真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「変態下宿屋 熟女ざかり」(1995『本番下宿屋 熟女をいただけ!』の2012年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:小山田勝治・中川克也・小島裕二/照明:秋山和夫・渡部和成/音楽:藪中博章/編集:《有》フィルム・クラフト/助監督:高田宝重・小谷内郁代/制作:鈴木静夫/効果:時田滋/スチール:岡崎一隆/出演:小野寺亜弓・西嶋綾香・小川真実・杉本まこと・甲斐太郎・荒木太郎)。
 開巻即、小野寺亜弓が甲斐太郎に手篭めにされる。後述するが実に、逆(さか)向きに判り易いオープニング・シークエンスではある。鏡富美子(小野寺)の夫・真吾(遺影の主不明)は経営する会社の金を使ひ込んだ上で迷惑極まりなく死去、会社を引き継いだ小窪康雄(甲斐)はその債務をダシに、富美子を日常的に陵辱してゐた。事後一人、出し抜けに概ね直線のみでデザインされた張形を取り出した富美子は、真吾が遺したものは持ち家と借金とその淫具だけであると、正直傍目には頓珍漢に黄昏る。そんな富美子の唯一の収入は、一人住まひにしては大き過ぎる鏡邸(当然浜野佐知自宅)の部屋を間貸ししての家賃のみ。下宿人は目下二人、作詞家の吉岡隆(杉本)と、実は美しい管理人に不器用な恋心を抱く会社員の元岡昭一(荒木)。大きなお世話だが、下宿人が二人では金を返すどころか、富美子が食ふので精々でもないのか。そんな一刻館もとい一旦館―凄え仮称―に激震が走る、真吾の愛人であつた君塚匠(小川)が、堂々と富美子を訪ね乗り込んで来たのだ。挙句に、ディルドー(張形と同義、要は加へてモーター類を内蔵するとバイブ)のデザイナーであるといふ匠は、日本人男性のデータを蒐集する目的云々と称して“サイズ・形、膨張時の変化”、間借り人の一物のサイズを測らせろだなどといふ仰天要求を、小川真実一流の飄々とした風情で平然と富美子に叩きつける。
 配役残り、一度で別に十分な気もするがオーラスにわざわざ再登場する西嶋綾香は、セックスする為にその都度一旦館を訪れる、吉岡の彼女・笠井淳子。実にコンビニエンスな絡み要員であるし、正当なビリングは、小川真実をトメに置かない以上三番手ではあるまいかとも思はれる。
 浜野佐知1995年一本薔薇族含んで全十三作中第四作は、流石にそれだけ撃ちまくつてゐれば、一本か二本はこんなものもあるといふ疑問手。初登場時挨拶代りに強靭な馬力を発揮し元岡を喰つた―その頃吉岡は淳子とギシアン―小川真実こと匠は、二度目の一旦館来訪で逡巡する富美子にいつてのける、「女は男のペニスにだけ頼つちや駄目だと思ふの」。来た来た来た!それでこそ浜野佐知だ。猛然と物語が唸りを上げ起動し始める、予感に奮へさせられる。旦那の愛人であつたことなど何時しか何処吹く風、富美子がおとなしく匠に感化される一方で、匠を一通り満喫しておきながら、管理人さんになら測られてもいいと称するいはゆるリア充の吉岡の何気ない一言に、元岡はウジウジと心を騒がされる。改めて整理すると、小川真実がブン回す如何にも浜野佐知的な視座、荒木太郎がナイーブに募らせる純情、そして亡夫の使ひ込みを形に未亡人に関係を強要する甲斐太郎、といふアイコン的な敵役。ネタだけならば万全に揃ふものの、匠の、姿見に固定したディルドーを用ゐた“男のペニスに頼らない”快楽に妙に尺を費やしてみたりする内に、結局は物語的な結実が図られることは決してないままに、併走する富美子×元岡と吉岡×淳子、二つの濡れ場だけが猛然とした勢ひでひたすらに流れて行く。裸映画としては強力に充実してゐる反面、予感は確かに感じさせた劇映画に期待してしまふと、未練を残す一作でもある。多分、もしも私が日本語を解さなかつたならば、素直に女の裸に垂涎なり驚喜して愉しめたやうな気がする。


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