真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「セックス・フレンド 濡れざかり」(1999/製作:国映株式会社/配給:国映・新東宝映画/監督:坂本礼/脚本:坂本礼・今岡信治・瀬々敬久/企画:朝倉大介/音楽:大木裕之/撮影:鏡早智/照明:泉田聖/編集:酒井正次/録音:シネキャビン/助監督:大西裕/撮影助手:小岩井貴子・宇貫谷友織/照明助手:一色嘉伸/現像:東映化学/撮影応援:西村友宏/助監督応援:田尻裕司/応援:石川二郎・榎本敏郎・星川隆宣・柳内孝一/協力:ファントムライン・堀禎一・綿引近人/出演:澤哲志・さとう樹菜子・酒井邦幸・柊美瑛・新崎貢治・飯島大介・伊藤清美・伊藤猛・坂本八重子)。
 タイトル開巻を、嬌声が追ふ、こゝまでは誠実。二人のスナップも置かれたベッド脇に、男の腕が伸び数枚目のコンドームを手探る。ゴソゴソはする気配と、首がどうかなりはしないか軽く心配な凄い勢ひで、ガクンとさとう樹菜子の頭部がベッド外に逆向きで項垂れこそすれ、カメラが一分間動きやしない。開巻の誠実が何秒続くものやら様子を眺めようかとしてゐたら、よもやまさかのゼロ秒だつた。
 漸く満足に捉へた正常位は、三十秒そこらで手短に完遂。プーの須藤大助(澤)の、そんな暑い暑いいふのなら、エアコン様がをられるのだから点火すればいゝ部屋。さとう樹菜子は同じコンビニのアルバイト先で知り合つた、グラフィック系の専学生・?林美果。事後の須藤宅に、小学校の同級生かつ少年野球チーム「松本 BIG-4」のチームメイトでもあつた、小林ツトム(新崎)が当時以来のいきなりで訪ねて来た上、ザクザク上がり込んだ挙句勝手に寝る。いやあ、この時点で大概だろ。兎も角、半日転がり込んだツトムは出て行つた、大助の帰宅後。ベッドに残された身に覚えのない携帯に大助が出ると、忘れて来たツトムが、実家まで届けて呉れないかといふ。その際はシカトするつもりであつたかに思はせ、翌日になると実家の母親(坂本八重子/もしかして坂本礼のリアル一親等?)から親爺の車を借り、大助は美果と埼玉の片田舎を目指す。
 配役残り伊藤猛は、賞味期限切れの弁当なり惣菜を、店員に分け与へる善意が嬉しくて嬉しくて仕方ないコンビニ店長。酒井邦幸と柊美瑛は、大助と美果の埼玉行、美果が野ションしてゐところ、本格的な野外露出ワンマンショーを撮影中の村井憲太郎とジュンコ。酒井邦幸が、今はラーメン屋の大将らしい。話を戻して少年野球時代、「SNAKES」に所属してゐた村井に押し出しのフォアボールを大助が与へ、「松本 BIG-4」は西武球場に行き損ねた因縁。その後村井は内野手として中日ドラゴンズに入団するものの、小金稼ぎのAV出演が発覚して馘に。ツトムは目下村井が錦糸町北口で経営するスナック―但し風前の灯―にも顔を出し、村井には実家の住所を遺しもとい残してゐた。伊藤清美がツトムの母で、飯島大介が父。甚だ束の間とはいへ、このビリングで伊藤清美に夫婦生活の濡れ場が設けられるのは予想外。その他ノンクレで動員される、少年野球部と審判は知らん。
 素のDMMでバラ売り動画を買ふ、正調国映大戦。大体半年ぶりの第三十五戦は、五年目で監督デビューを果たした坂本礼第一作。最近再起動したぽいインターフィルムさんが、現状配信では見られない第二作「18才 下着の中のうづき」(2001/脚本:井土紀州/主演:笹原りな)をex.DMMに放り込んで呉れると、第三作「豊満美女 したくて堪らない!」(2003/脚本:らもんなか=今岡信治/主演:西野美緒)もバラ売りDMMで押さへられるゆゑ、力の限り捗るのだけれど。
 木に竹を接ぎ続けるファンタジーを通して道にはぐれ気味の青年が何となく救はれる、みたいな掴み処のない物語。ただでさへ漠然とした台詞を、男主役の覚束ない口跡は無論支へきれず。一番愕然としたのが、主はバイト中につき不在の須藤家。キスするしないで美果とツトムが向かい合ふ悠久を、鏡早智のカメラも根でも生えたかの如く相変らず微動だにしない、呆れる勿れ二百秒の壮絶には度肝を抜かれた。最早、何(なん)かの限界に挑戦してゐる趣すら窺はせる。その後も単に引いてゐるだけのロングと、長く回すだけの長回しを乱打した末、マウンド上で暫し相対した大助とツトムが、二人とも子供の姿に戻る一撃必殺のマジックで遂に逆転ホームランを放つた!かに糠喜びさせておいて。村井のピッチャーフライを、大助とツトムがダイレクトお見合するへべれけなカット割りで試合終了。ついでに三遊間を無駄に広々と空けるショートの守備位置はさて措き、美果が何処を守つてゐるのかサッパリ判らないのも地味に考へもの、そこを引きで押さへないでどうするのよ。何が当然なのか判らないが、当然のやうに女の裸濃度も極めて薄く、腹が立つほど詰まらなくはないものの、ピンクの小屋でかけるにはこれは苦しからうと首を傾げざるを得ない、精々生温かい初陣ではある。


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