真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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自己紹介
福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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菊池エリ 巨乳責め
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2018年08月15日
「
菊池エリ 巨乳責め
」(昭和63/製作:ローリング21/配給:株式会社にっかつ/監督:広木隆一/脚本:石川欣/企画:作田貴志/プロデューサー:北条康・鶴英次/撮影:遠藤政史・富田伸二・渡辺雄志/照明:隅田浩行・古屋熱・田島昌也/編集:沢田まこと/助監督:大工原正樹・常本琢招・金田敬・増田進/音楽:川崎隆男/スチール:田中欣一/メイク:木村たつ子/車輌:土井健/技術:日本VTR/MA:アバコスタジオ/現像:IMAGICA/協力:中野D児・シネマジック・フィルムキッズ/出演:菊池エリ・瞳さやか・高橋めぐみ・碓田健治・恵比寿太一郎・古都秀一・石部金吉)。凄い面子の演出部、増田進は知らんけど。配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
監督が強要する剃毛に頑として首を縦に振らない―その所以は古都秀一で明らかとなる―AV嬢・エリ(大体ハーセルフ)に、助監督のジュンイチ(碓田)が折れる。折れたジュンイチは、その旨を監督兼制作会社社長の吉村(石部金吉/a.k.a.清水大敬)に伝へる。といふ開巻、ジュンイチが別室を出てカメラマンの本木(直招=常本琢招)やスカウトもこなす男優の山下(恵比寿太一郎/a.k.a.日比野達郎)らが待機するスタジオを通過、吹き抜けの二階に上がる。今も全く変らない、如何にも清大らしい狂騒さで吉村がジュンイチに怒鳴り散らしながらスタジオに下りて来ると、何時の間にかエリと山下は絡み―の撮影―をオッ始めてゐたりなんかする。のに介入した吉村がエリに軽く縄をかけた上で、山下を押し退け尺八を吹かせるまでを、何とど頭から三分強の長回し。画質は映画感の欠片もない壮絶なキネコであるにせよ、ここはカメラが文字通り縦横無尽にグイングイン動く。寧ろそのまゝ駆け抜ければよかつたものをと大いに思へなくもない、後背位を蛇足気味に挿入してタイトル・イン、清大の役得しかない。兎も角撮影後、ジュンイチは吉村から監督デビューを言明され、エリとの恋人同士のプライベート・ビデオといふ企画を頂戴する。息を吐くやうに指を鳴らし、「ベターね」と「ポン!」の決め台詞だか口癖を連呼する吉村の造形が、清々しいくらゐに煩はしくて笑けて来る。
配役残り瞳さやかはジュンイチと同棲する、四年制か短大か専学かは判らんけれど、何某かの学生・ノリコ。壊滅的な大きさのモザイクに阻まれ真偽のほどを推し量る術もないが、事後はフローバックが描写される。高橋めぐみは、山下が連れて来た新人AV嬢・クミコ、自称十九歳。最初の顔合はせ時、山下にクミコの本番OKと年齢を確認した吉村は、脊髄で折り返した処女作の概要を清大持ち前の張りのある低音で「ようしアナルで行かう」。ええええ!となる日比やんのリアクションが爆発的に面白い。クミコの撮影現場、レフ板を持つてゐるのが堀禎一(撮影当時十八歳)に見えたのは、幾ら何でも時空が歪んでゐる、まだ高校生だ。そして古都秀一は、エリのリアル彼氏もしくは配偶者・シューイチ、職業トラック運転手。忘れてた、ススキ野でエリのスチールを撮影するカメラマンが、田中先生ヒムセルフ。
要はアダルトビデオに敗北したロマポの断末魔、終焉間際に劣悪な色彩の徒花を狂ひ咲かせた、ビデオ撮り過激路線のロマンX。買取系ロマンXといふとなほさら際物感も加速する、広木隆一(a.k.a.廣木隆一)昭和63年第一作。ところで、あるいはついでに。ロマンXよりは近いがそれでもその昔、今は亡き新東宝―
死んでねえよ
―による
PINK‐X
なる企画もあつてだな・・・・とか明後日もとい一昨日に筆を滑らせてゐて、恐ろしい予感に辿り着いた。今年は撮了二週間を待たず飛び込んで来る驚愕の超電撃作戦を城定秀夫が敢行する、良きにつけ悪しきにつけ話題のOPP+。“プラス”が四十五度傾いて“OPPX”になつた時、終に大蔵といふ最後の牙城も陥落しピンクが終るのか!?ロマンXとPINK‐Xを十七年周期とすると、次にして最後のサード・インパクトが起こるのは、来年である。
縁起でもない与太はさて措き、男主役たる碓田健治(a.k.a.臼田健治)が如何にもAV畑から連れて来ました的な80年代ヘナチョコで、グジャグジャした遣り取りに終始する助監督立身出世物語なり、恋人関係を偽装するエリとジュンイチに、嘘から実が出て本当の恋愛感情は芽生えるのか。といつた一応それらしくなくもない展開に、一見この期に及んでの見所は見当たらない。寧ろ清水大敬が持ち前の突破力で散発的にシークエンスを貫く“ヌク”のが、余程風通しよく感じられる。正しく、役者が違ふ。裸映画的にはアバンで一旦チョイ見せした菊池エリを、女優部をビリング順に消化する前半は暫し温存。一転後半ジュンイチの部屋に入つて以降は、何はともあれなオッパイの威力で、これでもかこれでもかといはんばかりに畳みかけた挙句、木にシネマジックを接ぐ―結構―ハードSMをも大披露。公開題を偽らないのと同時に、何はなくとも観客の一番見たいものを見せきる至誠は果たす。エリが二言目には振り回す“神秘的”とやらの内実は結局ピンと来はしないものの、徐々に混濁する劇中虚実のレイヤーが、曖昧なまゝなれど確かに結実するラストは、それなりに鮮烈。振り返れば冒頭の長回しの時点で既に、フレームの天井には見るから不自然にガンマイクが見切れてゐる。キネコの所詮負け戦に胡坐をかくでも匙を投げるでもなく、ならばと端から全てが同一化した、セックスならぬユニフィクションな世界を狙ひ澄まして来た意欲的な一作。石川江梨子名義の菊池エリ銀幕デビュー作「
団地妻 W ONANIE
」(昭和60/構成・監督:奥出哲雄)や、佐野日出夫のjmdb準拠最終作「
普通の女の子 性愛日記
」(昭和60/白鳥洋一と共同脚本/主演:渡瀬ミク・早見瞳)のあまりにもな何もかもの酷さに匙を投げてゐたが、なかなかどうして、どうやらロマンXにも取り付く島はありさうだ。
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