女教師は二度犯される

　「女教師は二度犯される」（昭和58/製作・配給：株式会社にっかつ/監督：西村昭五郎/脚本：熊谷禄朗・城谷亜代/原作：佐治乾/プロデューサー：川崎善広/企画：山田耕大/撮影：山崎善弘/照明：田島武志/録音：福島信雅/美術：渡辺平八郎/編集：西村豊治/選曲：林大輔/助監督：北村武司/色彩計測：高瀬比呂志/現像：東洋現像所/製作担当者：香西靖仁/出演：志水季里子・美野真琴・橘雪子・依田浩介・堀敬弘・北見敏之・打出親五・影山英俊・井川哲也・宇南山宏）。出演者中、井川哲也は本篇クレジットのみ。
　タイトル開巻、都立青葉台高等学校の朝。クレジットに並走して、化学教師・小島美保（志水）の授業風景。理科準備室で器具を後片付けする美保のクラスの生徒・玉木サトル（依田）は、離れて女生徒と歓談する美保に若干邪険に扱はれるや、衝動的にフラスコを割り手首をうつかりしなくても死にかねないほど自傷する。美保と、新日本商事石油課に勤務する恋人・田口雄三（北見）の情事。教師生活に厭き寿退職を望む美保に対し、独身主義者の田口にその気はサラッサラなかつた。
　配役残り堀敬弘は、美保のクラスのツッパリ・赤松進一。未だヤンキーといふ呼称が定着してゐなかつた時代の、ツッパリらしいツッパリ。美野真琴（a.k.a.よしのまこと）は、美保の同居する妹・真弓。橘雪子は、離婚後レストランを経営しながら女手ひとつでサトルを育てる母・久子。影山英俊はレストランの従業員で、宇南山宏が橘雪子の絡みを介錯する久子パトロン。宇南山宏との逢瀬後帰宅した久子に、サトルは出し抜けに暴力を振つた。井川哲也は赤松以下、サトルらと階段の踊り場でエロ本を広げ美保に見咎められる生徒の一人。何故か持参するバイブで、美保をからかふ。エロ本やナイフは兎も角昭和58年に高校生がバイブを校内にまで持ち込むのは、些かハードルが高いやうに感じられる。打出親五は日曜の日直を美保に乞ひ雨のラストを御膳立てする、年長の教師・矢野。
　西村昭五郎昭和58年最終第六作は、第一作「女教師」（昭和52/監督：田中登/脚本：中島丈博/主演：永島暎子/未見）から足かけ七年全九作連なる女教師シリーズ最終作。何となく隙間を抱へるハイミス女教師と、典型的な内弁慶の問題生徒が淫行する。所々展開が弾ける火種を燻らせつつ、結局は何がどうなるでもなく、派手な濡れ場で振り逃げる。三倍強のバジェットで寄り切つた、画面の分厚さで一見映画的に見せはするものの、正味な話物語自体は清々しく薄いルーチンすれすれのロマポを観るにつけ、限られたどころではなく貧しい普請で、精一杯起承転結と格闘するピンクの方が、余程良心的に思へなくもない。