真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「社内《秘》性愛 バイブを掻き回さないで」(1995『出張ONANIE 女課長の携帯バイブ』の2014年旧作改題版/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:石部肇/音楽:鷹選曲/美術:衣恭介/効果:協立音響/編集:井上編集室/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:赤木佐智・柴田はるか・風間水絵・樹かず・木村正男・山本清彦)。出演者中、木村正男は本篇クレジットのみ。主演の赤木佐智がポスターには赤木佐知、正解、ないし基本はどうも赤木佐知ぽいのだが。
 演歌のイントロみたいな謎劇伴流れる中、アメリカにて下着デザインで一山当てたのち、国内の下着メーカー開発課課長に抜擢された境玲子(赤木)が、Tバックの下着を脱ぎ美しい尻を晒す。自ら目隠しし、バイブで自慰に耽る玲子を部下の村木(山本)が手篭めに。シチュエーションが感動的なまでにまるで理解出来ないけれど、兎にも角にもタイトル・イン。どの際だか最早判らないこの際、兎に角とでもしかいひやうがない。
 専属モデルの募集に応募して来た柴田はるかを、玲子が異様に面接する。一体全体、異様な面接とは何ぞやといふ話であるが、珠瑠美映画のシークエンスは概ね理解不能につき、逐一を文字に起こすのでなければ異様とでもしか評しやうがなく、勿論然様な不毛な骨を折るつもりも御座らん。十五の時暴走族に輪姦されて以来男を遠ざけて来た玲子は、はるか(仮名)が目下異性と交渉を持つてはゐない点に固執する。配役残り樹かずは、玲子を抜擢した専務・志村幸三。またえらく若い専務だなといふ不可思議は、筆頭株主の子息といふ形で珍しく順当に説明される。反面、当の志村が十五の玲子を犯した族の一員であつたりするわざわざ薮の中の蛇を突くツッコミ処は、無造作に繰り出されそのまゝ放置される。風間水絵は志村の細君、木村正男は村木を伴ひ経費を湯水の如く使ひ、業務内容も怪しげな開発課に関して志村に苦言を呈する反対派。
 監督としては二十年弱のキャリアの終盤、珠瑠美1995年全五作中第二作。自らが開発した―媚薬仕込みの―下着を携へ富裕客の下を訪問販売、そこでバイブONANIEを披露し注文下着を売り捌く。ヒロインの造形で既に世界を狙へるアヴァンギャルドさを、奇怪な展開が終始維持するそれはそれとしてそれでも実に珠瑠美らしい一作。寧ろ実は彼女であるはるかに村木が焚きつけられての結果が開巻に、水絵(だから仮名)が下着メーカーの妻―志村台詞ママ、日本語おかしいだろ―にしては変哲ない下着を着けてゐる紺屋の白袴がクライマックスへと連なる予想外の脈略は、融解した起承転結にあつては掛け替へのない奇跡とすら映る。屈折したアイロニーはさて措き、三本柱は首から下も上も綺麗に粒が揃つてゐるゆゑ、下手に物語を追ひさへしなければ濡れ場比率だけは文句なく高いだけに、裸映画的にはそれはそれとしてそれなり以上に安定する。確か一応その筈の劇映画を捕まへて、物語を追ふなとは何事か、といふ最も原初的な疑問については気にするな。気にした方が負けとする規則を採用するならば、何人たりとて珠瑠美には勝てないやうにも思へる、勝ち負けの意味が判らない。


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