真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「義母の告白 禁断の絶頂5秒前」(1997『義母のONANIE 発情露出』の2006年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山﨑邦紀/企画:稲山悌二《エクセス・フィルム》/撮影:田中譲二・岩崎智之・桑田泰行/照明:上妻敏厚・稲垣従道/編集:⦅有⦆フィルム・クラフト/音楽:中空龍/助監督:加藤義一・松岡誠/制作:鈴木静男/スチール:岡崎一隆/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:浅倉麗・青木こずえ・田口あゆみ・山本清彦・甲斐太郎・杉本まこと)。
 テレビ番組にて、山根多可志(山本)が父・沢田逸朗(杉本)と十数年ぶりの再会を果たす。幼い頃逸郎が家族を捨て家を出て以来、多可志は長く苦労させられたものではあつたが、現在は下着デザイナーとして妻・千絵見(青木)の祖父・陣市(甲斐)の自宅―まあ、要は例によつて浜野佐知の自宅なのだが―に事務所を構へ、千絵見と有能な販売員の桑島由宇(田口)と共に、事業の経営も軌道に乗つてゐた。再会を機に逸郎は若い義母の里津子(浅倉)を伴なひ、多可志の近くに越して来る。これまでの罪滅ぼしに仕事を手伝ひたいと、転居間もないマンションでの多可志がデザインした下着の頒布会を申し出る。戸惑ひながらも好意的に受け取る多可志に対し、千絵見は何処か釈然としないものを感じる。
 悪魔のやうな父親と魔女のやうな義母とが、一度は捨てた筈の成功を遂げた息子に目をつけ接近し、全てを奪ひ尽くして行く邪悪な物語。勧善懲悪からは全く外れた徹底した外道物語ながら、無駄のない尺遣ひの中に悪のプロセスは高密度に描かれ、実に見応へがある。いふまでもなく、奸計は極彩色の桃色に彩られてゐる。浜野佐知と山﨑邦紀、旦々舎といふ制作プロダクションのスペックの高さを改めて実感させられる一作。卑劣に改心を偽る杉本まことの悪漢ぶりの見事さは予想の範囲内ともいへ、文字通りの妖しさを銀幕に刻み込む浅倉麗は思はぬ拾ひ物。スケールから少々間違へた曲がり気味のルックスは、決してストレートな美人とはいへないのだが、濡れ場に突入するや絶妙に妖しく輝く。淫靡な自慰で多可志を誘惑する件に加へ、里津子の対陣市攻略戦。薄い下着越しにモザイクレスの張形をチロチロ口唇愛撫するショットには、思はず気持ち良さが疑似体験出来てしまへるほどの威力がある。当サイトは一体、何を死力を尽くし筆を滑らせてゐるのだか。

 抑へを切らした浜野佐知の作家性が過発露し、偶さか映画が軸足を失ひかけるのは由宇の頒布会の一幕。会議室風の会場、由宇はハチャメチャなセクシー下着で僅かに肌を隠した姿で主婦達の前に立つと、“ランジェリーによる意識革命”を堂々と説いてみせるのである。まあ何が何だかよく判らないが、エロ下着を身に着けることにより、女達が性を自らの手中に収め、新しい自己を発見したりしなかつたりするさうだ。私は近代非人につき、さういつた洒落臭い思考法とは一切無縁ではあるものだが、さういふ要は勇み足が浜野佐知の浜野佐知たる所以であると思へば、微笑ましくもある。主婦連要員で、一体どういつた伝で集めて来たのか、実際に婦人センターなりカルセン辺りでこの手の色んなセミナーに参加してゐさうな面々が、それなりの数登場する。劇中都合二度開かれる頒布会に際して、会場も面子も使ひ回しなのは安普請ならではの御愛嬌。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 白衣のをばさ... 川奈まり子 ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。