真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻女医と尼寺の美女 快感狂ひ」(2007/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:亀井戸粋人/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/音楽:レインボーサウンド/助監督:小川隆史/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/選曲効果:梅沢身知子/製作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/出演:酒井あずさ・山口玲子・平沢里菜子・なかみつせいじ・丘尚輝・葉月螢)。「刺青淫婦 つるむ」(2005/監督・共同脚本:松岡邦彦)以来丸二年ぶりともなる、酒井あずさのピンク復帰作。といふとそこで今作の要点は殆ど尽きてしまふともいへば、それこそ正しく実も蓋もない。
 橋爪レディスクリニック、診察室で院長の美紗子(酒井“ストライクス・バック”あずさ)と尼寺「大成山愛徳院」庵主・浄魂(葉月)が睦み合つてゐる。女医と尼僧、1+1が2になるのか、それともそれ以上なのかさうでもないのか。今はもう、よく判らないふりをする。
 一年前、美紗子は女子大生の星川まさみ(平沢)に、二度目の中絶手術を施す。歌手志望とはいふものの、パチンコ三昧の日々を送るダメンズ彼氏・村上啓介(丘)との爛れた関係を続けるまさみに対し、美紗子は自分の体を大切にするやう苦言を呈す。一方美紗子は美紗子で、擦れ違ひの続く夫・明彦(なかみつ)との夫婦仲に悩みを抱へてもゐた。数ヵ月後、街で美紗子は村上と連れ立つまさみと出会ふ。就職した村上と卒業後は結婚も考へてゐるといふまさみは、別人のやうに輝いてゐた。別れ際にまさみは美紗子に耳打ちする、水子供養して貰つたところ、人生の運気が好転したみたいなのだといふ。明彦とのこともある美紗子は、まさみに薦められた尼僧を訪ねてみることに。浄魂に見て貰つたところ、美紗子に水子の霊が憑いてはゐないとのこと。例によつて、岡輝男が調子に乗る、あるいは羽目を外し始めるのはここから。スピリチュアル・カウンセラーも兼任する浄魂は、美紗子には水子霊ではなく生霊、しかもそれは明彦の不倫相手のものが憑いてゐるといふ。美紗子は浄魂に、不倫相手を夫と別れさせることは出来ないかと乞ふ。すると浄魂は、出来ないことはないが、その為には何か不倫相手の持ち物が必要だと答へる。それ何て黒魔術?新田栄にも岡輝男にも、仏罰が下ればいい。
 そんなこんなでここでタイミングよく明彦と、不倫相手・吉沢貴子(山口)の情事。ノルマごなし、といふかこの時点で既に濡れ場ありの女優が四人登場してもゐる訳だが、ともあれ明彦と貴子との絡みに於いて特筆すべきは。確かに爆乳を誇りはしつつも、全体的にオーバー・ウェイト気味なきらひが目につきもした山口玲子が、オッパイはそのままに、無駄な肉を落として更に攻撃的なボディに進化を遂げてゐる点。貴子は自らの存在を誇示する為に、明彦がシャワーを浴びてゐる隙に、背広のポケットにハンカチを忍ばせる。ただ勿論それは、美紗子にとつては思ふ壺であつた。
 こんなそんなで、明彦の女性問題が首尾よく解決したところで、物語は美紗子の問題から浄魂の問題へとシフトする。さういふ起承転結の構成自体には、実は案外遜色はないのだが、問題はその中身。礼を述べに再び愛徳院を訪れた美紗子の前で、体調を崩してゐた浄魂が倒れる。浄魂を美紗子が診察したところ、腫瘍が発見される。ただそれは良性のもので特に心配は要らないのだが、何れにせよ、浄魂の体は女性ホルモンのバランスを失してゐた。対処はどうすればいいのかといふ浄魂に対し、美紗子は不謹慎ながらと前置きした上で、セックスを勧める。愛徳院に戻り、煩悩を振り払ふかのやうに読経に打ち込む浄魂の脳裏を過ぎる、わざわざ音声にエコーを施した、美紗子即ち酒井あずさのセックスセックスセックス・・・といふ声。よくよく考へてみるならば、新田栄と岡輝男に仏罰を下す力も謂れも、この国の仏教にはとうに残されてはゐないのかも知れない。
 兎にも角にも。ピンク的な要請には、確かに従順であることは間違ひない。とはいへ酒井あずさの銀幕復帰を祝したのかそんなつもりも特にはないのか、葉月螢と平沢里菜子、既にこの時点で十分磐石な上、攻撃的にプログレスした山口玲子まで加へて擁した布陣は実は豪華過ぎるほどに豪華ながら、四女優の濡れ場を拝めるといふ以外には、その豪華さが作品としての出来上がりには殆ど全く繋がらない、腰もフニャフニャに砕ける一本。仕方がないので今後に目を向けると、今作に続く酒井あずさのピンク次回作は再び少し間が空いて、「刺青淫婦」と同じく松岡邦彦の、2008年三月最新作「中川准教授の淫びな日々」(脚本:今西守/主演:平沢里菜子)。結果的に、今作に於ける酒井あずさは頼もしい健在ぶりを感じさせるとはいふものの、以降にコンスタントな活躍が続く訳でもない以上、その点だけ捕まへてぬか喜びする訳にも行かない始末。

 ところで愛徳院といふのはどうやら、新田栄が尼寺映画を撮る際のデフォルトらしい。


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