巨乳狩人 幻妖の微笑

　「巨乳狩人　幻妖の微笑」（2015/製作：加藤映像工房/提供：オーピー映画/監督：加藤義一/脚本：筆鬼一・加藤義一/撮影監督：創優和/編集：有馬潜/録音：小林徹哉/音楽：友愛学園音楽部/助監督：小関裕次郎/監督助手：鈴木啓太/撮影助手：酒村多緒・佐藤雅人/スチール：本田あきら/録音所：シネキャビン/仕上げ：東映ラボ・テック/出演：めぐり・青木りん・工藤翔子・山本宗介・北川和志・柳東史・和田光沙・那波隆史）。脚本の筆鬼一は、鎌田一利の新名。
　砂嵐、J Newsのリポーター・和田愛（和田）が、悲惨さを飛散させる凶悪事件の数々を伝へる。再び砂嵐挿んで、男に跨るめぐりのイメージ風濡れ場。オッパイのアップの手前に、両手で引き絞つた紐。絞殺フラグを立ててタイトル・イン、らしからぬほどにソリッドな開巻の強度が完璧。
　両親の遺影に一声かけ、永見風子（めぐり）が出撃。コンサルティング会社「ビオラージュ」にて、社長の菊池進一（那波）に契約社員の面接を受ける。因みに那波隆史は、十一年選手にして加藤組初参戦。風子が友人の弓削公代（青木）と通ふ、NISAHIフラワーアレンジメント教室。自宅でも風子が練習に活けた花瓶は、シャワーを浴びてゐる内に倒されてゐた。八神兼人（山本）と付き合ひ始めた公代が、八神に別の女の影がちらつくどころか、いはゆるハメ撮りをネタに金を強請る厄介な男を踏んでしまひ窮する一方、ビオラージュで働き始めた風子も風子で、「ハーブ＆コーヒー」なるぞんざいな社名のクライアントの担当者・森山玲央（北川）に、高校時代の元カノではないかと付き纏はれ友達二人で各々悩みを抱へる。
　配役残り工藤翔子は八神の二股相手どころかどころか、要はヒモの八神を養ふ渋沢竜美。何気に、新旧三枚揃へたオッパイ・ジェット・ストリーム・アタックが完成してゐる。以降の新作に名前が見当たらないところを見るに、十三年ぶりの超復帰も三本で打ち止めなのかといつた点はさて措き、妙にウェットで不器用な役柄に足を引かれた感もなくはないいまおか組よりも、加藤義一作に於ける方が活き活きとした印象を残す。風子宅をプラッと訪問するだけの贅沢な起用の柳東史は、家族の捜索願を受け行方を眩ませた森山を捜す、アイコンみたいな扮装の刑事。その他案件を引き継ぐ森山の後任や風子と八神がミーツする茶店に見切れる二人は、二役込みで非加藤義一の演出部？
　2014年最終第四作「新人巨乳　はさんで三発！」（脚本：城定秀夫）、前作「純情巨乳　谷間で歌ふ」（脚本：小松公典）に続き主演女優を固定し安定飛行の傾向を窺はせる、加藤義一2015年第二作。風子宅に見え隠れする、まるでスナック感覚で錠剤を貪り喰ふ、風子と同じ顔をした、然れども別人のやうに粗野な女。一人で二人なのか、あれ・・・・もう一人ゐる！？丁寧に蒔いた種を、左腰の切り札で綺麗に刈り取る的確な作劇と、穴も悪ふざけもない手堅い俳優部くらゐしか勝因は見当たらない。森山が完全に陽が落ちてから風子宅を訪ねる直前の、一体どれだけの距離を歩いて来たのだといふ夕方の土手にライトバン―しかも営業車かよ―を停めるカット。加へて、公代が負傷退場する件といつた、悪手といふほどではないにせよ少なくとも確実に謎手も散見される。にも関らず、挙句無体な着地点にも、たとへば実は白の罪も黒が背負つてゐた類の一手間すら欠いた捻りのない在り来たりな物語が、城定秀夫・小松公典と来て鎌田一利と来れば、現に新人巨乳と純情巨乳を比較した上ではなほさら容易に予想し得よう脚本家に素直に連動した壮絶な三段オチを、何故だか華麗に回避。突拍子もなく面白いといふ訳でも全くないものの、十分延びた尺をも充実させて最後まで見させる、ない筈はない捉へ処が見当たらない不思議な一作である。
　備忘録＜　薬物とセックスに依存する風子の姉が男を殺害、両親は自殺し風子は高校中退。目下は親の遺した第二ミサトに出所した姉と同居