馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

またまた大結腸奇形に悪戦苦闘する

2017-05-17 | 急性腹症

昼前、競走馬の喉頭内視鏡検査。

終わったら、分娩後の繁殖雌馬の不調の相談。子宮穿孔、消化管損傷、動脈破裂、などが疑われるが・・・

午後、2歳馬の球節chip fracture の関節鏡手術。

その前に、2歳馬の疝痛診察の依頼。

しかし、関節鏡手術が終わっても、すぐには来院しないことになった。

1ヶ月齢の仔馬の疝痛も連れて来たい、とのこと。

先に来る、重症馬から対応するしかない。

2歳馬が先に来院。

診察して手術適応だと判断したが、仔馬も来院。

仔馬はもう立てない。こちらが先だ。

仔馬は空腸捻転だった。

大きなループが腸間膜を軸に捻転し、その先はすっかり変色していた。

捻れを戻して、1.8m空腸を切除し、空腸空腸で端端吻合した。

終わってすぐ2歳馬の開腹。

結腸左背側変位を一番の推定診断に考えていたが、左背側変位はしていない。

大結腸はほとんど厚くなっていない。

右背側結腸には大量の内容が入っているが、ひどい便秘というほど固くない。

結腸を引っ張り出そうとするが、出てこない。

破れそうでとても危ない。

術創を切り広げたが、雄馬でペニスがあるので、それ以上は尾側には切り広げられない。

この30年、日本で最も多く馬の大結腸を引っ張り出してきた私が手こずるのだ;笑

仕方がないので、引張り出せた部分を切開し、水を入れてもみほぐして内容を少しずつ棄てていった。

それでも結腸壁の筋層が裂けたので、途中で縫合した。

なんとか大結腸を空にした。

あらためて引っ張り出して、盲腸との位置関係を確認した。

大結腸は・・・・ハート型をしている。

本当の骨盤曲は、腹側結腸の紐が終わる辺り。

大結腸が奇形なので、便秘しやすく、今回はそれに変位も加わったのだろう。

3時間がかりの大手術になった。

その前の仔馬の開腹も合わせると5時間超。

片づけをしていたら、2歳馬のオーナーさんが、

「思い切って切り取ってしまえばよかったんじゃないか」と言う。

楽しいおじさんだ;笑

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タウリン、カフェイン、ヴィタミンB群、さて効果はあったか・・・・・

一番元気が出るのは、きのう手術した馬が今日好調なことだ。

 

 


新生仔馬の脱水と低血糖には遅れず対応しなければならない

2017-05-17 | 新生児学・小児科

夜中、生まれて2日目の仔馬が乳を飲めなくなった、のでとNICU(neonate intensive care unit)への依頼。

来院したら立っていて、親からも哺乳している。

しかし、血液検査ではPCV47%、白血球数2740/μl。

かなりの脱水と白血球減少。

持続点滴するならその間親から離さなければならない。

せっかく親から哺乳できているので、それはしたくない。

それで、留置カテーテルは入れず、留置針を使って1時間ほどかけて電解質液と5%ブドウ糖を点滴した。

翌朝、仔馬は自力で親から哺乳していた。

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子馬が乳を飲めなくなったら、脱水、低血糖におちいる。

それに対応するには、輸液しなければならない。

夜中でもだ。

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翌朝、仔馬の様子を観にいって、カルテを書いていたら1歳馬の外傷の依頼。

往診先で縫合しようとしたが、馬が敏感でできなかった、とのこと。

来てみたら、後肢で、腱が露出し、汚れていて、一部は骨膜も削れていた。

こんな外傷は立位で処置するのは無理だ。

患部の毛をきちんと刈り、

汚れた皮下織を鉗子でむしりとった。

50ccのシリンジに細い針をつけて思いっきり噴射すれば、傷をきれいにできる圧が達成できる、と書いてある外傷管理の本があるが、ウソだ。

腱傍組織を縫合し、皮下織に皮膚を縫いつけ、皮膚縁を縫合し、皮膚はステント縫合した。

それでも傷は癒合する率は高くない。

傷がはじけてしまうまでに、内部で組織の治癒過程が進むこと。

このまま二期癒合を期待するより、傷が小さくなること。を期待する。

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夜勤明けで、NICUの子馬が居たが、もっととんでもない日になるとは思っていなかった。