下ネタトリオ マドンナを狙へ

　「下ネタトリオ　マドンナを狙へ」（2023/制作：Blue Forest Film/提供：オーピー映画/監督：竹洞哲也/脚本：小松公典/撮影監督：坂元啓二・創優和/録音：山口勉・池田智久/編集：三田たけし/音楽：與語一平/整音：吉方淳二/助監督：江尻大・菊嶌稔章・谷口恒平/撮影助手：戸羽正憲・田原イサオ・赤羽一真/スチール：富山龍太郎/仕上げ：東映ラボ・テック/出演：友田彩也香・辰巳ゆい・あけみみう・栄川乃亜・倖田李梨・安藤ヒロキオ・那波隆史・なかみつせいじ・森羅万象・巌屋拳児・加藤ツバキ）。出演者中、今回現場に参加してゐない那波隆史は本篇クレジットのみ。
　タイトル開巻、マンション外景から一室に寄る。友田彩也香と安藤ヒロキオ（二人ともゼムセルフでいゝや、もう）が致すのは、旗艦館・上野オークラ劇場二階、特戦ならぬ上野特選劇場。この人等仕事してゐないのかといふ勢ひで、連日小屋に入り浸るピンクス三人組（なかみつせいじと森羅万象に巌屋拳児）が今日も今日とてうつゝを抜かす、劇中ピンクの一幕。この御三方、“どうせこゝでしか会はない”と毎日のやうに顔を合はせてゐる割に、互ひに名乗らうともしない素敵な距離感の間柄。たゞし、森万は岩さんらしい。モギリの島田麻美（加藤）が、裸映画以外に三人にとつてのマドンナだつた。
　配役残り、三羽烏が並んで小用を足す手洗。最後に入つて来て、最初に済ませる早撃ちはEJD。尤も、還暦前後トリオに対する若さの象徴として連れて来るのなら、そこは井尻鯛より菊りんの出番では。といふか、何故かういふ時に限つて、スタッフに山宗もカニ・クルーズもゐない。何れにせよ、赤羽一真もゐるんだけどな。閑話休題、辰巳ゆいも銀幕の中にしか登場しないハーセルフ。辰巳ゆい初戦を介錯する矢張りヒムセルフの那波隆史は、竹洞哲也2016年第五作「弱腰OL　控へめな腰使ひ」（脚本：当方ボーカル＝小松公典/撮影監督：創優和）からの実はバンク出演。遅刻気味の麻美と鼻差で出勤する、パッと見大谷翔平似の同僚は不明。一抓みのエクスキューズもなく、今度は新撮劇中ピンクで、辰巳ゆい第二戦を介錯するのは岩谷健司。こゝで既に結構な無頓着に度胆を抜かれるか、唖然とするのは些か早い。あけみみうは岩さんの御近所で、栄川乃亜がそのお友達。天衣無縫か大胆不敵に岩さんが膨らませる妄想の中、大輪の百合を咲き誇らせる。倖田李梨はイワヤケンジのイマジン、略してイワジンに登場する元カノ、ですらなかつた女、略す必要とか別にないよね。岩谷健司に劣るとも勝らず、大概なぞんざいさで平然とスクリーンに飛び込んで来る加藤ツバキの、介錯役がどうしても判らない。ホントに誰だこれ、とりあへず若い、となるとこゝで髪を切つた赤羽一真？一同の帰りがけ、麻美退勤後のテケツを守る男モギリが、もう一人遠目に見切れる。決然と開き直る恨み節を吐かせて貰ふと、今作を当サイトが観たKMZこと小倉名画座。ランタイム一時間前後、友田彩也香がシャワーを浴びる文字通りの濡れ場に至つてはガチのマジで画面が真白になるほど、坂上二郎ライクに白トビし倒す映写が滅茶苦茶あるいは出鱈目。端から明示的に抜いてゐない面相なんて、何奴此奴の識別云々以前にそもそも見えない、木戸銭返しやがれ。
　竹洞哲也の近作は全作＋フェスに参戦してゐるものかと、勝手に思ひ―込み―きや。2021年第二作「恋愛相談　おクチにできないお年頃」（脚本：小松公典/主演：あけみみう）ぶりで、フェス不参加の2023年第二作。円盤で尺から違ふ、R15編集してゐたりする辺りが事態を錯綜させる、無駄に。寧ろ、些末もとい煩瑣なバージョン違ひが徒に存在するのも、直截な話創作なり制作の実体よりも商売の方便を優先した、ある種量産型娯楽映画らしさと強弁してしまへば出来なくもないのか。
　三人のオッサンが、全く以て当人の与り知らないところで、岡惚れの争奪戦をあゝだかうだ繰り広げる。逆の意味で力強く盛り上がりに欠き、他愛なくさへない本筋と、延々性懲りもなくダベり続ける―大して面白くもない―与太話の合間合間を、女の裸でひとまづ埋める。竹洞哲也と小松公典、最早どちらか一方がといつた問題でなく、二人共倒れに枯れ果てて来てゐるのではなからうか。改めてつくづくそんな気持ちにさせられる、十八番のつもりの会話劇（笑）は、何となく尺が満ちるのを待つのが精々関の山。一見質量とも潤沢な女の裸も、一番エモーショナルな濡れ場は、「弱腰OL」の要は使ひ回しであつたりする何気に随分な体たらく。手放しに全員脱いで絡む、加へて穴の開かない女優部を六枚擁する。優に二本分をも思はせる豪勢な布陣を構へながら、大人しく話は進まない。三四五番手を堂々と絵空事で事済ませておいて、トメの加藤ツバキを甚だしい不自然ないし違和感も厭はず、ハーセルフ組と同様劇中作の形で、スクリーンの中に放り込む理由が到底皆目全ッ然理解不能。岩谷健司の俳優部出撃といひ、常日頃ピンクに触れてゐる連中は、何となく酌んで呉れるにさうゐない。とでも胡坐を掻かんばかりの、怠惰極まりない横着さが忌々しい。ホワイエに次週と次々週の番組として掲示された、2000年第二作「未亡人女将　握つて食べて」（脚本：三河琇介/助監督：竹洞哲也・城定秀夫/主演：吉行由実）と、2007年第四作「人妻の衝動　不倫のあとさき」（脚本：関根和美・水上晃太/主演：倖田李梨）のポスターを導入に。小林悟と関根和美に各々リスペクトを捧げる件も、表層的ですらなくピクリとも響かない。何がツボかいゝエロか、泉下の大御大と関根和美も、泣きはしまいが欠伸をしてをられるぞ。ほとんど唯一映画が跳ねるのは、女同士で情を交した、一夜明け。あけみみうが勿体ぶらない決定力で栄川乃亜にサラッと投げる、「色んな顔になるね」の瑞々しいカットくらゐ。小屋が舞台で、主人公はピンクス。当人達には崩したくないスタイル―もしくはスマート―の類でもあるのかも知れないが、叫ぶほど苛烈なものでないにしてもピンク愛を囁くのであれば、もう少し形振り構はず、突つ込んで来るところは突つ込んで来て呉れぬでは何もかんも弾まない。今際の間際といひたくはないが、いよいよ感いやますこの期に及んで、カッコつけてゐる場合でもないだらう。“絶対夢はあきらめないで！！”、かつて観客を感涙の海に溺れさせた、我武者羅さは何処ダムの底に沈めて来たのよ。