真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ギャル番外地2 またシメさせてもらひます」(2020/制作:ストラトス/提供:オーピー映画/監督・脚本:山本淳一/プロデューサー:黄金旭/撮影:橋本篤志/照明:大庭郭基/録音・MA:大塚学/助監督:森山茂雄・福島隆弘/編集:皿井淳介/特殊造形:土肥良成《はきだめ造型》/VFX:夜西敏成/殺陣:米山勇樹・本尾昌則/ダンス監修:AYASA/スチール:中江大助/演技事務:マイティー/衣装提供:山本絹子/撮影助手:伊東佳純/造形部:戸塚美早紀・村瀬和志/制作担当:近藤哲二・死の原惨太郎・石橋幸輝/音楽:山崎裕右《Artlark》・川口泰広/主題歌:『Ooku~大奥~』by ☆MEMI☆/ED曲:『マッドフォクシー』by ☆MEMI☆/挿入歌:『Outside world』by results in cert/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/美術協力:クマノ商会・T. Miyazaki・Y-10生活向上委員会/制作協力:レインメーカー・Trinity Works・株式会社MARCOT・赤田ペン吉・シネマコレクターズショップ映画の冒険・佐々木勝己・国沢実/出演:霜月るな・早乙女らぶ・しじみ・塚田詩織・渡辺一人・石田輝・小滝正大・太三・近藤善揮・ゆたち・マルポ《声の出演》・ワニ完才・豊岡んみ・新井舞衣・三上あや香・CHIHIRO・滝本より子)。出演者中、マルポは本篇クレジットのみ。
 「文明崩壊!弱肉強食!」。ワニ完才が黙らずに見てゐる前で霜月るなと、荒木太郎2017年第二作、といふかこのまゝ復権が図られない場合最終作「日本夜伽話 パコつてめでたし」(主演:麻里梨夏)ぶりピンク第三戦の塚田詩織が激突する、火蓋が切られてタイトル・イン。後述する前作で件の人が死んでゐたのを正直覚えてゐない、兄を睾丸を潰され殺された梅垣(ワニ)が、貞操帯的なプロップで洗脳したヴィルダー(塚田)を、兄の仇たるマッドフォクシーズ初代リーダー・ボウィ(霜月)と戦はせる。ちんたらした演者の動きを、カメラも暴れさせて誤魔化す温い立回り。余裕で圧倒しながらも、不意を突かれたボウィが三日間半径2km以上移動すると起動して死ぬ、ポイズンカプセルをヴィルダーから飲まされる一方、梅垣とヴィルダーは一旦退散。くたびれたボウィは、全然勇ましくはないイサム(石田)と出会ひ、場所を適当に移した上で筆下しする。とりあへず帰宅したイサムとボウィを、イサムの家で事実上飼はれるマリン(しじみ)とエンジェル(早乙女)が出迎へる。イサムらが暮らす町は、女は男の奴隷として生きるほかないヒャッハーな社会風土。マリンは御伽噺と一笑に付す、統治者のグランドママー以下女が男を虐げるファムシティと、実働部隊「マッドフォクシーズ」の噂話をエンジェルは救世主的に信じてゐた。ところで早乙女らぶも、後藤大輔2014年第二作「小悪魔メイド 後ろからお願ひします」以来結構久々のピンク三戦目。こゝだけの話、言葉を選ぶと後天的な目の大きさが怖い、何処だけなら。
 配役残り近藤善揮と、挿入歌を担当したピアノロックバンド「results in cert」(2019年解散)のVo./Gt.であるゆたち(現在は清家ゆきち名義で俳優活動も行つてゐる模様)は、何故か顔を緑と黒の二色に塗り、子供を助ける医薬品を届けようとかしてゐる人等。ゆたちをラリアット一発で葬る太三が、イサムが末弟の三兄弟長兄。ビジュアル的には所謂ペニパン状の、終盤二発目を防がれる描写を窺ふに実体弾を射出するのでなく、あくまで射精を殺傷力を有するほど加速してゐると思しき、チンコショットガン―劇中用語ママ―で近藤善揮を仕留める小滝正大が次兄。ズボンを下すと細長い銃身が現れるチンコショットガンに、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」のトム・サビーニよりも、タックからバントラインを抜く「ドーベルマン」のマニュを先に想起した。閑話、休題。