真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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女痴漢捜査官 お尻で勝負!
主に渡邊元嗣と、わ行
/
2011年05月06日
「
女痴漢捜査官 お尻で勝負!
」(1998/製作・配給:新東宝映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遙/企画:福俵満/撮影:清水正二/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/特殊造型:中野貴雄/監督助手:広瀬寛巳・井上靖彦/撮影助手:飯岡聖英/照明助手:小田求/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:工藤翔子・林由美香・しのざきさとみ・泉由紀子・西藤尚・久須美欽一・芥雅之・螢雪次朗)。
工藤翔子が美容パック状態のまゝ歯を磨きながらチャリンコで、しかも空いてゐるとはいへ車道を激走するなどといふ、どれだけ積み重ねれば気が済むのか判らない危なかつしい離れ業にて開巻。ドレス・アップを終へ工藤翔子の出撃態勢が整つたところで、些か間延びもせざるを得ない五発の銃声とともにタイトル・イン。
撮影は大絶賛実車輌の満員電車に揺られる桑原満智子(工藤)は、痴漢されかかるや待つてましたといはんばかりに身構へる。とその時、離れた場所に座る西藤尚が開くコンパクトに反射した赤い光を受けた満智子は、不思議なことに忽ち欲情する。痴漢を取り押さへる本来の職務も忘れ悶え狂ひ、男の腕時計が緑ベースのスヌーピーのものである点までは辛うじて確認した満智子は、女性客の悲鳴に我に帰る。ここで車内に、髭のない高田宝重が見切れる。満智子が駆けつけると、尺八を吹かれたらしき男性客(不明)が、余程気持ちよかつたのか下半身も露に悶絶してゐた。満智子はどさくさに紛れるやうに降車する西藤尚が、口元を拭ふのを目撃する。場面改め、満智子は“ お姐”と呼ぶ多摩さわき(しのざき)に、激しく叱責される。満智子は異常性犯罪捜査課の別働隊、「クイーンズ・スクワッド」の女痴漢捜査官であつた。メンバーは他にリーダーで捜査課長のさわきと、本部―別に支部がある訳ではない―に常駐する電脳担当の科学捜査官で、何故かチャイナドレス姿の九重久美子(泉)の三人のみ。満智子に人員不足を泣きつかれたさわきは、警察学校からの同期である睦新吾(螢)に接触、旧交を温めがてらとりあへず一戦交へる。携帯電話で連絡を取り合つた睦が、ロング・ショットで直後にスタスタさわきに歩み寄るギャグ演出は、その癖一切通り過ぎられる。事後さわきから増員を求められた睦は、「一人心当たりが、ないこともないこともないこともない」、とかいふ次第でクイーンズ・スクワッドに、片山弥生(林)が新任捜査官として現れる。とはいへ、前部署は本庁のお茶酌みに過ぎなかつた弥生は、早速足を躓かせたPCの電源コードを引つこ抜き、久美子が三日がかりで仕上げたデータベースをブッ飛ばす清々しいドジッ娘ぶりを披露する。そんな林由美香が、永遠にキュートだぜ。気を取り直し、満智子が弥生を伴ひ、手懸りは降車駅のみで西藤尚を探す操作初日。再び何者かから発せられた赤光を浴び発情した弥生は、画期的な偶然を発揮しその場に通りかかつた睦を公衆トイレに捕獲、初陣早々、謹慎の憂き目に遭ふ。
仕方なく満智子が独力で探し当てた西藤尚は、日本脳波研究所―因みに研究所は、同年「
ザ・痴漢教師2 脱がされた制服
」舞台の貞徳学園と同じ物件―を、独裁体制を敷く所長・池田(久須美)のセクハラに耐へかね辞した元職員の安芸純子。さわきが怪しいと踏んだ池田には、冒頭の事件当日、入院してゐた不在証明があつた。芥“ アクター”とかいふ惚けた名義の正体不明さから、誰かの変名かとも思はせた芥雅之は、純子が憧れてゐた脳波研究所の有能で正義感に熱い研究員・室谷英治。実際に観た上でも見知らぬ顔ではあつたが、ひとまづピンク映画にしては不思議なほどの、王道ハンサムではある。ところで、純子の退職に抗議し池田に暴行を働き怪我を負はせた直後、室谷は姿を消してゐた。
「
女痴漢捜査官4 とろける下半身
」(2001/一応主演:美波輝海)まで一年に一作づつ都合四作が製作された、「女痴漢捜査官」シリーズの第一作。2002年に「痴漢調書《ファィル》 お尻と指先」との新題で旧作改題を一度経ての、今回は旧題ママによる二度目の新版公開に当たる。第三作「女痴漢捜査官3 恥情のテクニック」(2000/主演:蒼生侑香里)が滅法面白いらしいので、激しく観たい。今作に話を戻すと、女を狂はす赤色光の謎を解明すべく、クイーンズ・スクワッドの面々が華麗に怪事件に挑む。リミット・ブレイクな低予算が初期設定の、カテゴリー的な特性によるものか渡邊元嗣の作家的な資質に帰するのがより相当なのかは兎も角全般的な安つぽさ―発信機の轟かせる爆音に関しては、流石に如何なものかと首を傾げぬでもない―と、泉由紀子の裸比率の低さにさへ目を瞑れば、最低限の格闘チェイスまで繰り出す活劇ピンクの完成度は案外完璧。展開の中には新味も特にはないともいへ、反面余計なものも全くなく、豪華五人体制の女優陣―泉由紀子は、若干どころではなくあぶれ気味ではあるが―の裸を全員分見せようとした前のめりも功を奏してか、全篇を通じてのテンポは抜群。一旦幕が開けるや、一息でクイクイ観させる。後述するバラエティ豊かなエンディングまで含め、完成された娯楽映画の強度が心地良く満ちる。側面から桃色捕物帳を愉快に支援する、中野貴雄の手による小道具の数々も馬鹿馬鹿しいのが同時に素晴らしい。通常の大きさの輪が普通に二つに、長めの鎖に繋がつた小さな輪が更にもう一つ、即ち両手と一物とを同時に拘束する特殊手錠も最高だが、メイン・ガジェットたる光線銃のキャノピー状の構造の中に見られる、その脳味噌みたいな物体は一体何なのだ?
漸く泉由紀子も脱ぐものの、色気といふよりはコメディ要素の方が強いスヌーピーも回収するラストを通過し、再びクイーンズ・スクワッド戦闘服姿の満智子と弥生が何でまたここに来てこの曲なのか、奥村チヨの「恋の奴隷」を堂々と披露、一篇を賑々しく締め括る。
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