真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「むつちり家政婦 吸ひつきご奉仕」(2013/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:広瀬寛巳/撮影助手:宇野寛之・玉田詠空・岡本彩/編集助手:鷹野朋子/スチール:津田一郎/効果:梅沢身知子/タイミング:安斎公一/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/協賛:GARAKU/出演:ティア・AYUM・本多菊次朗・久保田泰也・津田篤・横山みれい)。
 絡み合ふ手と手から入る、横山みれいと津田篤の濡れ場でしつぽり開巻。後々明らかとなる真相は、家族には当然内緒の風俗嬢・相葉瑠璃子(横山)と常連客・矢野賢治(津田)の、矢野フェイバリットであるW不倫プレイ。ピンク界の松山ケンイチとサブカル女子の人気を集めたのもそろそろ何時の日にかな話、後半事後金を支払ふ矢野のウハウハした姿を観てゐると、津田篤はもう少しで助平親爺もこなせるやうになりさうだ。海岸と路面電車のショット噛ませて、物件的には鎌倉市長谷の御嶽大神なのだが、劇中ではおほぴい神社。願をかける瑠璃子は、花のカチューシャを起点に全身フリッフリな白い扮装―この服を着こなせるのも凄いファッション・スキルなレベル―のティアと出会ふ。ティアはみるくと名乗り、驚く瑠璃子と、空腹から足下がフラつくみるくを交互に抜いてタイトル・イン。
 相葉家のディテールは、瑠璃子が死去した姉(一切登場せず)の夫であつた創平(本多)と結婚したのが十年前。但し創平は半年前にリストラされ、目下無職。瑠璃子とは血の繋がらない息子・光一(久保田)も、東大を二浪中。ところで、リストラされたといふと退職理由が会社都合に当たるならば、月々の家のローン返済額にもよるが、半年程度ではいきなり瑠璃子が春を鬻(ひさ)がねばならぬほど追ひ詰められるとも思へないのだけれど。兎も角、キュート且つセクシーなみるくに鼻血を噴き驚喜する―流石ナベだ―父息子に、何とみるくは天子の卵と自己紹介する、流石ナベだ
 配役残り、予習段階では一瞬上加あむの別名義かと錯覚したAYUMは、二十歳にして未だ光一をパシらせる、腐れ縁のヤンキー娘・内海美樹。ダボダボのジャージに木刀まで担いであんまりな造形ではあれ、現実も結構あんまりなんだよな。我が家の近所では、古の暴走族文化が依然現在進行形、宇宙戦艦ヤマトみたいな単車今でも普通に見るよ。
 同じくティア主演の「姉妹相姦 いたづらな魔乳」(公開2/1)をスッ飛ばし、先に九州着弾した渡邊元嗣2013年第二作。主演女優の地から足の浮き加減は上手いこと浮世離れたキャラクターの中に消化、すると同時に、ウィズ改めGARAKU提供によるセクシー衣装の数々に包んだ、超絶プロポーションを瑣末な脈略如きお構ひなしに乱打し続ける戦法もお手のもの。穴のない三本柱を擁しなほかつ三番手をも進行に絶対不可欠な物語の形成に成功し、頑丈な裸映画がひとまづ成立する。その上で、そもそも初めから放置される瑠璃子がみるくを男が二人も居る家に連れ帰る不自然な覚束なさを回収する、おほぴい神社に於けるみるくの創平に対する告白。一山幾らのチャチで在り来りな御伽噺の筈なのに、渾身の力で撃ち抜かれたナベシネマに俺は相も変らずコロッと泣いた。舌ッ足らずな口跡が短く一生を終へた命に奇跡の親和、ティアが案外大女優であるのでなければ、他愛ないエモーションをにも関らず深く強く固定し得た所以は、迷ひのない渡邊元嗣の演出力に違ひあるまい。渡邊元嗣は、多分映画を信じてる。セカンドバージンの超絶を迎撃するのは、矢張りナベのプリミティブなエモーションなのか。今更にもほどがあるが、天使を描かせれば日本一はこの人なのではなからうか。神道とアブラハムの宗教世界とが混濁してる?細かいこたあいいんだよ!

 因みに、美樹の絵馬の画面向かつて右に瑠璃子の絵馬があることは劇中明確にフィーチャーされるとして、実は左には50kgの減量を祈願する、永井卓爾の絵馬がシレッと提げられる、50kgて(´・ω・`)


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )