真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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駄楽ひまなときブログ
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ツイッタ
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山﨑邦紀監督のブログ
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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高校教師 黒い下着を脱ぐとき
か行
/
2018年03月01日
「
牝教師 嬲つてあげる
」(1997『高校教師 黒い下着を脱ぐとき』の2017年旧作改題版/製作:IIZUMI Production/提供:Xces Film/監督:北沢幸雄/脚本:月岡よみ・北沢幸雄/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》・業沖球太/製作:北沢幸雄/撮影:鈴木一博/照明:高原賢一/音楽:TAOKA/編集:北沢幸雄/助監督:佐藤吏/監督助手:片山圭太/撮影助手:岡宮裕/照明助手:倉橋靖/スチール:本田あきら/ネガ編集:酒井正次/協力:増野琢磨/効果:東京スクリーンサービス/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:聖亜舞・葉月蛍・西山かおり・下川オサム・樹かず・真央はじめ・杉本まこと・詫間翔太・片岡圭・高原照明・藤崎健・橘梧郎・日暮謙& Dear Friends)。出演者中、葉月蛍がポスターには葉月螢、詫間翔太以降は本篇クレジットのみ。改めて触れておくと企画の業沖球太は、アナグラムによる北沢幸雄の変名。
タイトル開巻、宝徳学園高校の銘板。産休による臨時教師の、松澤香奈(聖亜)の世界史の授業。早速覚束ない主演女優の口跡はさて措き、質量とも申し分ない生徒要員(詫間翔太以下、片山圭太は微妙だが、何処かに高原賢一も紛れ込んでゐるにさうゐない)から、優等生の桐島温子(葉月)、白バンダナが甘酸つぱい不良生徒・後藤健(樹)。成績は悪いけれど明後日な情熱を―女教師に―滾らせる梅宮真司(下川)に、梅宮の背後に後藤のガールフレンドの津川りさ子(西山)を抜く。のは煌びやかなまでに順当な開巻にしても、既に高校生にしてはあんまりな下川オサムの頭髪には、立ち止まらざるを得ないといふか、より率直にいへば涙を禁じ得ない。体育授業中の教室での、誰か来ると大概本格的に抵抗するりさ子を後藤が無理から抱くのを、廊下から軽く様子を窺つた香奈が咎めもせずに立ち去る絡み初戦経て、香奈の帰途を待ち受けた温子は、途中まで一緒にと一時歩いた別れ際、香奈に手紙を渡して行く。その夜、黒下着で武装する香奈の傍ら放られた手紙には、温子の百合香る恋情が綴られてあつた。
配役残り真央はじめは、出撃した香奈がランデブーする今でいふワンナイトラブのお相手・ツーショット―ダイヤル―の男。香奈が身に着けた黒い下着に、「意外だな黒い下着なんて」。初対面の女にこのバカは何をスッ惚けてやがると呆れる間もなく、ちぐはぐな戯言を垂れ続ける。マオックスの所為でもないやうな気もしつつ、ちぐはぐな戯言がこの人にはある意味よく似合ふといふか、どんな台詞であれちぐはぐな戯言にしてしまふ、一種の魔力も否めない。杉本まことは、実は梅宮が表でストーキングする中、やつとの思ひで居場所を突き止めた香奈を急襲する竹田英司。この二人、前任校で竹田との不倫の末に、香奈が自殺未遂を仕出かした結構派手な因縁。挙句復職した香奈に対しドロップアウトしたまゝの竹田は、妻とも離婚してゐた。
元題でDMM視聴も可能なものの、臆することなく小屋に出撃した北沢幸雄1997年ピンク映画第一作、薔薇族入れると第二作。2004年に元題ママで新版公開した際の新日本映像公式に辿り着いたところ、北沢幸雄五本前の1996年第二作、兼沢口レナのピンク映画デビュー作「
高校教師 私は、我慢できない
」と、同年第四作「高校教師 淫らな課外授業」(主演:ひとみ綾)に今作の三本で、高校教師三部作を成す旨が判明。更によくよく調べてみると、これがたとへば新田栄の「
痴漢と覗き
」の如く共有するのは看板だけの、極めて便宜的なものでは必ずしもなかつたりする。舞台は何れも宝徳学園で、ヒロインの名前も松澤香奈。樹かずと皆勤賞を果たす葉月蛍の役名も、三作共通で桐島温子。ついでに、西山かおり・真央はじめと一本休んだ二冠を達成する杉本まことも、二作共通で竹田英司。但し連続した前中後ないし完結篇といふ訳では―第一作ラストで香奈が宝徳を去る以上―もちろんなく、香奈の担当科目が各々異なつてゐる通り、パラレルなトリロジーを構成してゐる。
幾らビリング頭の裸を見せるためとはいへ、マオックスと杉まこパートで思ひのほか尺を喰つてゐる内に、香奈を挟撃する梅宮と温子の岡惚れは一向深化されず。殊にストーカー行為を認識した上でなほ、香奈がヤラせはしない程度に梅宮に距離を近づけるに至つては清々しく理解不能。展開の腰が据わらないまゝ終盤に突入した映画は、力なく不時着するものかと、思ひきや。それまでの全てを回収する咆哮を締めの濡れ場に際して香奈が放つや、一度は堕ちた闇から抜けたのを華麗に示すラスト・ショットは案外完璧。素面の劇映画としては実はザックザクどころかズッタズタの物語にも関らず、一気呵成のフィニッシュで爽やかなエモーションを叩き込む。些かでなく強引ではあれ力技が見事に決まる、北沢幸雄の―苔生した―青春映画志向が綺麗に成就した一作である。
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