何せ公称が五十六の小滝正大よりも、ホントは年下ではないのかと思へなくもない渡辺一人が、三人の父親。パターナリズムでマチズモを増幅させる厄介な御仁の割に、ナーバスな潔癖でもある。といふ造形が、野グソを垂れかけてゐた初登場と、地味に齟齬を来しはしまいか。兎も角仮称渡辺家に―身動きのとれぬ間―留まるに際して、ボウィはマリンの発案で男装する格好に。てな塩梅でチョーカーで変換した男声の主が、予め検索を拒むかの如きマルポ。神楽アイネは連れて来なかつたのか連れて来れなかつたのか、兎も角キャンディは人影で茶を濁しつつ、CHIHIROはのちにボウィ出奔後、マッドフォクシーズ二代目を張るアリア、滝本より子がグランドママー。三上あや香がコングで、豊岡んみがキャンディ。新井舞衣は再びファムシティを去るボウィを見送る、キャンディとは百合の花香る仲のナナ。マッドフォクシーズの制服たる赤いレインコートの、聞いて吃驚なトンデモ機能が開陳される。
 無印第一作「ギャル番外地 シメさせてもらひます」(2019)がそれなりに好評を博したのか、山本淳一ピンク映画第三作は前作に於いて舞ひ戻つたファムシティから改めて出て行つた、ボウィのその後を描いた正統続篇。滝本より子とCHIHIROの名前がポスターに載るのに、グランドママーとアリアはボウィからキャンディの落とし前つけられてね?と事前に訝しんでゐたところ、この二人は色々便利なチョーカーに残されてゐた―にしては所々でなく視点がおかしいのは気にするな―ファムシティ誕生当夜の記録にしか出て来ない。無印冒頭のイントロによれば“ 文明の半分と電脳空間が完全に破壊された”割に、ポイズンカプセルだ多機能チョーカーだ、挙句の果てにはナノマシン製で装着者の戦闘能力を強化するパワードスーツだなどと、ゴキゲンか御都合な超化学が闇雲に狂ひ咲くのは御愛嬌。忘れてた、洗脳貞操帯も。
 エンジェルに乞はれる形で、ボウィは女を男の支配から解放する、二度捨てた筈のファムシティを再々度目指す。男尊女卑と女尊男卑の二択しか見当たらない、何気にでなく歪んだ世界観に関してもこの際さて措け。結構マッドマックスばりの大風呂敷は作劇云々以前に、満足なロードムービーを構築してのけるだけのバジェットを端から望むべくもなく、展開を動かす方便に適宜持ち出される程度で、凡そも何も別に広げられはしない。へべれけな俳優部と、順調にグダる演出は相変らず。わざわざ殺陣師をしかも二人擁してゐるにも関らず、国沢実のションベン活劇に劣るとも勝らないアクションの他愛なさは逆の意味で画期的。ラストを飾り損ねる、心許なくすらないダンスも荒木太郎の盆踊りと乙丙つけ難く酷い。さうは、いへ。音楽の富を、奪取せよ。轟音で鳴らす「アーイウォンチュゲー」―多分“I want you girl”―の歪(ひづ)んだシャウトが激越エモい、挿入歌「Outside world」で無理から点火するエンジェル絡み一撃必殺のエモーション都合二撃。貞操帯プロップを外したボウィが、ヴィルダーに女を思ひださせ洗脳を解かんと、「股、シメさせてもらひます」の啖呵とともに手マン。フィンガリングを“股をシメる”と称する、超絶の言語感覚にも震へさせられる、公開題を見事に回収してみせた名シークエンス。前回のボウィ・ミーツ・キャンディ同様、キメ処はガッチガチにキメて来る、山本淳一の勘所を逃さない嗅覚は健在。一見至らないカットばかりにも思はせ、最終的には信頼して観てゐられる心地よい娯楽映画。幾らヴィルダーは洗脳状態にせよぞんざい極まりない、マリンの無体か無造作な最期は忘れれば、何やかや留保が多いな。裸映画的には梅垣がイサムを掘る、薔薇まで咲かせる濡れ場の手数は潤沢な反面、頑なささへ覚えかねない完遂率の低さには幾許以上の疑問も否めないが、この人は不脱なのかと諦めかけてゐた四番手が、最後の最後が本当に最後。ED曲が流れ始めて漸く、主にエンドクレジットのタイトルバックで自慢の爆乳を藪から棒かさして有難味もなく放り出すのには、「こゝで脱ぐのかよ!」と軽く腰が抜けた。


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