6月から、「例年の如く」繁殖雌馬の結腸捻転が続いている。
それも重症が多い。
この時季、馬たちは青草を飽食していて、大腸内容が多いのだろう。
しぼんだ風船をねじってもくびれないが、
膨らませた風船をねじるとくびれて締まってしまうのと同じ原理なのだろう。
食べ過ぎて動けなくなったあげく、変位して、ねじれ、たちまち拘扼されて重症化する。
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昼過ぎ放牧地で疝痛を発見された繁殖雌馬。
立っていられないほどひどいのですぐに来院した。
PCV70%。
疝痛発見から1時間半ほどなので助かる可能性があると考え、すぐに開腹手術する。
結腸の膨満はひどく、術創から出すのに苦労した。
それでも内容を排泄し捻転を整復したら、結腸の色調は薄紫からピンク色に戻った。
骨盤曲の切開部の粘膜は薄いアズキ色で、完全な壊死の状態ではなかった。
切開部からは飛ぶような出血もあり、血行が維持されていることを示していた。
結腸動脈周囲は腫れ上がり出血もあるが、結腸動脈にはしっかりした拍動がある。
これなら結腸を温存しても助かるだろうと判断した。
結腸固定術colopexy をして閉腹した。
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しかし、覚醒室で1時間経っても起立できなかった。
口粘膜の色は悪くないが、目つきがうつろでおかしい。
脱水がひどく、全身状態が悪いのだろうと考え、輸液を再開する。
手術終了から2時間ほど経って何度か起立を試みたあとようやく立ち上がった。
それからも30分以上よたついていたが、ようやく入院厩舎へ移動できた。
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が、不快感・不穏感が続き、そのうちはっきりした疝痛を示すようになり、全身状態も悪くなり、明け方には死んでしまった。
剖検すると、結腸は結腸固定を引きちぎり、尾側へ、さらに左から頭側へと捻れながら変位していた。
盲腸も結腸もひどく膨満し変色していた。
手術中に大結腸の内容はほぼ完全に排泄させたし、盲腸もガス抜きして縮小していた。
研修の先生達が来ていたので、捻転整復後に盲腸と結腸の位置関係を確認することの大切さを腸管を示しながら説明した。
それからcolopexyしたので、その時点では位置は整復され、結腸も膨満していなかったのは間違いないのだが・・・・
いつ再度変位したのかはわからない。
覚醒中か、あるいは入院厩舎へ移動してからか・・・
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術前PCV70%が示すように脱水と全身状態はひどく悪かった。
結腸は壊死の状態ではなかったが、動きを再開できなかったのだろう。
そのことで、腫れ上がった結腸と再び溜まった内容の重さにcolopexyが耐えられず再度変位したのだろう。
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オラ、毛布の上で寝ながら
イイ子にして待ってたゾ