切ってみるしかないと判断し、手術台で吸入麻酔下で仰臥位にし、胸骨下顎筋の腹側で筋間を分けて、塊に到ろうとするが、肩甲舌骨筋は幅があり筋層を分けざるを得ない。
で、塊を引っ張り出したらどうやら食道内に塊があるようだった。
食道に内視鏡を入れてもらうが内腔には異常なし。
食道シストは以前も経験がある。
食道の筋肉を分けて、塊を露出させる。
そして破らずに取り出した・・・・かったのだが、
薄く透けて見えるような食道粘膜組織だけでできた皮を破ってしまった。
内容物は粘度の高い白いクリーム状物。
膿ではなく分泌物で、まず無菌だ。
切り離して、食道内腔が破れていないことを確認して、周囲をよく洗って、食道筋層、肩甲舌骨筋、皮下織、皮膚を閉じた。
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食道の粘膜と筋層の間に大きな死腔ができ、食道の筋層も縫ってあるので、数日の制限給水、制限給餌を指示した。
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(図は「家畜比較解剖図説」より)
食道穿孔が起こることがあるが、頚部食道なら自然治癒することが多い。
しかし、食道切開をして縫合しても癒合不全が起こりやすいので、食道梗塞でも食道切開はできればしたくない。
食道梗塞の後で食道潰瘍や食道狭窄が起こることがあるが、これも自然治癒を待つことが多い。
切開して縫合しても癒合不全が起こりやすいことから考えれば、狭窄部位を切除して吻合するのは難しいだろうと思う。
腹腔外にある、ヘンな消化管だ。
うちでも蹴られたりぶつけたりしてなかなか腫れが引かない時があるけど幸い長い時間かかってもいつかなくなっています。
でもこれからはあまりにも長く腫れるようなら超音波とかしたらいいですか?
たぶん頚を蹴られたこととはなんの関係もないと思っています。異所形成というか、徐々にできてしまったものなのでしょう。
今までに少なくとも3頭診た記憶があります。しかし、とても珍しいものだと思います。