真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ナマ本番 淫乱巨乳」(1994/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:山崎邦紀/脚本:的場千世/撮影:繁田良司・小林嘉弘/照明:宮城力安・小林昌宏/音楽:薮中博章/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:佐々木乃武良・戸部美奈子/ヘアメイク:斉藤秀子/スチール:岡崎一隆/効果:時田滋/制作:鈴木静夫/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:姫ノ木杏奈・摩子・辻かりん・荒木太郎・太田始・樹かず・甲斐太郎)。脚本の的場千世も、山邦紀の変名。
 本格的なウェディング・ドレスを着込んだまなつ(姫ノ木)が、電話回線に別途噛ませた機器を介して自身の画像を相手に送る。まなつが今日は―電話の向かうの―貴方のお嫁さんになる旨を宣言したタイミングで、ドーンと威勢のいいタイトル・イン。情報家電を持ち込んだ画つきのテレクラといふと、浜野佐知1992年薔薇族込みで最終十二作「裏本番 女尻狂ひ」(主演:三田沙織)に於ける平勘主催の「世田谷TVデート」が想起されつつ、今回使用するガジェット―何れもSONY製―は大幅に小型化されたことに加へ、依然白黒ながら解像度も通信速度も格段に向上。更に、解像度を落とせば動画も送れる驚異の高性能。現代の水準で論じるならば牧歌的以前の骨董品とはいへ、当時としてはガンッガンに好事者の胸をときめかせた夢の新商品にさうゐない。恐らく、当人がときめきついでに山邦紀はその点ツボを弁へ、後述するユウコの顔見せに際しては、粗いけれどもイイ感じに扇情的な動画を、じつくりと尺も費やして見せる。
 横道から本道に復帰、まなつと関川(太田)の一戦。関川は鈴のついた、まなつのラビア―陰唇―ピアスに度肝を抜かれる。一見樹かず(現:樹カズ)の陰に隠れ忘れがちとなつてしまふのかも知れないが、実は矢張り今なほ戦線に留まる太田始の変らなさ、歳をとらなさぶりも十五分にも六分にも異常。一方、まなつの友人で画つきテレクラを運営する美香(摩子)は、如何にも人の好さげな画像を送つて来た業田か郷田か合田(甲斐)とホテルで待ち合はせることに。ところが部屋に黒服×サングラスで現れた業田の第一声は、「トーシローがプロの仕事にちよつかい出しちやいけねえな」、甲斐太郎の振り幅が素晴らしい。手篭めにされるも事後業田が寝落ちた隙に、美香は辛々脱出する。
 配役残り荒木太郎は、まなつが今度は看護婦の白衣で出撃する顧客。辻かりんは第三のテレクラ―といふか、業田の言の通り限りなくホテトルではある―嬢・ユウコ。この人は本物の刺青女で、まなつとボディピアスと刺青に関する談義に花を咲かせる。樹かずは送られて来た画像にユウコが喰ひつく色男・ヨシヤ。
 山邦紀1994年薔薇族含め最終第五作、アルバイト感覚の風俗営業を筋者に睨まれた、三人娘の運命や如何に。といつた寸法の如何にも娯楽映画的な粗筋ではあるのだが、中盤、事を済ませ―ナース服のまゝの―まなつと出歩く荒木太郎の曰く“業界には業界のユニフォーム”といふ私服を見た時点で、明らかとなる落とし処が裏切られるなり捻りを加へられることは別にない。ラビアピアス描写もピンク映画の限界におとなしく従ひ、普通にエロい以外に特段のエグみを感じさせるものでもない。寧ろすつかりビビッた美香の代りに、修道女姿で出向いたまなつのピアスに気付いた業田が「格好も変だし、変態女かお前は!?」と驚くのが、平素の雄姿を思ひ返すにつけ爆裂する「お前がいふな」感の面白さの方が先に立つ。よくいへば素直な、悪くいへば薄味な物語に対し、三番手は少々垢抜けないもののオッパイのジェット・ストリーム・アタックを撃ち抜き得る女優部三本柱は文句なく強力。とりわけ、即物的な破壊力では若干姫ノ木杏奈に劣れど、ルックス・プロポーション共々メリハリの利いた摩子が改めて超絶。摩子の絡みが序盤の対甲斐太郎一戦しかないことが、重ね重ね惜しい。とまれまなつのラビアピアスに、関川がチンコピアスで応へる締めの濡れ場は下心がグルッと一周したハート・ウォーミングに溢れ、エクセスの流儀に沿つたストレートな裸映画としては、全く磐石の仕上がりである。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 備忘録 15 いんらんな女... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。