真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「四十路の色気 しとやかな官能」(2005/製作:旦々舎/提供:オーピー映画/監督:浜野佐知/脚本:山邦紀/撮影・照明:小山田勝治/撮影助手:橋本彩子・藤田明生/助監督:加藤義一・横江宏樹・森内康博/音楽:中空龍/出演:美月ゆう子・佐々木麻由子・風間今日子・吉岡睦雄・平川直大・なかみつせいじ)。
 公園にて、ぼんやりとブランコに揺られる女(美月)の前に、自称“日本一ツイてない男”猪豚(吉岡)が現れる。負け犬呼ばはりされた女は、そのまま猪豚が生活する河原に張られたテントに連れて行かれ、そこでセックスする。猪豚のテントから姿を消した女は、七年前に離婚した、官能小説家の島浜兼六(平川)、十年前に女が看護婦をしてゐた時に、付き合つてゐた婦人科医の猿渡完治(なかみつ)、の下をそれぞれ訪ねる。島浜は、女と結婚してゐた時分には才気に溢れバリバリ書けてゐたのだが、離婚後、暴力妻のバキエ(風間今日子/何て役名だ>山邦紀)と再婚してからはスランプに悩んでゐた。猿渡も猿渡で、女を捨て勤務する病院院長の娘・ケシ子(佐々木麻由子/それにしても何て役名だ)と結婚してからといふもの、勃起不全に苦しんでゐた。
 キーワードでもある負け犬。冒頭女が猪豚から負け犬呼ばはりされる件に、シークエンスとしての説得力が全く欠けてしまふ点は致命的に苦しいところでもあるのだが、当サイト認定“2004’最も美しい映画”「乱痴女 美脚フェロモン」と同様、“何処から来て何処へ行く女”が、それぞれ悩みや苦しみを抱へる者達の前に不意に現れては、癒し救つて行くファンタジーである。女の正体は、特に目新しいものではないが、今回は語られる。
 以前には、書案の前で女に自慰をさせ、濡れそぼる女陰を見ながら官能小説を書き捲つてゐた島浜は、女との再会を経て、バキエに鞭打たれながら小説を書く、バイオレンス・スーパー・マゾ作家、として開眼する。本当に、山邦紀といふ人は頭がいいのかバカなのかよく判らない。大体、この帰結には女との再会は必ずしも必要ないのでは?女と再会し、猿渡も男性機能を回復する。喜び勇んで、その気のないケシ子を無理矢理犯す。この件で浜野佐知は、凡百の男性監督や珠瑠美とは異なり、初めは嫌よ嫌よと抵抗してゐた女が、何時しか感じ始め最後にはアンアン啼き悶えながら自ら腰を使ふ、やうな濡れ場は決して描かない。浜野佐知は、少なくとも日本一、その作る映画に嘘のない映画監督である。

 熟女AV女優として人気の美月ゆう子(ex.長瀬優子)、ピンク出演は、昨年末に観た坂本太(『未亡人と褌 -悦子の秘密-』)に続いて二本目か。以降にも順調に(?)主演作は控へてゐて(東京では既に二本共封切られてゐるが)、新東宝の佐藤吏はひとまづさて措き、オーピーの山邦紀新作は楽しみである。演技はといふと、水野将軍の次くらゐにたどたどしい台詞回し、とでもいつたレベルなのだが、とりあへず艶技の方は、まるで痙攣でもしてゐるかのやうに、終始全身を小刻みに震はせるのはエモーショナルにエロい。普通の洋服以外に和服姿の他、ナース服や全く意味不明なチャイナドレスまで披露する。
 どうでもよかないが、吉岡睦雄といふのは全く下品な役者である。薄らとぼけた国映若手勢がこの男を好んで使はうと最早どうでもいいが、吉岡睦雄が画面に姿を現すだけで、その映画の品位が下がりはしまいか。どうして、何時も通りの柳東史ではいけなかつたのかと、大いに問ひたいものである。


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