真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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不倫志願 主人に内緒で!
さ行
/
2013年01月25日
「
ナマ出しの人妻 敏感壷
」(1995『不倫志願 主人に内緒で!』の2012年旧作改題版/企画・製作:オフィス・コウワ/提供:Xces Film/脚本・監督:佐々木尚/プロデューサー:高橋講和/撮影:創優和/照明:斉藤久晃/編集:金子尚樹/音楽:伊藤義之/効果:協立音響/製作担当:真弓学/助監督:佐々木乃武良/撮影助手:塚園直樹/出演:矢吹まりな・浅野桃里・吉行由美・瀬川稔・南英司)。出演者中、吉行由美と南英司が、ポスターには吉行由実と南英二に、そして何故か、
瀬川稔が相変らず鈴木実に
。照明・監督各助手その他に力尽きる。
漁師町のコテージ調の一軒家、石川一雄(南)と、歳の離れた若い妻・香里(矢吹)とのお熱い夫婦生活で順風満帆に開巻。事後香里は貴方好みの女に変へられた風の、しをらしい口を叩く。南英司は団子鼻にした西岡秀記のやうな直截にいふとパッとしないオッサンなのだが、幸せな男だ。海岸で読書する香里の脇を、砂をかけたことも省みず柴田裕美(浅野)が腹立たしげに足早に通り過ぎて行く。喧嘩中と思しき妻の非礼を詫びた男の顔を見た香里は驚く、ちやうど十年ぶりに再会した元カレ・誠(瀬川)であつたからだ。誠がウエイトレスと親しげにしてゐることに臍を曲げた裕美は、早速別の女とくつゝいてゐることに首を傾げつつ、香里の招きには素直に応じ石川邸にて夕食。正味な話浮世離れた雰囲気を気に入つたらしき柴田夫婦に、石川の方から暫くの逗留を持ちかける。誠をいはば触媒に妻の新しい顔を発見することを期待する石川に対し、香里は再びしをらしく不安ないしは抵抗感を訴へる。そこまでは、柴田家の生活経済の実態がまるで見えない―最終的には、見えずじまひなのだが―点に目を瞑れば、まあまあ順当として。初対面の人間に招かれた他人の家にて、その夜に裕美主導で浅野桃里一度きりの絡みとなる夫婦生活を入念に敢行してみせる非常識も、ジャンル映画の要請上まあ仕方のないこととして。
配役残り吉行由美は、一週間後、香里を誠に宛がつた夜、といふか殆ど朝方、石川に呼ばれ一年ぶりに会ふ女・加代。因みに、旅行者の石川と入水を図つた香里とが出会ひ、結婚したのは二年前、あれ?登場順は少し遡つてワン・カット、石川と魚を遣り取りする漁師役は不明。
正直素性が全く判らない佐々木尚(読みは“ひさし”らしい/後注:米欄も参照されたし)の1995年第二作にして、最終第三作。前作「
義母と息子 不倫総なめ
」(主演:小泉ゆか)は通つてゐるが、処女作の「不倫妻 夫の眼の前で」(1994/主演:浅井理恵)が2002年に「不倫女房 絶品淫ら顔」と新版公開済みなのは、今から追ふのは流石に非現実的か。口惜しいところではあるが仕方がない、小屋で観るピンクは一期一会。だから何処の会社の誰の映画であつたとて、名前で選り好みするやうな態度を私は断固として排する。大御大、あるいはピンク・ゴッド小林悟が最も単純な確率論で百本に一本の名画を四、五本は撮つてゐるのかも知れない可能性を、一体誰が否定し得ようか。話を戻して、香里を間に挟んだ石川と誠とが変にアンニュイに対峙する傍ら、「あの家の人は死んでる、昔を生きてる」と出し抜けながら満更でもない認識を残し、裕美が勝手に帰京する形で都合よく退場。そこまでは、徳俵一杯一杯辛うじて形を成してゐなくもなかつた物語は、以降ある意味豪快に放棄される。誠と二人きりになつた香里は、ケロッと180度ヘアピン翻意、した辺りから視界ゼロに立ち込める桃色の分厚い雲から、一筋の光すら差し込むことは終にない。石川V.S.加代戦と御丁寧に一年の歳月をも挿んで、石川の整理いはく、香里が必要な石川と石川と誠が必要な香里と香里が必要な誠とが、再び石川家に顔を揃へるクライマックス。覚束ない作劇を潔く等閑視するかの如く、まさかのいはゆる二穴責めまで繰り出す、しかも結構どころではなく尺も長大に費やすラストの巴戦パートを、喘ぎ声と呻き声以外一言の、本当に一言の台詞もなく走り抜けヤリ倒してみせた終幕には、何といつたらいいのかある意味あまりの鮮やかさ、もしくは逆説的なストイックさに度肝を抜かれた。素面の劇映画としては清々しく木端微塵であるものの、女の裸を銀幕に載せる。ピンク映画にとつて、他に何が必要だといふのかといはんばかりの頑強な姿勢が、グルッと一周して半歩勘違ひすれば前衛性の領域にすら突入しかねない一作。但しこれがといふかこれでといふか、撮影部の仕事は非常に手堅いことと、男優部はキャラクター的に薄さを禁じ得ない反面、ビリング頭二人に不足気味のオッパイ成分を、吉行由美で頑丈に補完する三本柱は強靭。裸映画としては全く磐石の仕上がりを見せてゐることは、実に興味深い。数打たれることを旨とする中でも、地味に捨て難い量産型娯楽映画である。
それにしても、どうでもよさが爆裂する新題が堪らない。寧ろ即す中身が別にある訳でもないのだから、これはこれで最早構はないのか。
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