真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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2007年九月で消滅した旧本館より継続して使用中の掲示板です
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駄楽ひまなときブログ
行きつけのお店のブログ、下戸なのに。しかも閉めたんだけどね
ツイッタ
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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あつぱれヒールズ びつくびく除霊棒
さ行
/
2024年02月14日
「
あつぱれヒールズ びつくびく除霊棒
」(2022/制作:Grand Master Company/提供:オーピー映画/監督・脚本・編集:塩出太志/撮影:岩川雪依/照明・Bカメ:塩出太志/録音:横田彰文/助監督:田村専一・宮原周平/小道具:佐藤美百季/特殊メイク:懸樋杏奈/特殊メイク助手:田原美由紀/魔女衣装制作:コヤマシノブ/整音:臼井勝/音楽:宮原周平/タイトルデザイン:酒井崇/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:露木栄司・木島康博・高嶋義明・青木康至・Seisho Cinema Club・愛しあってる会《仮》/出演:きみと歩実・西山真来・手塚けだま・並木塔子・七々原瑚子・橘さり・星野ゆうき・渡辺好博・今谷フトシ・竹内ゆきの・松本高士・窪田翔・漆崎敬介・細川佳央・加藤絵莉・折笠慎也・新井秀幸・田丸大輔・矢島康美・馬場泰光・鳥居みゆき)。出演者中細川佳央と、新井秀幸から馬場泰光までは本篇クレジットのみ。
第一作「
ぞつこんヒールズ ぬらりと解決!
」(2021)、第二作「
まん開ヒールズ 女の魔剣と熟女のアソコ
」(同)を振り返るハイライトを、enough且つten minutesの十分見せた上で、占へない占師の松ノ木あゆみ(きみと)と眠らせられない催眠術師の東山マキ(西山)に、霊の見えない霊媒師・手塚茂子(手塚)。三矢の訓よろしく、ダメ人間が三人集まつたパラノーマル系便利屋ユニット、「ヒールズ」の日常的な暴飲暴食会。あゆみの両親が事故死してゐる布石を、サラッと投げタイトル・イン。アバンには今回一切出て来ない―クレジットもなされない―俳優部も、臆することなくワシワシ登場する。折角なので名前だけ拾つておくと、香取剛と西田カリナに松岡美空、津田菜都美、成宮いろはと小滝正大。凝縮した情報戦に、女の乳尻に割く余裕は残されなかつたか。
明けて飛び込んで来るのは、詰まるところ疲れもとい憑かれ易い体質のトシヒロ(折笠)と、この時点では本当に全く正真正銘何処の何方!?な木村(七々原)の、トシヒロがアグレッシブに責める絡み。ところでこの二人、どうやら今作がラストアクトみたい。は兎も角事の最中、トシヒロは三人にトンデモ道具を提供するマッさん(今谷)と、元々マキの元カレであつたのが、今はプラズマ体宇宙人・シースー(橘)の器に甘んじてゐる鈴木(星野)も交へたヒールズを、リポーターの谷口美希(加藤)が紹介するテレビ番組に目を留める。仕事の舞ひ込んだ茂子が、何時もの調子でマキに助太刀を仰ぐ一方、放送を見て生き別れの両親を名乗り出た、田丸大輔と矢島康美の訪問を受けあゆみはそれどころでないキャンセル。仕方なくマキ一人連れて行く茂子に、助けを求める山田ゆうこ(並木)は意識のない裡に見ず知らずの男と、所謂ワンナイトラブを営んでしまふ怪現象に悩まされてゐた。SNSも畳み、完全にフェードアウトしたかに映つた並木塔子に関しては、伝聞形式ながら、塩出太志の口から戦線復帰が報告された往く人来る人、一旦往つて、帰つて来る人。なほ、帰つて来させて貰へない、荒木太郎、と池島ゆたか。
