手押し車に乗せて手術室へ運び込んだ。
X線撮影する。
左後肢。
尾-頭方向では骨幹部での斜骨折に見えるが・・・
外-内方向で見ると、螺旋骨折であることがわかる。
この子牛、親牛がひっくり返した草架の下敷きになっていたのだそうだ。
螺旋骨折が斜骨折となって骨を2つに分けているが、螺旋状の骨折線はさらに遠位へ骨幹端まで伸びている。
骨折部位の骨は縦に亀裂が入っている。
脛骨全長にわたるプレートを当てることが必要だ。
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骨折部で骨膜が骨から剝がれているが、それ以上めくってはいけない。
プレートは骨膜の上に当てるのだ。
なんとか整復して、骨鉗子で仮止めして、X線透視装置で確認する(これは反則技のようだけどまあご容赦ください;笑)。
この症例ではプレートは脛骨内側に入れる。
プレートは骨が引張られる側(テンションサイド)へ入れる。
外側から、内尾側へ向けてラグスクリューを2本入れて仮固定した。そうすれば、スクリューヘッドがプレートを当てるのを邪魔しない。
そうして、使うプレートを選ぶ。
成長板をまたぐ内固定はしたくない。10穴のナローDCPが使えるか当ててみたが、長すぎる。9穴ナローDCPを使うことにした。
DCPは骨に沿わせる必要がある。
骨から浮いていると、プレートとスクリューがガチャガチャ動いて、ゆるみ易いし、スクリューが破損したり、内固定が崩壊する要因になる。
ベンディングプレスでDCPを反らせる(これは他の器具でもできなくはない)。
骨折部の遠位と近位に4.5mm皮質骨スクリューを入れた。これでかなりしっかりする。
スクリューは対側の皮質骨にもしっかり効かせる(double cortical)。
骨幹端へは6.5mm海綿骨スクリューを使った。
これは本格的にやるのはこの症例が初めて。
子牛の骨幹端はとても柔らかいので、4.5mm皮質骨スクリューではネジ山の効きがたよりないのだ。
成長板を貫かないように注意する。
最後から2本目は、骨折部近くに、最初に入れたラグスクリューに当たらないようにスクリューを入れようとしたが、当たってしまった。
仕方がないので、短いスクリューを入れた。
一番最後は、骨折部に、対側皮質に効くように斜めにスクリューを入れた。
DCPでは、すべてのプレート孔にはスクリューを入れる。
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一番近位は6.5mm海綿骨スクリューを使ったのに効いた手ごたえがなかった。それだけ子牛の骨幹端は柔らかい。
近位から2番目の6.5mm海綿骨スクリューは、対側皮質を貫いている。そして、しっかり効いた手ごたえがあった。皮質2ポイント。
近位から3番目の4.5mm皮質骨スクリューも対側皮質にも効いている。骨折部の近位側累計4ポイント。
近位から4番目の4.5mm皮質骨スクリューは骨折線近くから挿入した。手前の皮質に強度はない。しかし、対側皮質をしっかり貫いた。累計5ポイント。
近位から5番目の4.5mm皮質骨スクリューは、ラグスクリューに当たったので、手前の皮質にしか効いていない。遠位側累計1ポイント。
近位から6,7,8番目の4.5mm皮質骨スクリューは対側皮質を貫いている。しかし、6番目のスクリューの先は亀裂に近いかもしれない。累計6ポイント。
一番遠位の6.5mm海面骨スクリューは、対側皮質もしっかり貫いたし、効いた手ごたえだった。遠位側累計8ポイント。
これらのスクリューとこのナローDCP1枚で大丈夫だろうと判断した。
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子牛は、またトラックの荷台へ縛り付けられて帰って行った。
痩せて汚れた子牛だった。
このあとのことが気になる。
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手術の翌日、x線画像を見直して何度も検討する。
頭の中だけではない。パワーポイントに貼り付ければ、x線画像を反転できる。
同じ角度の、内固定前と内固定後を並べることもできる。
CTがなくても、骨にどのように骨折線が走っていて、それをどう固定するべきだったのか、理想に近い内固定ができたのかどうか把握できるようになる。
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