真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「おしやぶり天国 汚れた唇」(1995『人妻・OL・未亡人 新・性愛実話』の2005年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:双美零/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:菅沼隆/撮影助手:片山浩/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:三橋里絵・樹かず・風間あきら・平岡きみたけ・林由美香・杉原みさお・杉本まこと)。出演者中風間あきらが、ポスターには風間晶。
 パリの土産物屋で、飛鳥(林)はセックスの願ひが叶ふとかいふお守りを手に入れる。モテにモテ倒したパリからの帰国後、飛鳥はお守りを友人で未亡人の萌子(三橋)に貸す。無論、飛鳥がフランス男にモテまくるパリ・パートが、欠片も描かれはしないのはいふまでもなからう。独り遊びの味も覚え、こんなもの必要ないと思ひながらも、萌子はお守りを手にひとまづ帰宅。したところに、長く日本を離れ発掘作業中の考古学者の義弟・柾郎(樹)が急に帰国。オアシスで義姉さんを想ひながらオナニーしてゐたんだ、といふ柾郎に迫られるまゝに、萌子は柾郎とセックロス。事が済むと、義姉さんも僕のことを想ひながらオナニーしててね、と無茶苦茶な置手紙を残し柾郎は再び旅立つて行く。
 それぞれ悩みを抱へる女々の手を渡る、セックスの願ひを叶へて呉れるお守り。てな塩梅で女達が体験するめくるめく色事の数々を、オムニバス風に描いた一篇。正味な話各篇の殆どは濡れ場で占められてあり、右から一昨日に流れて行く一作でもある。画調も女優陣もただ単に古臭いといふだけで、林由美香の映画を観るのも案外久し振りだなあ、といふ以外に、所々数へるばかりの断片的な見所以外にこれといつた何某かがある訳でもない。
 OLの茂美(風間)が、萌子からお守りを又貸しされる。いはゆる尽くすタイプの女なのだが、その分都合のいい女として扱はれがちなことに茂美は悩んでゐた。けふも彼氏・浩二(平岡)にいいやうに扱はれる。浩二は、出すだけ出すとそゝくさとホテルを後にしようとする。「中々良かつたよ」といふ浩二の投げやりな台詞に何故だか急に激昂した茂美は、人が変つたかのやうな女王様キャラに豹変。実はMなのだかどうかは判らないが浩二を木端微塵に蹂躙、どうした次第だか二人はラブラブになる。流石に御都合にもほどがあるやうな気もしつつ、茂美が豹変する瞬間に挿み込まれる、引張られた赤い糸がプツンと千切れるイメージ・ショットがポップすぎて却つて可笑しい。
 手元に戻つたお守りを飛鳥が自慢してゐると、今度はセックスレスに悩む先輩で人妻の青田みのり(杉原)に持つて行かれてしまふ。飛鳥は激しく後悔する。何となれば、飛鳥の不倫相手といふのはほかでもない、みのりの夫・耕作(杉本)であつたからだ。みのりがお守りを手にボンヤリと夫の帰りを待つてゐるとチャイムが鳴る。耕作の帰宅かとぬか喜んだのも束の間、単なる宅急便であつた。ただ届いたのは、送つてみたレディコミの懸賞で当たつたジョイトイの数々。仕方なく、みのりは自らを慰め始める。杉原みさおは、首から上は判り易く不細工なのだが、首から下は本当に綺麗な体をしてゐる。一方その頃耕作は、相変らずか案の定、残業と偽り飛鳥と逢瀬の真最中。性具で自らを慰め強烈に夫を求めるみのりの叫びが、物理的隔たりを無視して耕作の耳に届く。耕作は飛鳥を捨て妻の下に戻り、夫婦は熱く結ばれる。みのりのシャウトが耕作の耳に届く瞬間映画は偶さか正調のエモーションを手にし、「バカーッ★」と激しくむくれる林由美香の可愛らしさは時代を超える。
 受付のユミちやん(一切登場しない)をゲットしようとした耕作の他愛もない小細工は功を奏せず、お守りは然るべき持ち主の手元へ再び戻る。

 萌子篇で一番面白いのは、遺影としてのみ登場の亡夫・タクロウ役で、クレジットには一切掠りもされない伊藤猛が飛び込んで来るサプライズ。


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