閑話、休題。配役残り、妖艶なお胸の谷間をエモーショナルに刻み込む竹内ゆきのは、TV収録先の倉庫的なロケーションに顔を出す死神。地味か確実に迫つた危機を、それとなく忠告して呉れる。漆崎敬介はシースーこと、本名ピロロを訪ねる同族の宇宙人。ピロロは失念してゐる、地球に来訪した目的は人類滅亡。並木塔子の相手を一応務める細川佳央は、後述する窪田翔に憑かれるゆうくん。姿を消した、美希の彼氏でもある。一応とか言葉を濁したのはその一戦、二人とも憑かれてゐるギミックを優先、色気を放棄した代物。そしてトメを飾る鳥居みゆきが、ゆうこに憑いてゐた魔女。実体を持たぬゆゑ、鳥居みゆきの容姿は二十二年前に憑いてゐた、事故死した女のものである方便。に、しては。渡辺好博は今や茂子に結構自由自在に召喚され、シースーに続く事実上ヒールズ第五のメンバーたる武士の霊・ヨシ。成仏した結果、土手腹にブッ刺さつた妖刀「黄泉息丸」は失ひ丸腰で現れる。こゝまでが、前半部。あゆみ・マキ・茂子の三人と、マキから感染(うつ)された鈴木が急激に老いる後半。マッさん所蔵の謎―あるいはエクス・マキナな―書典に従ひ、元に戻るため四人ヒールズは吸血鬼の血を探す。松本高士が、特殊生命エネルギーも検知するやう改良された、幽霊測定器「ユーレイダー」でサクッと見つかる吸血鬼。何だかんだ吸血鬼も斥けたのち、木に締めの濡れ場を接ぐ新井秀幸は、あゆみと知らん間にデキてゐた元クライアントの上野。窪田翔が、前述したゆうくんに憑く悪魔。色塗りに頼る宇宙人と悪魔の造形は、正直ほとんどリデコ感覚。万事解決後のエピローグ、てつきり一幕・アンド・アウェイかに思はせた、七々原瑚子が見事に意表を突く再登板。馬場泰光は木村の依頼を受けたヒールズが捕捉する、近隣の冷蔵庫を荒らして回る食ひしん坊な霊。クレジットに於いては、“食べ過ぎた男”とされる。
第五作がフェス先で公開された、塩出太志第四作。その最新作が全く別のお話である点を見るに、三本目でひとまづヒールズ完結篇となる模様。
トシヒロがまた憑かれ鈴木は憑かれぱなし、美希も以前に憑かれてゐて。ゆうこも憑かれゆうくんに至つては、要はカップルで憑かれ。思ひだしたぞ、上野も親子で憑かれてゐた。実に憑依現象のカジュアルな世界観だな!とこの期に及んでプリミティブにツッコむのは、所謂いはぬが花と等閑視するとして。正しく矢継ぎ早に現れる敵々を、バッタバタといふかバタバタやつゝけて行く。如何にも今時の血統主義含めバトル漫画的な物語が、終始キレを維持する小ネタにも支へられ、有無をいふのを封じる高速展開の力業で加速。かなりか大概 一本調子ではあれ、勢ひに任せ一息に見させる。いふほど持て囃すに足る傑作名作の類では決してないにせよ、三作中一番面白いのは面白い、とりあへず。
尤も、実体を持たない存在の―それこそフィジカルの―血とは何ぞや、とかいふ割と根本的な疑問はさて措くにせよ、女の裸は正直お留守。激しくお留守、甚だしくお留守。ある意味綺麗に二兎を追ひ損ね、小気味よく弾ける劇映画が最後まで走り抜く反面、裸映画的には全く以て物足りない。より直截にいふと、逆に一番物足りない。第一作で豪快に火を噴いた、きみと歩実が寸暇を惜しみそこかしこで兎に角脱ぎ散らかす、無理からな眼福はアバン同様、といふかアバンに圧迫される尺的な限界に屈したか二作続いて封印。限りなく一般―映画―畑の二番手には端から多くを望めず、三番手の機能不全は既に触れた。寧ろ七々原瑚子が四番手の位置から最も気を吐く、ビリング下位がピンクのアイデンティティを担保する構図は変らず、挙句頭数手数とも減つてゐる。愉快痛快にまあまあかそれなりには楽しませつつ、「あれ?俺は何処の小屋に何を観に来たのかな」と一歩でも立ち止まると、大いなる疑問も禁じ難い一作。R15版タイトルでフォーエバーを謳つてゐる以上難しさうな気もするが、西山真来の名台詞をアレンジした、「ヒールズ再起動やで!」が聞ける日は果たして来るのや否や。
もう一箇所、大きめのツッコミ処?「強くなつたな、あゆみ」には、「アンドロメダ終着駅かよ!」と素直に釣られるべきなのか、それとも。単なる偶然の一致に脊髄で折り返した、オッサンの早とちりに過ぎんのかいな。
備忘録< あゆみは魔女と吸血鬼の間に生まれた娘
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