真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「和服卍レズ 熟女の絡み合ひ」(2005/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/助監督:加藤義一/音楽:レインボーサウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/選曲効果:梅沢身知子/製作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/出演:鏡麗子・池田こずえ・丘尚輝・なかみつせいじ)。レインボーの名前がありながら、重ねて梅沢身知子がクレジットされてゐることの意味がよく判らない。こんなことは今までなかつた、と思ふ。
 五十嵐家に住み込みの家政婦として仕へる栗原泉(池田)はレズビアンで、婦人の容子(鏡)に対し熱烈な恋心を抱いてゐた。
 泉が容子に滾らせる強力な下心が、容子の夫・正彦(なかみつ)の会社の部下である寺嶋武(丘)との密通も絡めながら描かれる。観終つてから気付いたことではあるが、今作、女優も男優も二人づつしか―通例は三人―出て来ない、随分と省設計である。かといつて、浮かせた金が他の何処かに注ぎ込まれてゐる、といふ風にも別に見えない、まさか着物のレンタル料か?そもそもがエクセスなので、最早三百万で映画を撮つてゐない可能性すらあるのだが。
 確か少なくとも一本か二本は出演作を観てゐる筈なのに、全く印象に残つてゐない池田こずえ。何処に魅力があつたのだか、個人的には全く理解出来ない割にはピンクスの間では妙に人気の高かつた、西藤尚を縦に伸ばし表情をキリッとさせ、体型にメリハリをつけたやうな女である。それは逆からいふと要は西藤尚が尺は足らず、表情にも体型にも締りが無い、といふことにもなるのか。加へて、映画を観ただけでさういつた辺りを正確に判定するスキルの持ち合はせはないが、この人、恐らくは着物の着付けも出来るのでは。それでは申し分ないではないか、もう少し出演本数を増やして、一本でも作品に恵まれたならば、一息にブレイクしてみせてもおかしくないやうな気もする。
 この映画の有るか無きかの―正確にいふと無い―ハイライトは、容子と寺嶋との浮気が正彦に発覚しさうになる件。泉は、容子を庇ふ為に寺嶋と関係があるのは自分である、と嘘告白をする、実際に一度持つてはゐるのだが。さうしたところが正彦いはく、お前達が付き合つてゐるといふのならば、今直ぐこの場でセックスしてみせよ。どうした、出来ないのか?愛し合つてゐるのなら出来る筈だ。出来ねえよ!!!!あんた、脳が腐つてるだろ   >岡輝男
 こんな蕩けた脚本相手に、わざわざ役作りまでした上で誠実に芝居をしてゐるなかみつせいじが段々と気の毒にすら思へて来る。岡脚本、略してオカポンの呆けぶりは更に加速し、容子と正彦の見守る中、寺嶋とセックスした泉は失神する。正彦は部下に対してお前も中々やるなと賞賛し、受けて寺嶋はいやあ、と頭の後ろに手をやり恐縮至極。クリエイティビリティーもここまで欠如すると、一種全く別次元の作為の存在さへ感じられて、しまふ訳がない。泉は五十嵐家を去る。
 結局、例によつて正彦の会社は倒産し、離婚した容子は泉と着物の着付け教室を始めることになる。何だか何処かで似たやうな映画を観た既視感を覚えるのは、決して気の所為ではない。嗚呼さういへば、しかも僅か四作前のあの時も社長はなかみつせいじであつた(『和服のノーパン熟女 裾から匂ふ毛』/2005)。げに恐るべきは新田栄&岡尚輝なのか、それともなかみつせいじのある意味引きの強さなのか。

 詰まるところは、例によつて物語的にはへべれけな一作ではありつつ。ラストの絡み、互ひの観音様を擦りつけ合ひよがり狂ふ容子と泉の二対計四本の脚が、綺麗に卍を描いて絡み合ふショット―こんな感じ―が押さへられてあり、それを見た際は素直にコンセプチュアルだと、呆れ果てながら観てゐた最後の最後で感心させられてしまつた。我ながら、映画の観方がマックスコーヒーよりも甘い。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 変態オヤジ ... 痴女女医さん... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。