真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「同性愛熟女 未亡人達の濃い味」(2004『三人の未亡人 恥知らずレズ』の2011年旧作改題版/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二《Xces Film》/撮影:千葉幸男/照明:小川満/編集:酒井正次/スチール:佐藤初太郎/音楽:レインボーサウンド/助監督:小川隆史/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/音響効果:梅沢身知子/録音:シネキャビン/製作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/現像:東映ラボ・テック/出演:河村みき・風間今日子・綱島渉・丘尚輝・新井隆史・林由美香)。出演者中、新井隆史は本篇クレジットのみ。まあ小川隆史の変名だらう、何で新井なのかは知らんけど。
 “真知子(28歳)社長未亡人”、富永真知子(河村)の下には、亡夫(遺影すら登場せず、死因も不明)が遺した会社の総務部員・三浦(新井)が、見合写真を持参し毎日のやうに訪れる。真知子に下手な男と再婚され、相続した株が渡つてしまつては一大事だといふのだ。とはいへ、出会ひ系を介して捕まへた若いツバメ・久保田大(網島)との、あくまで遊びと割り切つたセックスを楽しむ真知子は、さういふ気儘な現況に満足し、次の結婚など全く考へてはゐなかつた。ところで少し横道に逸れるが、事件、あるいはお縄に関してはこの期にさて措くとして、綱島渉は頂哲夫と、まるで血縁関係にでもあるかのやうによく似てゐる。閑話休題、けふも三浦から渡された、本当にパッとしない男の写真―ホントに誰だこれ―に閉口も通り越し半ば腹を立てた真知子は、通ふ着付教室の教師である辻本里枝(風間)に相談する。里枝は一計を案じる、興信所に真知子の素行調査(殆ど映らないが、調査員は多分新田栄)を依頼した上で、これ見よがしに真知子が里枝とラブホテルに入る。即ち真知子の同性愛を偽装し、こゝの段取りは正直飛躍も大きいが、その調査結果が三浦らの知るところとなれば、始末に終へぬ縁談狂想曲も治まるに違ひないといふのである。とまれ当日、嘘から出た誠といふか瓢箪から駒とでもいふべきか、その場の雰囲気と勢ひとから、真知子と里枝は実際に交はる。
 “里枝(35歳)未亡人着付教師”、里枝は自身の不幸な半生を顧みる。思春期に自覚したホモ・セクシュアルは押し殺したまゝ、義父からの性的虐待、高校時代のレイプ被害―まではモノローグで語られるのみ―に続き、こちらも死んだ理由は通り過ぎる暴力夫・京二(丘)にも苦しめられた。おまけに現在、婦人科検診を受けたところ担当医の鈴木冴子(林)からは、如何にも深刻な風情で再検査を通知される。今篇特筆すべき見所は、回想カットに使用される、風間今日子の中高生時代本物のスナップ写真、何気に貴重な映像ではある。
 “冴子(33歳)未亡人女医”、冴子は五年前に雪山で命を落とした夫の医院を継いだものの、そのために大学病院での研究職を辞したことに対する、後悔の念も未だ拭ひきれずにゐた。残る心を出会ひ系で捕まへたイケメン―と、いふ体にしておいて呉れ―の彼氏・久保田大(あれ?)との情事で紛らはせる冴子ではあつたが、ある日久保田が他の女―さう、真知子である―と間違ひなく二股の風情で連れ立つて歩く姿を目撃し、衝撃を受ける。
 よせばいゝのにわざわざ各章タイトルまで設け章立てされる明確な三部構成は、不用意に時制が前後する回りくどさが顕著なばかりで、実質的な意味は凡そどころか積極的に感じられない。万事にパッとしない清々しくエクセスライクな主演女優を、一人づつではなく林由美香と風間今日子が揃つて補佐する構図はある意味実に判り易く且つ頑丈で、終始覚束ない一作が初めて力を漲らせるのは結果的には順当に、里枝を要に結びついた三人の未亡人が、一堂に会するクライマックス。迸る劇中世間の狭さに関しては、云々するだけ野暮といふものだ。公園にて三浦が目を落とす、真知子と里枝が逢引する証拠写真を久保田まで盗み見るのは、流石にやり過ぎかとも思へたが。その際の、スポーツ新聞を立ち読みする久保田の造形も考へもの、張り込み中の刑事のクリシェか。兎に角、里枝に綺麗に篭絡された真知子が冴子も誘(いざな)ひ、皆で咲かせる大輪の百合の花。翌年のコンセプチュアルな大技卍レズをも凌駕する超絶のトリプル貝合はせは、複雑な関節技感覚で最早何がどうなつてゐるのかよく判らない、煽情性の領域を超越した怒涛のスペクタクルを展開する。


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