「社宅妻暴行 白いしたゝり」(2000/製作:IIZUMI Production/提供:Xces Film/脚本・監督:北沢幸雄/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》・業沖球太/製作:北沢幸雄/撮影監督:清水正二/編集:北沢幸雄/助監督:城定秀夫/監督助手:躰中洋蔵・鈴木愛/撮影助手:岡宮裕・岡部雄二・広瀬寛巳/ヘアーメイク:松本貴恵子/スチール:本田あきら/ネガ編集:酒井正次/選曲:藤本淳/協力:堀禎一・平田亜希子/タイトル:道川昭/録音:シネキャビン/効果:東京スクリーンサービス/現像:東映化学/出演:佐々木麻由子・工藤翔子・佐倉萌・千葉誠樹・久保和明・MOMOKO・サトウキナコ・佐々木基子《友情出演》)。出演者中MOMOKOは、西田ももこの変名、サトウキナコは当然さとう樹菜子。
公園のロングにまづは企画と製作のみクレジット、無人のブランコにタイトル・イン。ex.DMMに未見の残り弾がなくなつた―待つてるぜ、エク動―機会の久し振りで触れておくと、企画部セカンドの業沖球太といふのは、栗間太澄の類の北沢幸雄の変名。窓辺に置かれた千葉誠樹と佐々木麻由子が肩を並べるスナップに、掃除機をかける佐々木麻由子を映り込ませる。今時では滅多にお目にかゝれない、丹精なカット。国崎和也(千葉)と結婚して一年の、妻・みどり(佐々木麻由子)が写真に目を留める。みどりの住まひは国崎の勤務先である、(株)ケー・アイ・シー電子青葉台社宅。抜かれる順に佐々木基子・MOMOKO・サトウキナコが花を咲かせる井戸端会議に、早野久美子(佐倉)も加はる。ここで、アダルトビデオ引退後はVシネを主戦場としてゐた西田ももこにとつて、限りなくVシネに近い愛染恭子監督第一作「愛染恭子VS小林ひとみ 発≪さかり≫情くらべ」(2001/脚本:藤原健一/主演:小林ひとみ・愛染恭子)を除くと、今回が唯一の純然たるピンク映画出演となる、カメオ的な類作がほかにもなければ。話を戻して、四人の輪には一瞥だに呉れず、決定的な爆乳を誇示しつつ単騎外出する山瀬茜(工藤)は、周囲の社宅妻達には疎んじられてゐた。駐車料の集金に来た久美子から、国崎のシンガポール栄転を初耳で聞いたみどりが恥をかいたと帰宅した国崎に憤慨する一方、買物に出るみどりに、小杉則夫(久保)が過剰に熱を帯びた視線を注ぐ。
一昨々年末、久保和明(現:LEONE/Lennyプロデューサー)の発案を受け池袋が急遽番組を差し替へ上映した、2007年新版「団地妻凌辱 白い肌をいただけ!」が結局津々浦々に回つては来なかつた、北沢幸雄2000年第二作。団地妻掲げて社宅妻を売る改題のへべれけな匙加減が、ありがちで清々しい。
文字通りの愛憎渦巻く社宅を舞台に、ビッシビシ行間をスッ飛ばすと他人にしか興味のない者共に翻弄されるヒロインが、箍のトッ外れた暴力と岡惚れをも被弾する。“スタイリッシュに一分の隙もない”と賞されたリアタイのm@stervision大哥始め、今なほ世評の高い一作ではあれ、改めて見てみたところ、いふほどか?と釈然としないのが偽らざる印象。さりげなくもこれ見よがしに、みどりを挟撃する形の感触をある意味顕示した上での、まんまと国崎と久美子がデキてゐたりする辺りは全くお見事、確かに完璧。最初の暴行後、みどりが穢された汚れを落とすシャワーに際しては、足下のプチ水面に執拗に洗ふ観音様をかなり際どく攻め込んで映り込ませる、丹精に加へて攻撃的な名ショットも披露する。反面、主人公たるみどりと、みどりに劣るとも勝らず、男主役に据ゑたつもりであつたと思しき小杉の造形が割と木端微塵。後々まじなひである旨語られはする、小杉の尾行も凝視も知らず、公園にてレジ袋は一旦ベンチに置いたみどりが、両手を前に伸ばし目は瞑り、足探りで辿り着いたブランコに乗る謎行動。に、カメラを180°近くまで回り込ませすらして一分強を費やす、全体何がしたいのか―少なくともその時点では―全く判らないシークエンスには度肝を抜かれた。イノセントでも目したのかも知れないが、端的に単なる奇行である。火に油を注いで、二度目にみどりを急襲した小杉が、いきなり「俺ずつとあんたを見てたんだよ」だ「好きなんだよ」だと、正しく木に竹を接ぐ不純な純愛を出し抜けに暴発させたところで、みどりなり小杉よりも先に、この映画自体が壊れたと腰が抜けた。地下道にて、誰にも関心を払はれないまゝ頭を抱へ座り込むフラグまで立てながら、結局小杉が鮮やかに果ててさへみせないのも画竜点睛を欠く。一見絡みは質的にも量的にも申し分ないかに思へ、妙な正常位率の高さに対しては、手数の不足を覚えるのも幾分否めない。西村昭五郎的なソリッドなロマポの残滓もとい系譜を、北沢幸雄に求めたくなる気持ちも全く酌めなくはないものの、手放しで激賞するには些かならず遠い。無論m@ster大哥も、今作が完全無欠の傑作とはいひ難い点を認識されてをられない筈がなく、“あと10分使へれば完璧な作品になつたはず”―原文は珍かな―と擁護しておいでだが、きのふけふ撮り始めた訳でもあるまいどころか、北沢幸雄(ex.飯泉大)なんて当時既に三十年選手。上映時間まで規定された量産型娯楽映画中の量産型娯楽映画たるピンク映画にあつて、尺が足りませんは流石に通らない方便だらう。
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